☆ぽんつかのあたまんなか☆

◆ぽんつかの妄想から生まれた架空のレースカテゴリ  ・現代のF1に限界を感じたぽんつかが、F1でもない、インディでもない   フォーミュラeでもない架空のカテゴリを構想☆  ・独自開発による『すごろく式PC上ボードゲーム』としてレースを展開☆  ・それをただただ何シーズンもプレイしてセカイを構築してゆくだけの   旧究極の一人遊び☆  そのプレイ記事、レース経過・結果、シーズン総括などを載せてゆく。  それだけ!!(byケロちゃん)

NeXX3rdシーズン 変更・修正点 2

3rdシーズンでの変更点・追加

■トラブル判定の「2-6」の項、内容変更

3rdシーズンからの『エクストリーム・ブースト』導入に合わせ
トラブル判定の「2-6」の内容を以下の通り変更しました。

2ndシーズンまで → ECUトラブル
3rdシーズンから → ブーストトラブル

■チーム名・人名変更 

これまで実名で出していたチーム、人名をフェイクネームへ変更します。

アブラモビッチスタンフォード・レーシング
→ アルバノビッチ・スタンフォード・レーシング

ロマン・アブラモビッチアブラモビッチチーム・オーナー)
→ ラモン・アルバノビッチ

今回の変更点は以上です。
では開幕まで今しばらくお待ちください☆

NeXX3rdシーズン 変更・修正点

さてさて、私の脳内妄想から始まったこの世界
NeXXも2ndシーズンが終わり、まもなく3rdシーズンが始まります。
久しぶりにレース記事やゴシップ記事の類ではなく、私自身の言葉で
日記をアップします☆

つい最近、このブログを見ていてくれた方から、このゲームをプレイする為に
私がデータやらルールやらをまとめたExcelファイルが欲しいという
ご依頼をいただきました。こんな妄想バリバリのブログを読んで頂いて
Excel欲しいと言われるなんて嬉しすぎて差し上げました☆★☆
なんだか最近毎日数人の閲覧があり、いっとき閲覧数が168を数えた時は
何があったかと思い慄きましたがwww 
何のタグ付けもしてないので、ホントに不特定多数の人の目には極めて触れにくい
と思っていたので驚きでした。

ということでもしかすると何人かの方が定期的に見ていただいているのかと思うと
3rdシーズンもゲームとして、そして「世界」として面白く
プレイしていかなければいかんなぁと思う今日この頃のぽんつかです☆

で、前回2ndシーズン開幕時も変更点云々を記事にしたんですが
2シーズンプレイしてきての改良、改善、そしてバランス的な修正を今回は
結構な数加えましたのでここに報告します。
そこを踏まえて3rdシーズンのプレイ記事を見ていただければ
なお楽しいかと思いますので、ここに記しておきます。


<変更・修正点>

■インターミディエイト、ウェットタイヤのライフ値変更

インターミディ、そしてウェット、つまりは「雨用」タイヤのライフを以下のよう
に変更しました。

・インターミディ
       ライフ グリップ    ガケ ダウン値
ヨコスカ    12   ±2  8、10    2
ヴァシュロン  10   ±2   6、8    2

・ウェット
ヨコスカ    15    0 10、12    1 
ヴァシュロン  15    0  8、12    1

よく考えたらウェットタイヤにライフの概念がないというのは現実的ではない。そし
てインターミディも15ターンでは少しライフが長すぎかと感じ修正しました。この
間のF1トルコGP観ていただければお分かりいただけるかと。
NeXXは22~28ターンで行われるので、全ターンハーフウェットならばインタ
ーミディで2回の交換が必要になります。このバランスがベターかなと。
インターミディ、ウェットそれぞれガケは2回。インターミディは1回目のガケで
グリップが0になり、2回目のガケで▲2。
ウェットはもともとグリップ補正がないためガケが来るたびに判定値はマイナスに
なります。
また雨用タイヤではヨコスカに若干のアドバンテージを与えてみました。


シャシー、エンジンの「信頼性数値」の導入

走行判定時の1ゾロでマシン系のトラブルの場合、1Dを振り各メーカーの
信頼性基準を超えればトラブルが回避できる。

・2-〇 パワーユニット系 → エンジンメーカー
・3-〇 ミッション系   → シャシーメーカー
・4-〇 メカニカル系   → シャシーメーカー

それぞれA、B、Cで設定。A=3、B=4、C=5 で1Dでこの数値以上を
出せばトラブルの回避が可能。
同系トラブルが2回出た場合は回避不能、3回でた場合は一発リタイアになります。
例えばミッション系トラブルが1ドライバーにつき2回発生した場合
1回目は回避できても2回目は回避できません。
1回目も回避できていなかった場合は、2回目が発生した時点でリタイヤになります。

※1ゾロ時は回避が出来ても出来なくても、そのターンは進めず燃料が1消費します。


■ドライバーの「ブロック能力値」の導入

各々のドライバーに「0」~「2」でブロック能力値を設定します。
後続車とのバトル時に自身の判定値にブロック能力値をプラスできます。


■ドライバーの「危機回避能力値」の導入

シャシー、エンジンの信頼性同様、1ゾロの回避を目的とした数値です。
それぞれA、B、Cで設定。A=3、B=4、C=5 で1Dでこの数値以上を
出せばアクシデント(事故系トラブル)の回避が可能。
ドライバーの場合は走行判定時のほか、バトル判定時の1ゾロも対象です。

※1ゾロ時は回避が出来ても出来なくても、そのターンは進めず燃料が1消費します。
※信頼性数値と違い、ドライバーの場合は何度でも回避できます(但し燃料は減ります。)


■予選セッション時の天候判定追加

これまで予選の天候はセッション開始前に判定し、その天候のまま終えていましたが、
3rdからはQ1とQ2の間に1度天候判定を行います。
セッションの途中での天候改善、悪化を再現するためのルールです。


■サーキットにより「抜きにくさ」を再現する為「アドバンテージ値」を導入

サーキットによっての抜きやすい、抜きにくいを再現する為、各サーキットに
アドバンテージ値を設定しました。「0」~「2」で設定します。
ドライバーのブロック能力値同様、バトル時に前を走る車が判定値に加算できます。

Ex.ブロック能力値「2」のドライバーが、アドバンテージ値「2」のサーキット
   でバトルをする場合、自身の走行判定値に「+4」加算しバトルをします。

ブロックの巧いドライバーが抜きにくいサーキットを走っている場合は
バトル時常に走行判定値に「4」が加算され、"ブロック無双"状態になります。


■「エクストリーム・ブースト」の導入

バッテリーに蓄電した回生エネルギーを、レース中3回までブーストとして
解放できるデバイスです。
使用時は搭載燃料を「1」消費し、走行判定値に「+3」できます。
これはバトル時のみならず、通常走行時にも使用可能です。
つまり、バトルに勝つための他前車とのマージンを詰めたいとき、
また後続とのマージンを引き離したいときにも使用可能です。
ただ、燃料を「1」消費するため、トラブルなどで搭載量が総ターン数を下回る際は
使用できません。使用してしまった場合は最終的に燃料切れとなります。


■先頭車の走行判定値基準を修正

2D加算前の走行判定値が「20」以上のドライバーが、先頭にいる場合の
進める、進めないの基準値を修正しました。

・判定値「20」未満のドライバー        
  24以下→動かない。25以上→1進む、30以上→2進む。6ゾロ→3進む。                        
・判定値「20」以上のドライバー        
  24以下→動かない。25以上→1進む、35以上→2進む。6ゾロ→3進む。    

走行判定値が「20」以上のドライバーは、判定値+2D合計が「35」を超えないと
2マス進めません。これは昨季第17戦カナダで、ラムダがとんでもない独走劇を
演じたことに対する対抗措置です。


■ペナルティの内容を一部修正

レース続行中のドライバーに出されるペナルティの内容を一部修正。
1D「6」の項目を「ピットスルー」から「レース後のタイム加算」へ変更しました。
「タイム加算」ペナルティの場合、当該ドライバーの順位はレース後
マージン10後退させた順位で確定とします。


■トラブル判定の「1-1」についてトラブル内容を変更

1ゾロの1ゾロ、つまりトラブル判定の「1-1」の内容を変更しました。
これまではレース中のどんな条件であれ、「1-1」が発生したら
「該当ドライバー含め前後マージン2までのマシンが事故対象」でしたが、
ケースによって以下のように変更しました。

・スタート、リスタートターンに発生
  「1-1」を振った該当ドライバー含め「前後」マージン2の範囲のマシンが対象
・通常走行ターンに発生
  「1-1」を振った該当ドライバー含め「後続」マージン2までが対象

該当範囲のドライバーは一発リタイヤとなる。

レース中の事故で前後含め5台のクラッシュというのは、オーバルでもない限り
考えにくいため修正しました。


■セーフティカーの出動ルールを修正

セーフティカーの出動ターン数、そして出動時のピットイン可能なタイミングを
修正しました。

 ・1ターン1周のサーキット
   出動ターン含め3ターン。出動の次のターンからピットイン可能。
 ・2ターン1周のサーキット
   出動ターン含め4ターン。出動ターンがピットインOKターンの場合
               →セーフティカー出動3ターン目までピットイン不可
               出動ターンがピットイン不可ターンの場合
               →出動ターンの次のターンでピットイン可能

2ターン1周換算のサーキットの場合、出動ターンがピットインOKターンでも
出動ターンはピットクローズのため次のピットインOKターンまで
待たなければいけない。


■ルーティンストップの際のマージンロスト値を変更

 出目   従来ロスト値  新ロスト値
 2      10     12
 3-5     6      8
 6-8     5      7
 9-11    4      6
 12      3      5

※ゾロ目で12を超える場合は「12」扱いは変わらず


■レースファステストラップの決定方法を変更

これまで、レース中最も多く6ゾロを振った(ディフェンス6ゾロを除く)
ドライバーをレースファステストとしてきましたが、3rdからはそのレース中
一番最後に6ゾロを振った(ディフェンス6ゾロを除く)ドライバーを
そのレースのファステストラップ記録者と変更します。

 


以上が今回の変更・修正点です。
これらを踏まえてお楽しみいただければなと思います。
では、開幕まであと少し! このあとはNeXXtream Pressの
開幕直前号で全チームプレビューをやって3rdシーズンに入っていく流れになります。
ちょっとここからは開幕まで時間かかるかなと思いますが
ご期待ください!!

 

 

 

 

 

NeXXtream Press 「新年号」

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◆3rdシーズン・新年号

いよいよ新しい年が明け、3シーズン目を迎えたNeXX。今季は昨季以上にドライ
バーを中心とした人事異動やエンジン変更の動きが活発で、エンジンが新フォーマッ
トに変わる来季を見据えての動きの多いオフシーズンとなっている。開幕まであとも
う少し、これ以降は各チームとも体制発表会を控え、開幕準備に余念がない。では今
号も引き続き、その3rdシーズン以降に向けた各チーム、そしてFNO自体の動き
も含めて見ていこう。


◇NeXXが将来的な独自のブランディング計画を発表!
         5thシーズンをメドにNeXX直下の下位カテゴリ設立へ!!

FNOは年が明けて1月12日、3rdシーズンとそれ以降の運営体制や様々な計画
についての発表会を行った。発表会は本部のあるパリで行われ、4thシーズン以降
の開催計画や今季型シャシーのお披露目などが行われたが、その中で今後5thシー
ズンをメドとしてNeXX直下の下位カテゴリを設立するというビッグニュースがあ
わせて発表された。
発表会にはFNOのラックス・ロズレイCEOやデイトン・ビル運営統括部長をはじ
めとするお歴々が出席、この計画は発表会の終盤にロズレイCEOの口から明かされ
場内は大きなどよめきに包まれた。
NeXXは現在独自の下位カテゴリを持たず、参戦するドライバーは殆どがF1やイ
ンディカーなど他のトップフォーミュラからの転入組だ。しかし、発足から2シーズ
ンが経過して参戦チームも増え盛り上がりを見せるNeXXには、独自の若手ドライ
バー発掘手段が必要だとFNOは考えたようだ。
フォーミュラレースの下位カテゴリといえば、最も有名なのはF1に対するF2、F
3といったカテゴリだろう。これらは全てFIA(国際自動車連盟)の所管で行われ
ているが、それ以外にもFIA直下ではないジュニアフォーミュラなどのカテゴリは
世界中にたくさんある。各自動車メーカー主催のものや日本のスーパーフォーミュラ
直下の『スーパーフォーミュラ・ライツ』、北米インディカー直下の『インディ・ラ
イツ』などもそうだ。また現在ではFIAによって下位カテゴリの統廃合が進み、か
つてはドイツやイタリアなど各国にあったF3クラスはFIA-F3に。そしてその
上、つまりF1直下のクラスは時代によりGP2やF3000と名称を変えながら続
いて来たが、これについても現在はFIA-F2に統合されている。しかしこのF1
直下のカテゴリは現在F1チームの育成プログラム所属ドライバーが優遇されており
育成プログラムに属していないドライバーのF1昇格はほぼ見込めない状況。毎年F
1に昇格できなかった優秀な若手ドライバーが、ツーリングカーやインデイカーに流
れて行く状態が続いている。そういった優秀な若者たちの受け皿になり、やがては若
いドライバーが望んでステップアップのチャンスをNeXX側に求められるような下
位カテゴリにしたいというのがFNOの思惑だ。
発表された計画はまだ全体的な構想段階のもので詳細については明らかにされなかっ
たが、FNOが考える現時点での大まかな構想は以下の通りだ。

1.FIAのスーパーライセンス発給対象カテゴリとして認定を目標
2.欧州を中心に1シーズン10戦程度の開催(2レース制を採用)
3.基本的にはNeXXのサポートレースとして開催
4.参戦中のドライバーのNeXXでのリザーブ起用が可能
5.シャシー、エンジン、タイヤはワンメイク
6.NeXXレギュラーチームが下位カテゴリで2ndチームを持つことは禁止

などが挙げられた。
FNOは5thシーズンをメドに、遅くとも6thシーズンまでには発足させる見通
しだという。これはNeXXがブランディング的な見地からもF1と比肩するカテゴ
リとなるための、大きな事業だとロズレイCEOは語る。選手権直下の下位カテゴリ
を持つ世界的なフォーミュラレースは現在F1と北米のインディカーだけ。
NeXXの壮大な計画はまだ動き出したばかりだが、実現すればフォーミュラレース
を取り巻く状況は大きく変わる可能性がある。モーターレースの裾野の拡大とNeX
Xのブランド力強化のため、この計画はぜひ実現してもらいたい。

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NeXXの”下位カテゴリ”は5thシーズンをメドに設立する見通し。インディ・ライツ(写真左)のような
トップカテゴリやF1などと密接につながった関係を目指す。写真右は現行のFIAーF3のシャシー


◇明暗分けた新規参戦チームの1年目、『1年生チーム』の通信簿

昨季3チームの新規参戦があり、15チーム30台でのチャンピオンシップとなった
NeXX。既存の12チームも含め、群雄割拠となったシーズンでは新規参戦チーム
も活躍し。選手権を大いに盛り上げた。そんななかでも明暗分かれた新参3チームだ
が、昨季の活躍ぶりはどうだったか? 昨季の戦いを振り返り評価を下してみよう。

アントネッティオートスポーツ  評価・・・A+

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忙しく世界を飛び回るチーム会長のドナルド・アントネッティに代わっ
監督代行としてチームをまとめたドジャー蓮川。今季も監督業を担う。

昨季、開幕戦でビッグサプライズをおこしたのがこのアントネッティだった。米国よ
り参戦したこの1年生チーム、アントネッティのアレンザンダー・ロッソが開幕戦で
ポールトゥウィンを達成したのだ。これはファンにとっても我々関係者にとっても純
粋な驚きだった。アントネッティというチーム自体はインデイカーのチームを母体に
フォーミュラeや豪州スーパーカー選手権など、様々なレースカテゴリに参戦するグ
ローバルなレーシングチームだ。組織も大きくマネジメントもしっかりしている。し
かし、それでも参戦初年度のチームが開幕戦でPTWをやってのけたというのは、た
だただ驚きでしかなかった。チームは元インディカードライバーで、引退後は主にス
ポッターをつとめたドジャー蓮川を中心にまとまり、アレンザンダー・ロッソとデイ
ヴィス・リンドホルムというNeXX経験者を揃えた。彼らはインディカー時代にア
ントネッティで走っていたことのあるドライバーだ。シャシーも既存のシグマテック
を採用。1年生チームとしては揃えられるだけの環境を揃えて、最良の体制で臨んだ。
とはいえエンジンは共に新規参入したシェブロンで、実戦での戦闘力は未知数。レー
シングチームとしてはプロ集団だがNeXXは1年生状態ということで、はたしてど
こまでやれるのかという我々の心配をよそに、エースのロッソは開幕から立て続けに
表彰台に上がった。No.2のリンドホルムが前半戦絶不調だったものの、後半戦に
は復調し第14戦タイで初優勝をあげる。終わってみれば168ポイントでシーズン
4位、初年度の数字としては驚異的と言っていい。
来季はリンドホルムが抜け、“驚異の新人”と騒がれたカレッジが2ndシートに座
る。アントネッティは参戦2年目にして既に、タイトルを狙える可能性を秘めている。

●マルドゥーク・レーシング・ドバイ  評価・・・

タイトルに近いという点で言えば、このマルドゥークも負けてはいない。序盤のマル
ドゥークは、アントネッティに対し完全に後れを取っていた。マルドゥークはアント
ネッティとは違い、組織としてモーターレースの経験もなく、ドライバー2人もNe
XX初参戦だった。開幕から3戦ノーポイントレースが続き、2人のドライバーもや
やNeXXへのアジャストに苦労していた様子がうかがえた。しかし第4戦ブラジル
でリヴィエールが3位、グーデリアンが9位とW入賞を果たして波に乗り始める。リ
ヴィエールは第6戦から第11戦まで6戦連続入賞し、途中第10戦雨のスウェーデ
ンで初優勝を飾る。グーデリアンはリヴィエールに比べアジャストにやや時間がかか
り、安定感を欠いたものの第12戦ルーマニアでは初PPを獲得、第15戦マカオ
初優勝を飾った。結果144ポイントでアントネッティに次ぐシーズン5位、これは
レーシングチームとしての経験値などを考えるとある意味アントネッティ以上に驚異
的な数字と言える。総合評価がアントネッティを上回ったゆえんだ。

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F1では名門フェラ〇リを常勝軍団に育て上げたファン・ドットは
新参チームを”戦う集団”としてまとめ上げた。今季はタイトルを狙う。

とはいえチーム監督にはファン・ドット、マネージャーにボス・グラウンとF1を含
めこの業界の酸いも甘いも噛分けた2人がいたことが、このチームを“ごく普通の新
参チーム”ならざる存在たらしめた要因か。今季は2ndシートにゾルタン・ゲラを
迎えることが決定。将来性のアントネッティに対し、マルドゥークは“今すぐにでも
タイトルを獲りに行ける”体制となった。マルドゥークは今季、トップチームたちに
とっての大きな脅威になるだろう。

●ガジャック・ルルーシュ・スポール  評価・・・

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ドライバーとしては目が出なかったイワン・ガジャックだが
率いたチームは、準備不足でのエントリーにも関わらずそこ
そこの力を見せた。今季は躍進なるか?

昨季、期限ギリギリで駆け込みエントリーを果たしたガジャックは、3チームの中で
最も苦労したチームだ。しかし、F1など他カテゴリに置き換えて考えてみれば、こ
れでも健闘したと言って差し支えないだろう。所属ドライバーは2人ともそれぞれ1
度表彰台に上がっており、カレッジに至っては第16戦日本での雨の予選でPPも獲
得している。入賞回数で言えばタンデイが3回、カレッジが5回と少ないが系47ポ
イントはシーズン13位。新規参戦ながら既存チームのアルバノビッチとプルトンを
上回って見せた。チームはオーナーのイワン・ガジャックはじめ主要スタッフ全員を
フランス人で固めた“オールフレンチ”体制、シャシー、エンジン、はてはタイヤま
でも全てをトリコロールで染め抜いての参戦だった。しかしエンジンをピジョンにし
たのは誤りだったか。現状エンジン開発競争で成果の上がっていないピジョン勢は苦
戦しており、ガジャックも例外ではなかった。またチームも旧F1ルルーシュチーム
の首脳陣で組織したとはいえ、駆け込みエントリーだったこともありNeXXチーム
の運営に対して充分な準備が出来ていなかったことが、苦戦の要因になっていること
は明白だ。今季は開幕まで十分に時間があり余裕をもって準備できる。そしてカレッ
ジを手放しはしたものの、F1からティモシー・ルーツェンという期待の若手を獲得。
今季は躍進が見られるか?


今季、アントネッティやマルドゥークはさらに強固な体制づくりに着手、現実的にタ
イトルを狙える位置まで来ている。ガジャックは他2チームにやや水をあけられた格
好だが、充分な準備期間を経た今季は巻き返しが期待される。今季の3チームの躍進
に期待して開幕を待とう。

 

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■NeXX Topix


◇現行シャシーラストイヤーへ向けて
        シャシーサプライヤー2社の3rdシーズンモデルがお披露目!!

FNOは1月12日、3rdシーズンとそれ以降の運営体制や様々な計画についての
発表を行い、今季3rdシーズンをもって最後となるシグマテック、レラ両メーカー
の現行最終型シャシーのお披露目をおこなった。現在のシャシーは両メーカーが初年
度に投入した初期型にアップデートやリファインを加えながら使用され、来季デンプ
シーの参入を受けて既存2メーカーが新型を投入するため、今季が使用最終年となる。
お披露目されたシャシー名はシグマテックが『S-TEC01X/C』、レラは『R
NX-01/03』と発表され、それぞれ大きなアップデートを施してきたことが外
観からすでに見て取れた。

<シグマテック・S-TEC01X/C>

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全長:4935mm
全幅:1780mm
ホイールベース:2995mm

今回はシグマテック、レラともにレギュレーションの既定値いっぱいに合わせリアウ
ィングの形状をこれまでのものよりも大きなものへ変更してきたため、それぞれ全長
が15mm延伸された。リアウィングのメインウイング前端は後方車軸から450m
m後方まで後退し、メインウィングは大型化。メインウイングとフラップは中央部が
やや膨らんだ形状をしており、リアウィングで発生させるダウンフォース量を増大さ
せることを企図した形状となっている。全幅は既定値いっぱいのため昨季型と変更は
なし、リアウィングの後退に伴いホイールベースを25mm拡大した。
そしてシグマテックの今季型の大きな特徴は、トレードマークともいえるリアタイヤ
カバー部。昨季型は後輪へ向けサイドポンツーンが末広がり形状で、ボディ上面の気
流はリアタイヤの上を通るように、ボディ両側面下部周りの気流はサイドポンツーン
下部の溝を通ってリアタイヤの外側へと誘導されるような形状だった。しかし今季型
リアタイヤカバーはそのまま残しつつ、サイドポンツーンはコークボトルフォルム
で後方へ絞り込んできた。リアタイヤカバーとサイドポンツーンの間には空気の通り
道を設けディフューザー上面、そして大型化したリアウィングへと気流を誘っている。
サイドポンツーンのエアインテーク付近には、これまでのバージボードに加えブリッ
ジ状の整流板を追加。これが今回刷新したボディ側面の気流をリアエンドへ導くため
の入り口となっている。


<レラ・RNX-01/03>

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全長:5070mm
全幅:1745mm
ホイールベース:3025mm

レラはリアウィング形状変更によって全長が10mm延伸した分、バランスを取るた
ホイールベースを15mm拡大させた。シグマテック、レラともに本当に微調整の
レベルだが、大型化させたリアウィングとのバランスを取るためには必要な調整だっ
た。またリアウィングについてはシグマテックよりも一歩踏み込んだアプローチをし
ており、翼端板のメインウィングより下の位置にスリットを入れ、スリットの下部は
内側に角度をつけて絞り込ませるような形状にしてきた。これは翼端板まで導かれた
気流を、最後まで剥離させずに車体後方に流す工夫だ。他に目立つアップデートと言
えばフロントタイヤ後部とリアタイヤ前部に追加された大型フィン、そしてサイドポ
ッド入り口の二重の整流板だろう。二重の整流板の一つはカウル内部に効率よく空気
を取り込むもの、そしてその外側に新設されたもう一つはサイドポンツーン側面に当
たる気流を剥離させないためのものだ。フロントタイヤ後部の大型フィンで気流をボ
ディ側面に導き、リアタイヤ前部の大型フィンでディフューザー後端上面へと流す。
そうしてボディ周りに流す気流の流量とのバランスを調整する為、サイドポッド前部
に設置されたヴェンチュリ効果を狙ったエアトンネルは小型化された。またフロント
ノーズ上面、ハロの支柱手前に小さなサブウィングを追加するなど、細かい工夫が見
られる。

ほかにも2社ともにリアウィングの形状変更に合わせ、シャークフィンの形状にも変
更を加えたりハロの形状も微妙に変えてきたりと、アップデート・リファインに余念
がない。果たして今季はどのようなパフォーマンスを見せるのだろうか?


◇FNOが4thシーズンの暫定カレンダーを発表!!

FNOは1月12日に大々的な発表会を行い、今季の改良型シャシーのお披露目など
と合わせて今季の正式なカレンダー、そして来季4thシーズンの暫定カレンダーの
発表を行った。今季のカレンダーは開催サーキットが変わるGPがあるものの、基本
的には昨季と同じ。カレンダー発表では主に4thシーズンのスケジューリングが話
題となった。

<3rdシーズン公式カレンダー>

 開幕戦 オーストラリアGP  サーファーズパラダイス市街地
 第2戦 インドネシアGP   セントール
   <ポール・リカール合同テスト>
 第3戦 ドバイGP      ドバイ・オートドローム
 第4戦 ブラジルGP     サンパウロ市街地
 第5戦 メキシコGP     エルマノス・ロドリゲス
   <エストリル合同テスト>
 第6戦 イギリスGP     ブランズハッチ
 第7戦 フランスGP     ポール・リカール 
 第8戦 イタリアGP     イモラ
 第9戦 オランダGP     アッセン
第10戦 スウェーデンGP   アンデルストープ
第11戦 チェコGP      ブルノ
   <ホッケンハイム合同テスト>
第12戦 ルーマニアGP    ブカレストリンク
第13戦 アゼルバンジャンGP バクー市街地
第14戦 タイGP       チャーン
第15戦 マカオGP      ギア市街地
第16戦 日本GP       小樽市街地
第17戦 カナダGP      エキシビジョンプレイス市街地
第18戦 アメリカGP     インディアナポリス・GPコース


<4thシーズン暫定カレンダー>

 開幕戦 オーストラリアGP  サーファーズパラダイス市街地
 第2戦 インドネシアGP   セントール
   <ポール・リカール合同テスト>
 第3戦 ドバイGP      モーターシティ市街地
 第4戦 ブラジルGP     サンパウロ市街地
 第5戦 メキシコGP     エルマノス・ロドリゲス
   <エストリル合同テスト>
 第6戦 イギリスGP     ブランズハッチ
 第7戦 フランスGP     ポール・リカール
 第8戦 イタリアGP     ムジェロ
 第9戦 ドイツGP      ホッケンハイム
第10戦 オランダGP     アッセン
第11戦 ルーマニアGP    ブカレストリンク
   <ホッケンハイム合同テスト>
第12戦 デンマークGP    コペンハーゲン市街地
第13戦 スェーデンGP    アンデルストープ
第14戦 カザフスタンGP   ソコル
第15戦 マカオGP      ギア市街地
第16戦 日本GP       小樽市街地
第17戦 カナダGP      エキシビジョンプレイス市街地
第18戦 アメリカGP     インディアナポリス・GPコース


□ついにドイツGPが待望のカレンダーイン!
                 ルーマニアではなくチェコとの隔年開催へ!!

発表された4thシーズンのカレンダーで、集まった関係者が一様に首を傾げた個所
があった。それはドイツGPとルーマニアGPが同一カレンダー内に存在しているこ
とだ。当初ドイツGPはルーマニアGPとの隔年開催になると見られていた。シュト
ロゼックのロムニ・ダキア買収がその根拠で、シュトロゼックはのちのちロムニ・ダ
キアを完全買収しドイツGPも毎年のレギュラー開催にすることを目論んでいると大
方のメディアは見ている。そのためゆくゆくはロムニ・ダキアのホームGPであるル
ーマニアがカレンダーから押し出されると見られていた。しかしこの暫定カレンダー
を見ると、どうやらその推測は正しくなかったようだ。では代わりに4thのカレン
ダーから外れたのはどこか? それがチェコGPだ。ドイツGPは今後当面のあいだ
チェコGPとの隔年開催になることがFNOから発表された。

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ついにNeXXのカレンダー入りを果たしたドイツGPはホッケンハイム(写真左)での隔年開催。
そのドイツとの隔年となるのはブルノ(写真右)で行われるチェコGPだった。開催権料の高騰が
隔年開催の理由というチェコGPは、このままカレンダーから外れてしまうのか?

チェコGPは初年度、2ndと連続してGPを開催し3rdにもカレンダーイン、興
行収入実績も好調で今後も毎年の継続開催になると見られていた。しかしネックにな
ったのが開催権料だという。現在噂にあがっているだけでもNeXXの誘致活動をし
ている国はモロッコニュージーランド、トルコ、シンガポールなどいくつかある。
競合が多くなると影響を受けるのが開催権料で、チェコGPの主催者側はこのままだ
と毎年のレギュラー開催は難しいという判断を下した。そこに隔年開催の提案を持ち
込んだのがドイツGPだったという。NeXXの開催権料高騰問題が影響を及ぼした
のはチェコだけではなく、今季まで第14戦にカレンダーインしているタイGPも、
当初の5年契約を2年残しての開催打ち切りとなっている。
何にせよ市街地での超高速バトルが見られると人気のルーマニアが、レギュラー開催
継続となったことは喜ばしいことだ。しかし逆にNeXXで最も追い抜きのしにくい
低速テクニカルコースのブルノが毎年見られないのはやや寂しい限り。先にも挙げた
ようにNeXX開催を希望している国はほかにいくつもある。今後もまた頻繁にカレ
ンダーの書き換えが行われるだろう。
ひとまずドイツGPは4thシーズンから、F1でもお馴染みの“新しきオールドコ
ーズ”ホッケンハイムで行われる。


□ドバイに続きコペンハーゲンも、暫定コースレイアウトを公表!!

これまで噂にあがっていたデンマークGPが4thシーズンの暫定カレンダーとして
発表されたことに合わせ、FNOは昨年末に公開した『ドバイ市街地コース』の仮レ
イアウトに続き、『コペンハーゲン市街地コース』の仮レイアウトも公開した。昨季
の終盤に降って涌いたかの如く唐突に浮上した話だったが、早くも4thシーズンの
暫定カレンダーに名前が載るほど計画は具体的に進行していたようだ。
公開されたレイアウト図はデンマークGP組織委員会から提出されたもので、そこに
FNO側が求めるいくつかの修正を加え、FNOの開催基準に準拠させた形となると
いう。発表会見を行ったFNOのマネージングディレクター、ハーディー・フラッシ
ュによればその修正はほんのわずかなものだという。

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組織委員会から提出された”コペンハーゲン市街地コース”のレイアウト。確かに
フラッシュのいう通り、全長5kmを超えるコースとしては極端にコーナー数が
少ない。仮設縁石によるシケインの追加などが修正策か?

「先に話した通り、私はデイトン(・ビル運営統括部長)と二人で既に何度かコペン
ハーゲンを訪れ、組織委員会の面々と話している。デンマークGPは元々F1の開催
を想定した計画だからね、開催計画についてはほぼ問題ないレベルだったよ。あとは
コースレイアウトだ。このレイアウトはヘルマ〇・テ〇ルケによってデザインされた
ものだ。コースのロケーションとしては非常によく考えられているよ、コペンハーゲ
ンのランドマークの多くがレイアウトに取り入れられている。クリスチャンスボー城
や王立図書館なんかがね。ドライバーはまるでお伽話のような、とても美しい景観の
中を走ることになるだろう。あとは一つ二つどこかに修正を加えてGPサーキットに
したい。これをデザインしたティ〇ケは、どうしたら退屈さを吹き飛ばせるかを考え
ていたんだろう。今のままではあまりにも全開区間が長すぎる。あと1、2か所低速
コーナーを加えたいね、まあここは最終的に技術委員会が判断を下すことになるだろ
う。」と話した。
「私は、いや私だけではない、NeXXの関係者のみんながデンマークGPに大きな
期待を寄せている。デンマークはドイツやポーランドベネルクスにも近いし北には
スカンジナビア各国がある。欧州のどこからだって来られるんだよ。欧州でも市街地
レースは数少ないし、開催されれば大盛況はまちがいないだろうね。」と語るフラッ
シュ。デンマークGPに寄せる期待の大きさは我々メディアやファンも一緒だ。4t
hシーズンのNeXXは今以上に華々しいものとなるだろう。

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写真左はクリスチャンスボー城デンマーク政府や王室の迎賓館として使われ、国会議事堂や内閣府
最高裁判所なども置かれる。また”ブラックダイヤモンド”と呼ばれる王立図書館の新館(写真右)は近代
的な建築で、ライトアップされた夜の外観はまさに二つ名に相応しい景観を誇る。歴史的な景観と新しさ
が混在した美しい街、それが『北欧のパリ』コペンハーゲンだ。


インドネシアGPは5thシーズンが最後?
               6thシーズンから第2戦はマレーシアGPに??

現在第2戦として行われているインドネシアGPだが、将来的には近隣の他国に取っ
て代わられるかもしれない。現在“東南アジア枠”として開催されているインドネシ
アだが、インドネシアGPもまた主催者側が開催権料の高騰に頭を抱えているようだ。
またセントールサーキットの施設老朽化も大きな問題のひとつで、改修費用プラス開
催権料の支払いが主催者側にとって大きな負担になることから、契約最終年である5
thシーズンで開催を打ち切るのではとの噂がある。さらに6th以降この第2戦に
はマレーシアがカレンダーインするのではないかとも囁かれている。
インドネシアは現在ASEAN最大の自動車市場であり、EVやバイオディーゼル
といったいわゆる『環境車』の普及を推進している。またお隣のマレーシアのチーム
プルトンがNeXXに参戦していることでインドネシアGPには隣国マレーシアのフ
ァンも大挙して詰め掛ける。インドネシアとマレーシアは何かと仲の悪さが指摘され
るが、レースシーンにおいてはファンや関係者共々皆比較的仲良くしているようだ。
また実はNeXX発足当初からマレーシアも開催地候補に挙がっており、FNOと現
地主催者側との話し合いも何度か持たれていたらしい。しかし、舞台となるセパン・
インターナショナル・サーキットも9年にわたるF1開催で施設の一部が老朽化、N
eXXの開催基準、そして安全基準に準拠させるためには大規模な改修工事が必要で
インドネシアに先を越されたという経緯がある。
しかし、NeXXに参戦するプルトンは本来自国マレーシアでの開催を望んでおり、
現在改修中のセパンの工事が終わり次第NeXXマレーシアGPの誘致に乗り出す構
えのようだ。

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5thシーズンでひとまず契約を打ち切ると見られているセントール(写真左)。大規模改修工事が
間もなく終わりそうなセパン(写真右)に、”東南アジア枠”を明け渡すことが濃厚だ。


また、第2戦に入るのは開幕戦の舞台オーストラリアからほど近いニュージーランド
ではないかとの噂もあるが、第14戦タイが4thのカレンダーから外れるという現
在の状況では、FNOが東南アジアでの開催を完全に無くすことは考えにくいと見る
向きもある。またニュージーランドは早い段階から誘致に動いていたものの、主催者
側が開催資金の調達に苦労している状況が伝えられており、近い将来での開催は難し
いと見られている。
こういった状況を踏まえると、6thシーズン以降の第2戦はセパンでのマレーシア
GPになる可能性が高い。前半戦随一の高速サーキット、セントールでのレースが見
られなくなるのは残念な限りだ。しかし来季第3戦の舞台としてカレンダーに加わる
予定の『ドバイ・モーターシティ』はなかなかの高速レイアウト、セパンとの釣り合
いは取れそうだ。

 

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■PADDOCK PRESS


ロンバルディア、エンジンサプライヤーとして正式にNeXX参戦発表!
                   新たなサプライヤーはイタリアからも!!

かねてからNeXX参入の噂が挙がっていたカナダの重工業コングロマリット、ロン
バルディアがついに正式にNeXX参戦を表明した。4thシーズンからはなんと、
北欧に本拠を置くノルディックチームにパワーユニットを独占供給するという。また
時を同じくして、小型スポーツカーを中心に販売するイタリアの自動車メーカー、ガ
ヤルドもNeXXへの参入を表明。こちらは4thシーズンから同郷のリナルディに
パワーユニットを独占供給する。
ロンバルディアの参戦が正式発表されたのは年明けの1月5日、モントリオールにあ
る本社で会見を開き社長であるフェリック・ラーテル氏自らNeXXへのエンジンサ
プライヤーとしての参入を発表した。ラーテル社長は会見で「我々は新しい挑戦を始
めます。それは我々にとって大きな意味と価値を持ち社会に大きなイノベーション
もたらすものとして、我々が挑戦する意義のあることです。我々はFormula
NeXXteamの為のパワーユニットの開発に着手します。それは今後我々が持続
可能な社会を、より強固な構造で構築発展させてゆくために重要なことです。我々は
いちモビリティ企業として、この技術が人類社会の持続可能性に大きく寄与するもの
と信じ、また自社の技術発展のためにもNeXXへの参戦を決定しました。」と語り
パワーユニット開発は今後、自社の航空機やレクリエーションモービル開発のための
技術に転用できると、参戦のメリットを語った。
驚いたのはその供給先だ。会見の途中で進行役に促され姿を現したのはミコ・ハンク
ネンとチチ・ソルベルグの二人。つまりロンバルディアパワーユニットの供給先と
してノルディックチームと契約を結んだのだ。ラーテル社長に促され話し始めたのは
珍しく、ノルディックのチーム監督ハンクネンだった。
「我々はこの世界的な重工業企業であるロンバルディア社と、4thシーズン以降の
パワーユニット供給契約を締結したことを大きな喜びをもってここに報告します。4
thシーズンからパワーユニットを変えるということは我々にとって大きな挑戦です。
そしてロンバルディアがNeXXに参入することも大きな挑戦でしょう。我々は新た
な挑戦を共有し、NeXXを共に戦います。」と語り契約締結の喜びを表わした。N
eXX最強エンジンと謳われるスプレンダーと今季で離別するノルディック。彼らの
新たな挑戦は少なからずリスクを孕んでいるが果たして・・・。ノルディック側から
の正式な発表は、1月下旬に予定されている体制発表会でなされる模様。
一方でイタリアからも、エンジンサプライヤーの新規参入の報が届いた。自動車メー
カー、ガヤルドがリナルディとのパートナーシップで4thからNeXXに参入する
という。リナルディは本拠地ファエンツァのチーム施設でガヤルド側と会談を持ち、
4thからの供給で合意に達したとガゼッタ紙やコリエレ紙といった国内各スポーツ
紙が伝えている。

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ついに参入を正式表明したロンバルディア(写真左)の供給先は、驚きのノルディック。両者にとって大きな
挑戦となる。またイタリアからはガヤルド(写真中央)がリナルディと組んでの参入を表明。695(写真右)は、高度の改造で国際レースを席捲し『ピッコロモンスター』と称されたガヤルドの代表的な存在。

ガヤルドは1949年に設立の老舗。フ〇アット車をベースにチューンナップしたレ
ーシングカーで、当時のレースシーンを席捲したメーカー(というよりも当時はチュ
ーナーだった)だ。現在ではフィ〇ット参加に入り、伊・仏メーカーを中心とする多
国籍自動車製造企業テスランティスの子会社となっている。日本でも人気の〇ィアッ
ト500(チンクエチェント)をベースに、ガヤルドがチューンナップを施した59
ガヤルド、695ガヤルドや、マ〇ダ・ロードス〇ーとコンポーネンツを同じくす
るライトウェイト・オープンスポーツ、124ガヤルドなどが人気を集めている。
テスランティスはイタリアのフィア〇ト・クライス〇ー・オートモービルと、フラン
スのグループPSAの折半出資で設立、既にNeXXに参戦しているフランスのピジ
ョンも実はこのグループ企業である。
リナルディとガヤルドで行われたファエンツァでのトップ会談は、ガヤルド社のラル
フレード・アルタミラ社長ほかFCA側の人間が数人と、リナルディ側はオーナーで
元F1ドライバーのカルロ・バニラ氏、チームマネージャーの佐々木正史氏などが同
席したということだ。
イタリアのメーカーは総じて水素エンジン車の開発には非積極的な印象だが、フル電
動化についても積極的な印象はなく、そもそも『環境車』というジャンルに対するリ
アクションが薄いところがあり、自動車業界全体においても今後の方向性が注目され
ていた。EU内においては現在も、電気自動車を優遇し普及を図るような国策を取っ
ている国は多いが、例えばイギリスやドイツなどは電動化の“その後”を見ている。
元々水素エンジンに早い段階で可能性を見出していたDMWやアシュトンバーキン
母国であるこれらの国は既に、電気自動車と水素エンジン車のクルマ社会における各
々の適正を見出しており、用途により各々を使い分ける“共存”策に動きつつある。
それに伴い環境車分野では遅れをとっていたイタリアが、導き出した答えの一つが水
素エンジン車の開発だったのだろう。セルバンティスグループにはラマンチアやマテ
ラツィ、アルタミラノといったイタリア車メーカーがあるが、これらの高級志向寄り
のメーカーに先んじてまずは大衆層に近いメーカーであるガヤルドが動いた格好だ。
ロンバルディアガヤルドいずれもパートナーシップを結んだ各チームの体制発表会
で改めての参入表明があるという。これで4thシーズンに参入するエンジンメーカ
ーは、現行の6社に新たな2社が加わり計8社となる。4thシーズン以降はより一
層激化する“パワーユニット戦争”が見られるだろう。今から4thシーズンが楽し
みだ。


◇体制模索中のアルバノビッチ、4thシーズンから
              パワーユニットをアシュトンバーキンにスイッチ!!

メーカーの新規参戦の話題の次は、既存チームのエンジン変更のニュース。新エンジ
ンフォーマットとなる4thシーズンに向けて、これまでの体制を見直すチームが増
えている中で、今季苦戦をしいられたアルバノビッチも4thからエンジンサプライ
ヤーをスイッチすることがわかった。2月頭に予定されている体制発表会を前に、チ
ームマネージャーのニコライ・ボルコフが我々の取材に答え明かした。
アルバノビッチは今季の中盤あたりからいくつかのエンジンメーカーと接触しており
新規参入メーカーも含め新たな可能性を探っていたという。その結果彼らが4th以
降の供給契約を結んだのがアシュトンバーキンだった。
アルバノビッチは昨季、初年度に起用したジョン・オクスレイド=ライアンからロビ
ー・ハーンへとテクニカルディレクターをチェンジ。ハーンを中心とした今後のより
長期的なビジョンでの強化計画を立てており、その中でエンジン契約の見直しも議題
としてあがっていた。アルバノビッチは現在DMWユーザーだが、DMWエンジンは
どちらかというとレラシャシーとの相性が良い。DMWがコンパクトなエンジンで、
トップスピードよりもピックアップ、トルク重視であることがその要因だが、昨季チ
ームのTDハーンはトップスピード重視と言われるシグマテックシャシーへの搭載を
想定した場合、ややパワー不足感のあるDMWではシグマテックのシャシー特性を活
かしきれていないという結論に行きついた。そこで今回のエンジン変更に至ったとい
うわけだ。

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初年度から使用してきたDMWからのエンジンチェンジを決断したアルバノビッチ。しかしヘンジン
チェンジをチームに具申したロビー・ハーンはすでにいない。ロストネルフェイト(写真右)はどの
ようにアシュトンエンジン(写真左)を活かしてゆくか、来季へ向けて準備が進む。

しかし、エンジン変更が妥当との判断を下したハーンはもはやチームにはおらず、今
季からTDに就任したターベイ・ロストネルフェイトがどのような方向性で今後の開
発を進めるかが、大きな問題となってくる。果たしてこのエンジン変更はアルバノビ
ッチにとって吉と出るか凶と出るか。ハーンありきでのエンジン変更だったとするな
ら、そのハーンが既にチームを離脱した今アルバノビッチの策は支離滅裂な様相を呈
してしまっている。果たしてここからアルバノビッチはどう軌道修正をしてゆくのだ
ろうか? ロストネルフェイトは今後、開発においてやや難しいい舵取りを迫られる。
まずは現行パッケージ最終年となる来季をどう戦うのか、注目が集まる。

 

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■Hot Stove League

□ピットブル・エクストリーム・レーシング
 No.12:ニコ・ラムダ(AUT) 
 No. 8:ミシェル・ボナパルト(FRA)

□マーキュリー・レーシング・オーガナイゼーション
 No. 1:アレックス・バトラー(IRL)
 No.21:アリエル・ティルクム(UK)

エヴァー・グラハム・レーシング 
 No. 7:カーティス・マルケーナス(AUS)
 No.10:ジェストン・バロン(UK)

トライアンフ・スクエアジャパン・レーシング
 No.15:日向 俊郎(JPN)
 No.30:ルドルフ・マイネ(GER)

アブラモビッチスタンフォード・レーシング
 No. 5:ジョンブル・チャップマン(UK)
 No. 2:アレン・バーンズ(ASU)

プルトン・オートスポーツ
 No.17:トゥーリ・ヴィックス(EST)
 No.55:メロディ・パトリシア・ノーマン(USA)

□スクーデリア・リナルディ
 No.26:ミケーネ・ポルボローネ(ITA)
 No.34:スティラノ・シエナ(ITA)

□クラークソン&メイ・ハモンド・レーシング
 No.11:デイヴィス・ファング(UK)
 No. 9:ジョリー・セプター(SAF)

□シュトロゼック・ロムニダキア・アウトシュポルト
 No.18:ジャッキー・グーデリアン(USA)
 No.28:バッドアス・バーガー(AUT)

ドラゴンフォース・チャイナレーシング
 No. 0:宋 昇龍(CHI)
 No.33:アレオ・ファーシマス(LUX) 

□ノルディック・モータースポーツ
 No.14:ケリー・ラスムッセン(DEN)
 No.91:ミック・ハイデンフェルド(GER)

□サントス・ロコ・オリベイラ・レーシング
 No.50:アイウトン・フィリップス・ラ・ポルタ(POR)
 No. 3:アンドレアス・サントス・フィリオ(BRA)

アントネッティオートスポーツ
 No.77:アレンザンダー・ロッソ(USA)
 No.16:ファン・カレッジ(FRA)

□マルドゥーク・レーシング・ドバイ
 No.27:ビル・リヴィエール(CAN)
 No. 4:ゾルタン・ゲラ(HUN)

□ガジャック・ルルーシュ・スポール
 No.26:セドリック・タンデイ(FRA)
 No.19:ティモシー・ルーツェン(BEL)

         

◇残留報道から一転、ゲラ電撃移籍!
            グーデリアンとのトレードで衝撃のマルドゥーク入り!!

セプターのクラークソン入りで移籍市場のサプライズは終了したかに見えたが、最後
の最後で大きなどんでん返しが待っていた。当初様々な噂があがりながらもシュトロ
ゼックに残留すると見られていたゾルタン・ゲラの、マルドゥーク移籍がこのほど電
撃的に発表された。マルドゥークは年明け1月4日、ファクトリーのあるリーフィー
ルドで今季の体制発表会を行いゲラ獲得を発表した。
発表会には監督のファン・ドットを始めボス・グラウン、そして今季から加入するテ
クニカルディレクターのロビー・ハーンらチーム首脳が顔を揃え、更にはチームオー
ナーのダムハン殿下も出席した。また今季もNo.1シートに座るビル・リヴィエー
ルとゲラに加え、リカルド・イセクソンとサイード・アルシャハラムという2名のリ
ザーブドライバーも出席。オールキャスト総出の発表会となった。会見で第一声を発
したのはダムハン殿下だった。「本日は我々の体制発表会にお集りいただき誠にあり
がとうございます。我々はまず、我々にとっての2シーズン目を戦うにあたり2人の
新たな戦力を迎えられたことを心より嬉しく思います。我々のチームは今季これによ
り組織の技術力も、戦闘力も大きく進化を遂げることでしょう。これもファン・ドッ
ト監督をはじめチーム全体が同じ方向を向いて1シーズンを戦い通した成果です。こ
こにいるドット監督は就任時私に「3年でタイトルを狙えるチームにする」と言いま
した。そして我々は2年目にして既にそこに近いところにいる。私は今から開幕が待
ちきれません。我々は獲れるものは貪欲に獲りに行く。何もタイトルに手をかけるの
は必ずしも3年目である必要はありません。今季の我々の活躍をご期待下さい。」と
今季への並々ならぬ期待を語った。

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発表会では第一声を発したダムハン殿下(写真左)は、昨季の成績に大いに満足の様子。早くもタイトルとい
う言葉が飛び出す。かと思えばドット監督(写真中央)は自身の「3年で~」という発言を上方修正。2nd
シートにゲラ(写真右)を獲得したチーム首脳はホクホク。当然チームの士気は高い。

続けてマイクを持ったドット監督も「今季我々は昨季以上に皆を驚かせるだろう、そ
の準備は既にできている。今季まず我々は、テクニカルディレクターにロビー。ハー
ンを獲得した。これはチームがタイトルを狙う上で欠かせないピースの一つだった。
私と彼はF1で戦っていたころから“ワンチーム”だった、もちろんボス(・グラウ
ン)も含めてね。私は彼がどういう人間でどういう才能を持っているかを誰よりも熟
知している自負がある、彼も同じだろう。このチーム組織はロビーにとって最も仕事
のしやすい環境だと思うよ。私のわがままも通りやすくなるしね(笑)。ロビーが我
々のオファーに応じてくれたことに心より感謝する。そして、ゾルタン・ゲラはもう
一つの大きなピースだった。彼はこのNeXXにおいて最も計算のできるドライバー
だと私は思っている。だから私が殿下に獲得を望んだんだ。チームとしてタイトルを
獲るには彼のようなドライバーが不可欠だ。ファイティングアーティストのビル(リ
ヴィエール)と仕事人のゾルタンは理想的なパッケージだ。殿下が言った通り、我々
は既にタイトルに手がかかっていると私も思っている。よって私は自身の発言を訂正
しなければならない、我々は「3年でタイトルを狙えるチームになる」のではなく、
「2年でタイトルを獲る」。今季既にその準備は整った。」と、昨季を上回る活躍を
誓うと共に、4thシーズンでのタイトル奪取も公言した。
また、普段は寡黙なことで知られるゲラも、マルドゥーク加入の喜びを次のように語
った。「私のようなドライバーを高く評価してくれたマルドゥークチームに大変感謝
している。私のレースキャリアは別段華のあるものではないし、ここに至る実績にし
ても凡庸そのものだ。トゥドール氏(ロムニ・ダキアオーナー)にフォーミュラカー
に乗らないかと誘われなければ私はここにはいなかっただろう。ロムニ・ダキアで戦
えた2年間と、私をフォーミュラレースに導いてくれたトゥドール氏に心から感謝し
たい。そしてこの2年間があったからこそ、私はこの新進気鋭のマルドゥークチーム
の一員になれた。これは私のレースキャリアにとって最も大きな挑戦だ。このチーム
はデビュー2年目にして既に王座を狙える力を持っている。私は普段からあまり感情
が表に出る方ではないんだが、今日はすこしばかり顔が緩んでいるかもしれないね。
心の底から湧き上がるワクワクを抑えられないんだ(笑)。」と自信が言ったように
普段は言葉少ななハンガリー人が、珍しく饒舌に自身の想いを語った。
ゲラはこれまで今季もシュトロゼックに残留すると見られていた。しかしゲラ獲得を
強く望んだドット監督がダムハン殿下を動かした。ゲラは既にシュトロゼックとの契
約で合意に達していたと見られ、ゲラとの交換トレードでシュトロゼックへ移籍した
グーデリアンもマルドゥークと残留で合意間近と言われていた。しかしドット監督の
強い要望が、この時期になってのサプライズトレードという形で実現した。
しかし、先ごろマルドゥークはアルバノビッチからTDのロビー・ハーンを引き抜い
たことで物議を醸した。今回のゲラ獲得も双方合意間近の状況からのやや強引なドレ
ード劇で、ある種の引き抜きと言えなくもないことから、関係者たちは一様にマルド
ゥークの“やり方”に警戒感を強めている。
ともあれこれでマルドゥークは、参戦2年目ながらタイトルを狙える位置に浮上して
きたのは間違いないだろう。来季、NeXXのパワーバランスは大きく変わってゆく
かも知れない。来季の開幕が今から待ちきれない。


◇ついに全チームの陣容が固まる! 最後まで空いていた
         マーキュリーの2ndシートには昨季途中離脱のティルクム!!

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驚きの人事はここでも!? マーキュリーの2ndシートに座ることに
なったのが昨季途中離脱のティルクム。チームの大きな期待に今季こそ
応えられるだろうか? 他チームの評価は割れている。

2年連続でドライバー王座を獲得したアレックス・バトラーを擁するにも関わらず、
最後の最後まで2ndドライバーが決まらずに奔走していたマーキュリーチームだっ
たが、年が明けてようやくその空きシートに座るドライバーが決定した。昨季途中で
クラークソンを離脱したアリエル・ティルクムと単年契約を結んだ旨が、マーキュリ
ーから発表されたのだ。この発表は年明け1月4日に更新されたマーキュリーのチー
ムサイトで発表されたもので、他の多くのチーム同様1月末ごろに行われる体制発表
会で大々的に発表される。
チャンピオンドライバーを擁するチームの2ndドライバーがこの年明けまで決まら
ずいたことも驚きだが、決定したドライバーが昨季途中離脱したティルクムというの
も驚き。マーキュリー側はチームサイトでの掲載分の中でティルクムがマカオF3を
連覇している若き実力者であること、今季24歳とまだまだ伸びる可能性のある年齢
であること、クラークソンの旧体制下のものである昨季の戦績には全く参考に出来ろ
がないことなどを挙げ、チームとして大きな期待を持ってティルクム獲得したことを
強調している。
しかし、ティルクムに対する評価はNeXX参戦チームでも様々で、トップフォーミ
ュラで通用するか否かは未だ大きく見解が分かれているところだ。いかにチームのサ
ポートが手薄だったとはいえ12戦で6度の予選落ちを喫したことと、モチベーショ
ンを失った後半戦でのレースに臨む態度が各チームの評価を微妙なものにさせている。
また、2ndドライバーのサポート体制ではマルケーナスの流出を招いた昨季のマー
キュリーの体制も決して褒められたものではなく、若いティルクムの才能を活かしき
れるのか疑問の声も。最近のパドックでは実質“中規模プライベーター”とでも呼ぶ
べき運営体制のマーキュリーでは、チームがバトラーに注力する分No.2は旧体制
下のクラークソンよろしく冷遇されるとも囁かれている。
それにここまで2ndドライバーの決定がズレ込んだ揚げ句に、獲得したドライバー
が昨季途中離脱したティルクムという決定には、どうしても“間に合わせ”感が拭え
ない。昨季はバトラーの連覇とあわせ、チームタイトルの獲得も目標として掲げてい
たマーキュリー。しかし結果昨季は後半戦、実質チームに“ネグレクト”されたマル
ケーナスは失速し、チームタイトルには手が届かなかった。
マーキュリーはまずチャンピオンドライバーを擁するチームとして、チーム体制の強
化に動くべきだと指摘する声もパドックにはある。要するにチームの“格”をあげる
ためにお金を使うべきという意見で、これに賛同する関係者は少なくはないのだ。は
たして来季バトラーとティルクムのラインナップで、マーキュリーはタイトルに手が
届くのか? 来季のマーキュリーと、そしてティルクムの戦いぶりに注目したい。

              

次号はいよいよ開幕直前号だ。準備万端の15チームの今季体制、そして今季の展望
をお伝えしたい。では次号もご期待ください!!

 

NeXXtream Press「オフシーズン号」

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◆オフシーズン号

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■NeXX Topix


◇現行シャシー最終年の来季、最後のマイナーチェンジでどう変わる?

4thシーズンからアメリカのデンプシーが参入し3メーカーとなるNeXXのシャシ
ーデペロッパー。それにあわせて現行2社は4thシーズンからシャシーを完全刷新、
新型を投入することで既に合意済みだ。ということは来季3rdシーズンが現行シャシ
ーの最終年となり、2社とも現行シャシーに最後のリファイン・アップデートを施すこ
ととなる。果たして来季シグマテック、レラの2社は現行シャシーにどのように”手を
入れて”くるだろうか?

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来季は現行シャシー最終年。2社ともラストアップデートを施してくるはずだ。

これまでのレースからあげられる2社のシャシーのざっくりとした特徴は、「シグマテ
ック=中高速型」、そして「レラ=中低速型」。そしてシグマテックが直線で速いマシ
ンであるのに対しレラはいわゆる”コーナリングマシン”と言われてきた。1stシー
ズンは特にその傾向が強く、レラのあげた勝利はサーファーズ・パラダイス、ヤス・マ
リーナ、ブルノといった中低速テクニカルコースばかりで、その他のコース、特に高速
コースではシグマテックが速さを見せつけた。シーズン全体の勝利数でもシグマテック
15勝に対しレラ3勝とシグマテック勢が圧勝。初年度のレラシャシーピーキーなコ
―ナリングマシンで、乗りこなすのが難しいマシンとされた。
しかし2ndシーズンへ向けてレラはシャシーを大幅に改良してきた。前後のダウンフ
ォース両のバランスを調整し、フロアパネル上に整流板を追加しボディ周りの気流を整
えた。またフロントパネルの前端、左右サイドポッド手前の位置に配されたヴェンチュ
リ効果を狙ったエアトンネルを小型化し、リアディフューザーとのバランスを調整する
など空力を徹底的に見直した。その結果ピーキーだったコーナリング特性がマイルドに
なりドライバビリティの改善に成功。それにより今季は7勝をあげる活躍を見せた。中
でもポルボローネが優勝したムジェロやラ・ポルタが優勝したバクー、そしてグーデリ
アンが優勝したマカオなど、テクニカルな中高速コースでの勝利が増えレラが、ベース
にある”コーナリングマシン”というストロングポイントをスポイルせずに、ウィーク
ポイントをしっかりと潰してきた様子がうかがえた。
一方のシグマテックはトップスピード重視のコンセプトを変えずに戦った。全体的なマ
シン特性としては今季も変わらず”直線番長”、ポール・リカールやサンパウロ市街地
ブカレストなどロングストレートを有する高速コースを中心に速さを見せつけた。また
エンジンや補器類搭載時のマシンバランスにおいてのユーティリティ性が高く、各メー
カーのエンジン搭載時のマシンバランス変化が少ないことから”どのメーカーのエンジ
ンでも載せられる”という点での優位性が隠れた強みだった。半面ピットブルの2台が
バクーで大苦戦したように、天候や路面状況などの諸条件とセッティングによっては全
く戦えなくなってしまうこともあった。全18戦の中で特に風の影響が大きいことで知
られるバクーでは、ピットブル勢は2台揃って予選で後方に沈み決勝ではラ・ポルタが
優勝、2位日向、そして4位にヴィックスとレラ勢が上位を独占した。
2ndシーズンを終えての2社のシャシーはレラに大きな改善が見られたが、基本的な
マシンの性格は概ね変わっていない。しかしレラが今季ムジェロやバクーなど、比較的
速度域の高いサーキットで強さを見せたことは忘れてはならないだろう。純粋なハイス
ピードコースでは未だシグマテック勢が優位であるものの、速度域の高いテクニカルト
ラックでの速さは拮抗している。来季は2社ともそのあたりを念頭においてリファイン
・アップデートを施してくるはずだ。果たして来季のマシンはどのようなビジュアルで
どのような性格のマシンになるのか、来季シャシーの合同発表会は年明けの1月12日
だ。


◇シュトロゼック正式参戦で4thから、ドイツGPがルーマニアGPとの隔年開催へ

現在F1カレンダーからも外れトップフォーミュラの世界選手権が開催されていないド
イツだが、この度NeXX4thシーズンのカレンダー入りが決定したようだ。ドイツ
自動車クラブ(AvD)のリュック・ライツ・リンデルンがアウトモートア・ウント・
シュポルト誌の取材に対して語った。FNO側からは年明けにも正式発表があるという。
NeXXでのドイツGP開催はカテゴリ発足当初から既に検討されていたが、現地プロ
モーターやその他開催地候補との調整の関係で棚上げされていた。
状況が変わったのは2ndシーズンの開幕直後で、ロムニ・ダキア買収に動いたシュト
ロゼックがAvDに働きかけGP開催の話が再び動き始めた。当初の開催計画はホッケ
ンハイムを舞台としたもので、その後はニュルブルクリンクやオッシャースレーベンで
開催する案なども上がったが、当初の計画通りホッケンハイムでの開催に落ち着いたよ
うだ。また開催は当面の間毎年ではなく、4thシーズンからルーマニアGPとの隔年
開催となるという。計画通りならドイツGPの最初の開催は4thシーズンとなるため
偶数シーズンはドイツGP、奇数シーズンはルーマニアGP開催というスケジュールに
なるようだ。
また現在ルーマニアGPは第12戦に設定されているが、ドイツGP開催シーズンはカ
レンダーに調整が加えられヨーロッパラウンドの前半戦、つまり第6~9戦あたりに組
み込まれるのではないかという。これは欧州内の移動経路にカレンダーを準拠させるた
めである。また4thシーズンからは第13戦の舞台がアゼルバイジャンからカザフス
タンへと変更になり、デンマークGPのカレンダーインの噂と同時にチェコGP開催終
了の噂もあり、このあたりのスケジュール調整は簡単ではないがFNOははたしてどう
対処するつもりなのだろうか。ひとまず年明けの正式発表を待ちたい。
ドイツGPの舞台となるホッケンハイムは、ドイツ南西部バーデン=ヴュルテンベルク
州にあるサーキットで、1932年開設という伝統のオールドコース。”黒い森”シュ
バルツバルト内に敷設されたコースは当初全長12kmというロングコースだったが、
度重なる改修が加えられ現在は1周4.574kmの中高速サーキットとなっている。
中でも1965~2001年までF1ドイツGPが開催された1周6.8kmのレイア
ウトは、4本のロングストレートを3つのシケインで繋いだ超高速レイアウトで、数多
くの高速バトルを生んだ当時のレイアウトが改修されたことを惜しむ声は根強い。
何はともあれドイツGPの名がトップフォーミュラの世界選手権に戻ってくるのは喜ば
しいいことだ。カール・ベンツがガソリンエンジンを搭載した”世界発の自動車”を生
み出してから早1世紀半。水素+電気モーターとフォーマットは変われど、”自動車”
は生き続けている。そんな自動車”発祥の地”ドイツでのGP開催は、NeXXにとっ
て大きな意味を持つ。FNOは難しい調整を迫られるが、ぜひともヨーロッパの自動車
大国での永続的な開催につなげていって欲しい。

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ついに4thシーズンからカレンダーに加わることが正式決定しそうなドイツGP。伝統
オールドコース、ホッケンハイム(写真左)での開催はシュトロゼック(写真右、本社ビル)
が後押し。


◇4thから舞台を移す予定のドバイGP、市街地コースの仮レイアウトを発表!!

4thシーズンからの市街地でのGP開催を目指すドバイだが、このほどドバイの主催
者側がFNOに提出したレイアウト案が明らかになった。FNOのマネージングディレ
クター、ハーディー・フラッシュへの取材で明らかとなった。
以前、第4戦ブラジルGPの舞台であるサンパウロに姿を現したマルドゥークチームの
オーナーにしてドバイ王家の皇太子ダムハン殿下は、その時の囲み取材で市街地レース
開催への想いを熱く語っていたが、同時にすでにコースとして使用する区画もめぼしを
付けていると語っていた。そして今回ドバイGP主催者であるマルドゥーク家の関連会
社から暫定のレイアウト案が提出されたそうだ。

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上図が主催者側から提出された”ドバイ・モーターシティ・サーキット”の全体図だ。前半区間はロータリーを
使ったクランク型シケインや直角ターンの多い中低速区間だが、後半はほとんどが全開区間


レイアウトは以前殿下が語った通り、『モーターシティ』と呼ばれる区画と『スタジオ
シティ』と呼ばれる区画を結んだ5.5km前後の区間。現在ドバイGPに使用されて
いるドバイ・オートドロームに隣接する区画で、ゴーカート場を囲むように敷設される
ことになる。緑豊かな住宅街として知られる『モーターシティ』は、周辺には高級住宅
街として有名なジュメイラ地区があり、他にも大きなショッピングモールやバーベキュ
ースポットなどもある住民の憩いの場。『スタジオシティ』区画にはシネマコンプレッ
クスや円形劇場、乗馬クラブなどがある。さらに足を拡げるとポロクラブゴルフコース
や様々なスポーツ施設のある『スポーツシティ』という区画も。
レイアウトは全長5.5km、コーナー数は12となり、全開区間が多い中高速トラッ
クになるとみられる。コース前半はターン1からスタジオシティの区画に入り、交差点
やロータリーをシケインとして利用したテクニカルセクションとなり、ゴーカート場の
外周を走る『デトロイト・ロード』と呼ばれる約1.2kmの全開区間がメインとなる
コース後半は超高速区間となる。前述のとおりドバイ・オートドロームに隣接した区画
のため、周囲の町並みは関係者にはお馴染みだがそこをNeXXマシンが駆け抜けると
なると期待感は高まる。レースが行われるとなれば“ナイトレース”となることが確実
視されているためなおのことだ。

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今季ドバイGPが行われたドバイ・オートドロームは、モーターシティ・サーキットのすぐ隣の
区画。まさに”砂漠のメトロポリス”を駆け抜けるエキゾチックなGPになる。


1970年代以降に大きく発展を遂げたドバイは豪壮で近代的なビジネス区画の町並み
と、美しく整った住宅地区の町並みが溶けあった“砂漠のメトロポリス”だ。開催が正
式に決定すれば全18戦中7戦が市街地のNeXXに、カレンダー中最もゴージャスな
ストリートレースが加わることになる。さらに4thシーズンにはコペンハーゲン市街
地でのデンマークGPの開催も予定されており、さらにゴージャスさに拍車がかかるこ
とになる。4thシーズンのカレンダー発表が今から待ちきれない。

 

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■PADDOCK PRESS


◇クラークソンが驚きの来季チーム体制発表!
                スプレンダーとセプター獲得で来季は大躍進か!?

もしかするとこの発表はオフシーズン最大のトピックスかもしれない。シーズン途中の
2ndドライバー解雇に始まりチームマネージャーの交代、そして50名以上のスタッ
フの入れ替えを行うなど随所で話題を振りまいているクラークソンが、NeXX最強エ
ンジンと名高いスプレンダーと元F1王者のジョリー・セプターの獲得を発表した。ク
ラークソンは彼らのファクトリーがあるミルトンキーンズで、クリスマスの一週前の日
曜に来季の体制発表会を行いこの事実を公表した。
会見の際にはオーナーであるジェレミー・クラークソン、チーム監督のリチャード・デ
ヴィッズ、新マネージャーのスティラノ・ドミニコルの他に、珍しく共同オーナーのジ
ェームズ・メイ、リチャード・ハモンドも同席。さらにはエースドライバーのデイヴィ
ス・ファング、チーム加入が決まったジョリー・セプター、そしてスプレンダー開発チ
ーム総責任者のニール・ライフソンが出席し華々しい会見となった。
第一声を発したのはデヴィッズ監督だった。「我々クラークソン&メイ・ハモンド・レ
ーシングは今日ここに、スプレンダーと来季の供給契約を結んだことと、そしてかつて
”跳ね馬”でF1の頂点を極めたドライバー、ジョリー・セプターが加入する旨を発表
したい。」と切り出したデヴィッズ監督は続ける。「スプレンダーは言わずと知れたN
eXX最強エンジンだ。バトラーを2度ドライバー王座につけマーキュリー、ノルディ
ックの躍進の文字通り原動力となっている。我々はスプレンダーのような優秀なエンジ
ンビルダーを求めていたんだ。これまでの我々はマシン特性上低速コースやツイスティ
なコースで苦戦してきたが、スプレンダーはどんなコースでも持てるポテンシャルを最
大限に発揮できる、高次元でポリバレントなエンジンだ。我々はこれまで2年間共に戦
ってきたアシュトンバーキンに感謝の意を表すとともに、スプレンダーが来季より我々
のパートナーとなることに大きな喜びを感じている。」と話し、スプレンダーのライフ
ソン開発総責任者へと水を向けた。ちなみにニール・ライフソン氏はマーキュリーチー
ムのテクニカルディレクター、ゲドラフ・ライフソン氏の孫にあたる。
「私たちもクラークソンチームと新たなパートナーシップを結べたことを大変嬉しく思
っています。また来季も3チームへの供給体制が確保できたことも喜ばなければなりま
せん。今デヴィッズ監督から「最強エンジン」との言葉がありましたが、これは我々に
対する最大級の賛辞であり、同時に我々が2年間このNeXXで築き上げてきた実績に
対する相応の評価であると自負する所です。我々は意欲あるチームと共に高みを目指し
続ける、そしてこのクラークソンチームからは意欲というか野心といか、そんなものを
感じました。だから今回の契約締結に至った。来季のチームの躍進を期待していてくだ
さい。」と語ったライフソン氏。
このクラークソンとスプレンダーの新たなパートナーシップが第一のサプライズだとす
れば、次なるサプライズはセプターのクラークソン加入だ。「クラークソンは今大きな
改革を実行している。それは選手権に勝つための改革だ。私が加入したのもその一環で
クラークソンは来季本気でタイトル獲りを狙っている。そんな意気軒高なチームに加入
できて大変嬉しく思っている。このチームからは新しい風を感じるし闘志を掻き立てら
れるんだ。他にもいくつかオファーはあったが、私を興奮させるようなビジョンを提示
したチームはなかった。世間じゃ私が法外な報酬を求めていると言われているが(笑)
私にとって重要だったのはチームのビジョンさ。私はチャイナドラゴンで3勝をあげた
が、チャイナドラゴンは私との契約更新はしないと言った。それは彼らの未来図に私は
入っていなかったからだ。さっきも言ったがこのクラークソンというチームは今、野心
的な動きをしていて本気でタイトルを獲りに行こうとしている。絶対的なエースには彼
(ファング)がいるけれど、私もまだ彼には負けないという自負があるし共にF1王者
経験もある。来季のNeXXでは我々の陣容が“最強”と言っていいと思っているよ。
とにかく、職にあぶれそうだった私を拾ってくれて感謝しているし(笑)、ここに来た
からには全力を尽くすよ。」と来季の抱負を語ったセプター。
またこれを受けてファングも「ジョリーが来てくれたのは嬉しい限りだよ。俺たちはF
1時代から見知った仲だし、激しいバトルを繰り広げてきた戦友でもある。優秀なチー
ムメイトがいることはチームにとっても俺にとってもプラスにしかならない。」と発言。記者からの「セプターとはうまくやれる?」の問いには「問題ないよ。このオーナーとこの監督のもとでやれているんだ、ジョリーと問題なんて起きようはずがないね(笑)」と語り会場を笑わせた。いみじくもセプターが言ったようにクラークソンは来季、“元F1王者コンビ”という“最強”の陣容でシーズンを戦うこととなった。

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サプライズ連発の来季体制発表会、デヴィッズ監督(写真左)は意気揚々と来季への展望を語る。シート
喪失の危機から土壇場で”ドリームチーム”のNo.2となったセプター(写真右)は、クラークソンの来季
の陣容を”最強”と形容。エースのファング(写真中央)とのジョイントも前向きだ。


クラークソンはこれまで、ファングが2シーズン続けて100ポイント以上を獲得し、
チームランキングではトップ3を狙える位置につけている。それも歴代サポート不足と
いわれたNo.2ドライバーが満足に戦えない状態でだ。つまりクラークソンの年間ポ
イントのほとんどは、ファングが一人で稼いでいたのだ。しかし来季はそこにセプター
が加入する。セプターはNeXXではファングを上回る3勝をあげており、今季はやや
ムラがあったものの初年度は安定感のあるレース運びで驚異的な入賞率を誇った。No
.2に計算できるドライバーが加入しただけでもクラークソンの総合力は大きく上がっ
たと言っていい。そこへ来てさらに来季スプレンダーエンジンが乗るのだ。こうなると
クラークソンの評価はもはやトップ3に食い込むどころではなく、一躍タイトル争いの
主役候補というステージまで浮上する。クラークソンが使用するシグマテックシャシー
とスプレンダーエンジンの相性は、マーキュリーとノルディックの活躍を見ればわかる
通りだ。クラークソンは文字通り大きな“武器”を手に入れたのだ。
来季、ディフェンディングチャンピオンのピットブルは体制盤石、しかしマーキュリー
は未だNo.2が決まらずやや焦りの色を見せている。またノルディックも今季、ラン
キングは3位であったもののトップ2に大きく水をあけられた。来季クラークソンが割
って入るスキは十分にある。またマーキュリー、ノルディックに不安要素があるという
ことは、クラークソンがチームとしてうまく機能すればスプレンダーユーザーの中でも
No.1に立てるということだ。
それにしてもシーズンオフ直後からあれこれバタバタと働いていたクラークソンは、と
んでもない“クリスマスプレゼント”を投下してきた。以前デヴィッズ監督の言ってい
た“サプライズ”とはこのことだったのだ。来季、クラークソンが大きく躍進するのは
間違いないだろう。あまりにドラスティックに事を進めている為、本当に来季開幕まで
に組織としてまとまれるのかという懸念もあるが、“最強エンジン”+“元F1王者コ
ンビ”とくれば期待の方が勝ってしまうのは当然。また来季はシュトロゼックの参戦や
トライアンフの体制強化など、現在のパワーバランスが崩れかねない要素を他にもいく
つか内包しているNeXX。ともかくもこれで来季も群雄割拠のシーズンとなることは
間違いなしだ。来季のクラークソンの戦いぶりには大いに期待したい。


◇SLOが来季からヨコスカユーザーに! ブラジル期待の若手セラの加入も発表!!

SLOことサントス・ロコ・オリベイラ・レーシングは、来季3rdシーズンからヨコ
スカタイヤを使用することを発表した。SLOは12月15日付で関係各位に電子メー
ルによるプレスリリースを発行、この旨を報告した。
SLOは3人のブラジル人実業家が共同運営するチームだが、そのうちの一人リカルド
オリベイラ氏が昨年ヨコスカの株式の1/4を取得。地元サンパウロ現地法人を設
立するに至り、これに合わせチームの使用タイヤもヨコスカへと変更するのではないか
との憶測が早い段階で飛び交っていた。
プレスリリースはリカルド・オリベイラ氏、パウロ・サントス氏、カルロス・ロコ氏の
3名の共同オーナーの連名で出され、ヨコスカタイヤと3rdシーズン以降の供給契約
を締結した旨が記されており、リリースの一文には「我々の活動がヨコスカ社の世界的
な成功と繁栄の一助となることを望んでいる。」と、オーナーの一人がヨコスカの大株
主であることをうかがわせる文言も。これでSLOは来季、7チーム目のヨコスカユー
ザーとなった。NeXXはご存知の通りフランスのヴァシュロンと日本のヨコスカとい
う2社がタイヤメーカーとして参戦している。初年度は参戦12チーム中ヴァシュロン
とヨコスカのユーザー数は6対6でちょうど半分だったが、今季から新規参戦の3チー
ムは全てヴァシュロンと契約を締結。ユーザー数ではヨコスカ勢6に対しヴァシュロン
勢が9チームとなっていた。

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SLOのタイヤスイッチは早い段階から噂されていたこと。タイヤ使いの巧い二人のドライバーを起用
するチームとしてはアドバンテージとなる可能性第。またブラジルのみならず世界が注目する若手ドラ
イバー、セラ(写真右)のリザーブ起用も発表。


ヨコスカのタイヤはヴァシュロンに比べ”ロングライフ。ローグリップ”傾向と言われ
今季前半は各ユーザーとも特にハードタイヤでの予選スプリント走行で苦戦。ヨコスカ
側はシーズン終盤に急きょ新しいコンパウンドを採用した『改良ハードタイヤ』を投入
するなどしていた。一方でタイヤライフの長さとグリップの落ちが緩やかなことについ
ては評判が良く、状況によっては決勝でハードを使わない『オールソフト作戦』を選択
できるなど、戦略性の高さを評価する声も多く上がっていた。SLOのドライバーはラ
・ポルタ、サントス・フィリオともタイヤ使いの上手さには定評があることから、SL
Oのタイヤスイッチには早くも関係者から期待の声が上がっている。
またSLOは合わせて3rdシーズンから、チームのリザーブドライバーにブラジル期
待の若手アントニオ・セラを起用することも公表した。セラは今最も将来を期待されて
いる若手ドライバーの一人で、昨季イギリスF3において20戦12勝という最多勝
録を樹立。チャンピオンに輝くと同時にマカオF3も制した逸材だ。
SLOは先ごろNeXXチームの体制変更と共にIMSAへの参戦を発表、更に5年以
内のル・マン24時間への挑戦もぶち上げており、チームはNeXXのみならずグロー
バルにレースシーンへの展開を図っている。今季はラ・ポルタがNeXX初勝利もあげ
た。来季は新体制で躍進を狙う。


◇カナダの航空機メーカーロンバルディア
    新フォーマットに合わせ4thからエンジンメーカーとしてNeXX参戦!!

4thシーズンからエンジンを含めた動力機構を、水素ターボエンジンと回生機構を組
み合わせた『パワーユニット』と呼ばれるコンポーネントへと移行するNeXX。その
NeXXを統括するFNOはそれに合わせて、現在6社としている参戦メーカー枠の上
限を撤廃するが、このほどカナダの航空機製造を中心とする重工業企業ロンバルディア
が、エンジンサプライヤーとしてNeXXに参戦することがわかった。
NeXXのエンジンは4thシーズンから最大排気量上限2.4L、6気筒以下(形式
は問わず)のターボエンジンとなり、それにエネルギー回生機構を組み合わせたパワー
ユニットとなるが、この「水素エンジン+回生機構+電気モーター」という水素ハイブ
リッドのフォーマットは自動車メーカーだけでなく、世界のモビリティ企業から大きな
注目を集めており、4thシーズンからはいくつかの新規参戦メーカーが現れることが
予想されていたが、参戦メーカーに関する確度の高い情報として取り上げられたのはロ
ンバルディアが初めてだ。
ロンバルディアはカナダ、ケベック州モントリオールに本拠地をおく、重工業を主とし
コングロマリット企業。現在は主に航空機や鉄道車輛を製造している。自動車専門メ
ーカーではないが、総合的モビリティ企業としては鉄道部門で世界最大の生産設備を保
有し、民間航空機部門では世界第4位を誇るグローバル企業だ。またスノーモービル
ついては車輛製造のほか運航制御システムなどの保安設備に至るまでの製造を手掛けて
いる。エンジンメーカーとしてのNeXX参戦は比較的早い段階から噂があがっており、今回の情報は関係者筋の、それも上層部の人間の話ということで情報の信憑性はかなり高い。
自動車専門メーカーではない企業としては既に来季、カムイと手を組んで参戦を果たす
日本の総合モビリティ企業SUGOの存在があるが、SUGOは自車が開発する『水素
ジェット』への技術転用を目的としてNeXXを開発の場に選んだ。ロンバルディア
世界第4位の航空機メーカーとして『水素ジェット』の自社開発に着手しており、さら
に前述のスノーモービルなどへの技術転用も想定しての参戦と見られる。
こうなってくると気になるのはその供給先だが、なにしろ信憑性の高い情報とはいえま
だ正式発表されていない情報だ。現段階でそれを予測するのは難しい。同郷のチーム、
もしくはドライバーのいるチームという線はなきにしもあらずだが、現在NeXXには
カナダ国籍のチームはなく、カナダ人ドライバーのビル・リヴィエールはドバイ王族の
率いるマルドゥークに籍を置く。今季シェブロンとのパッケージで参戦初年度とは思え
ぬ大活躍をしたマルドゥークが、新参メーカーへと契約をスイッチすることは考えにく
い。マルドゥークチームの監督ファン・ドットがリヴィエールを気に入っており、現状
ではリヴィエールが4thシーズンに移籍するとも考えにくい。またカナダからの新規
参戦の噂もなく、供給先は現在参戦している15チームのいずれかになるだろうが、こ
の時点ではまだ予測がつかない。
このニュースを最初に報じたのはフランスのモータースポーツ専門誌『オト・エブド』
誌、情報の出どころは先述の通りロンバルディア社上層部の人間だと言い、近く正式発
表があるとも記されている。しかしその際に来季パートナーシップを結ぶチームの発表
があるかはわからないとのことだ。
今後様々なメーカーの開発の舞台となりそうなNeXX、今後ロンバルディアに続くメ
ーカーの参戦表明も期待される。

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日本では航空機メーカーというイメージの強いロンバルディアだが、鉄道車輛などの製造でも
世界有数。なかでもスノーモービルでは長年世界的なシェアを誇っている(写真右はスノーモ
―ビルのエンジン部)。


◇ノルディック、来季もタイトル逸ならば4thはチーム大改革か!?

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今季のノルディックの伸び悩みの原因と反省の弁をひたすらに語ったソルベルグだが
その口から具体的な改善策などは出ず。はたしてノルディックは来季もタイトルに絡
むチームとしての立ち位置を守れるのだろうか?

 

2季連続で選手権3位に終わっているノルディックチームは、来季もタイトルを逃すよ
うなことになれば大幅なチーム改革が必要だと考えているようだ。
北欧はスウェーデンに本拠を置くノルディック・モータースポーツ(ファクトリーはド
イツ・ハイデルベルグ)は、1998、99年のF1王者ミコ・ハンクネンと82年の
F1王者チチ・ソルベルグを中心として結成された“純・北欧”のチーム。F1ではデ
ビューレースで2位表彰台を記録したデンマーク人ドライバー、ケリー・ラスムッセン
をエースに据え“オール・ノルド体制”で2シーズンを戦った。昨季はそのラスムッセ
ンが2勝をあげドライバー、チームともに最後までタイトルを争ったが、今季はバトラ
ーとラムダ、そしてピットブルとマーキュリーに大きく水をあけられた。結果過去2シ
ーズンともドライバー、チームともにランキング3位と健闘したが、今季の“2位に大
きく離された3位”という結果に、チーム首脳は危機感を抱いている。
「今季我々はピットブルとマーキュリーの“トップ2”に大きく差をつけられてしまっ
た。それだけではなくマルドゥークやアントネッティと言った新参にも肉薄された。来
季はトライアンフも大きな脅威になる。来季の我々は本当に気が抜けない状態なんだ。」とチームマネージャーのソルベルグは険しい顔で取材に応じた。「今季我々は決して戦闘力が低いわけではなかった。しかしやるべきことをやって勝てるべきレースを勝ったかというと、それはノーだ。ケリー(・ラスムッセン)は結局今季1勝もできなかった。
彼にももっとやれることがあったと思うが、我々チーム側としてもそれは同様だ。ケリ
ーに対して万全のサポートが出来たかと言えばそれは否だ。ミック(・ハイデンフェル
ド)が辛うじて1勝してくれたけどね、でも彼はそれで終わってしまった。今季の我々
は各々がしなければならなかった最大限を各々が為せなかった。結果我々の体制は全て
において万全ではなかったと言わざるを得ない。」と今季を振り返ったソルベルグ
「我々はもちろん初年度からタイトルを獲るつもりで体制づくりをし、結果タイトルに
は届かなかったもののそれに相応しい力を持っていると思えるような成績を残した。し
かし初年度とほぼ同様の体制で臨んだ今季、我々は思いのほかタイトルに近いところに
いなかった事が判った。我々は決して何かを怠ったわけではないと思っているが、今季
の成績は我々にその認識は誤りであるという事実を突きつけている。我々は来季もう一
度現体制でタイトルへのチャレンジを試みるが、その結果次第では大きな改革が必要だ
ろう。」と4thシーズンへ向けてチーム体制を抜本的に改革する可能性も考えている
ことを吐露した。
「正直アントネッティやマルドゥークといった新規参戦チームが、あそこまでやるとは
思っていなかった。そこが我々の甘さといえばそうだったのかも知れないね。新規チー
ムの参戦でNeXXのパワーバランスは、1シーズンにして大きく変わったよ。我々は
今後長期にわたってこのNeXXで、タイトル戦線の中心的存在でありたいと考えてい
る。その為には来季、我々がこのままで良いのかを見極めなくてはならない。我々は4
thシーズンより先を見据えながら、来季は全力で2人のドライバーをサポートする。」
ソルベルグは、いかに危機感を抱いているかをかなりの言葉数をもって語ってくれた。
しかし彼の口からは何を問題点として把握し、どう解決してゆくかの具体的なビジョン
が語られることはなかった。果たして彼らは、どこまで問題の本質と打開策を見いだせ
ているのだろうか? 一部のメディアは、彼らは自分たちがどこまでやれるのか判らな
い状態で参戦し、初期戦力で当初の想定を超える活躍をしてしまい、自らの戦力を見誤
ったのだとの見方をしている。ここまでのソルベルグの話を聞く限りでは、それもあな
がち間違いではないのではないかという気もしてしまう。
4thシーズンからはデンマークGPがカレンダーに加わる可能性が高い現状、北欧を
本拠とするノルディックのNeXXにおける存在価値は決して小さくない。しかしそん
な北欧でのNeXXに対する盛り上がりとは裏腹に、やや迷走を始めたのではないかと
も思えてしまうノルディックチームの内情。一部では4thシーズンからエンジンメー
カーをチェンジするとか、ラスムッセンの後釜にスウェーデン人のF1パイロット、ト
ニー・ペーダーセンを招聘するのではないかなど、様々な噂がささやかれるようになっ
たが、果たしてソルベルグの考える“抜本的なチーム改革”とはどういったものか?
ともあれ来季はドライバーやマシンコンポーネンツ含め現体制で臨むノルディック、彼
らがは来季、4thシーズン以降を見据えながらどう戦ってゆくのか、注目していきた
い。

 

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■Hot Stove League

□ピットブル・エクストリーム・レーシング
 ◎No.1:ニコ・ラムダ(AUT) 
 ◎No.2:ミシェル・ボナパルト(FRA)

□マーキュリー・レーシング・オーガナイゼーション
 ◎No.1:アレックス・バトラー(IRL)
 △No.2:アレンザンダー・カブロン(THA)??
 ×     ジョルディ・ヴァッセル(ENG)??
 ×     アリエル・ティルクム(ENG)??

エヴァー・グラハム・レーシング 
 ◎No.1:カーティス・マルケーナス(AUS)
 ◎No.2:ジェストン・バロン(UK)

トライアンフ・スクエアジャパン・レーシング
 ◎No.1:日向 俊郎(JPN)
 ◎No.2:ルドルフ・マイネ(GER)

アブラモビッチスタンフォード・レーシング
 ◎No.1:ジョンブル・チャップマン(UK)
 ◎No.2:アレン・バーンズ(ASU)

プルトン・オートスポーツ
 ◎No.1:トゥーリ・ヴィックス(EST)
 ◎No.2:メロディ・パトリシア・ノーマン(USA)

□スクーデリア・リナルディ
 ◎No.1:ミケーネ・ポルボローネ(ITA)
 ◎No.2:スティラノ・シエナ(ITA)

□クラークソン&メイ・ハモンド・レーシング
 ◎No.1:デイヴィス・ファング(UK)   
 ◎No.2:ジョリー・セプター(SAF)     

□ロムニ・ダキアオートスポーツ(シュトロゼック)
 ◎No.1:ゾルタン・ゲラ(HUN)
 ◎No.2:バッドアス・バーガー(AUT)

ドラゴンフォース・チャイナレーシング
 ◎No.1:宋 昇龍
 ◎No.2:アレオ・ファーシマス(LUX)

□ノルディック・モータースポーツ
 ◎No.1:ケリー・ラスムッセン(DEN)
 ◎No.2:ミック・ハイデンフェルド(GER)

□サントス・ロコ・オリベイラ・レーシング
 ◎No.1:アイウトン・フィリップス・ラ・ポルタ(POR)
 ◎No.2:アンドレアス・サントス・フィリオ(BRA)

アントネッティオートスポーツ
 ◎No.1:アレンザンダー・ロッソ(USA)
 ◎No.2:ファン・カレッジ(FRA)

□マルドゥーク・レーシング・ドバイ
 ◎No.1:ビル・リヴィエール(CAN)
 ◎No.2:ジャッキー・グーデリアン(USA)

□ガジャック・ルルーシュ・スポール
 ◎No.1:セドリック・タンデイ(FRA)
  ◎No.2:ティモシー・ルーツェン(BEL)

         

◇有力チームから引っ張りダコのゲラ、結局来季はSSRD残留へ

マーキュリーやドラゴンフォース、そしてマルドゥークなど様々なチームが獲得を狙
っていたシュトロゼックのハンガリー人ドライバー、ゾルタン・ゲラの去就がどうや
ら来季もシュトロゼック残留で落ち着きそうだ。チーム関係者筋への取材で判明した。
レース界では珍しい国籍のドライバーが多いNeXXだが、ハンガリー国籍のゲラも
その部類に入る。またゲラのNeXX以前のレースキャリアも決して華やかなもので
はなく、ここにステップアップするまではほぼ無名の存在だった。しかしNeXXデ
ビューでその才能が開花。チーム体制が盤石とはいえない中昨季は1勝をあげ、今季
も同僚のファーシマスが僅か1ポイントと低迷する中59ポイントを獲得しランキン
グは11位。遅咲きのハンガリー人は一躍NeXX各チームの注目の的として移籍市
場の主役になった。
中でも積極的に獲得に動いていたのはマーキュリー、ドラゴンフォース、アントネッ
ティ、そしてマルドゥークの4チーム。ほかいくつかのチームも獲得候補としてリス
とアップしていたと言われるほど“ゲラ人気”は高い。しかしアントネッティは同じ
く移籍市場の注目株だったカレッジと早々に移籍で合意。来季22歳とゲラよりも将
来性のあるカレッジを選択し、No.1のロッソの残留も決定。アントネッティのゲ
ラ獲得の目はなくなった。マルドゥークはグーデリアンの正式な残留発表がまだだが、
ダムハン殿下が直々に獲得を望んだと言われるグーデリアンは残留が濃厚。またマー
キュリーはギリギリまで残留交渉をしていたマルケーナスの引き留めに失敗しゲラ獲
得に本腰を入れるタイミングを逸した。そしてドラゴンフォースに関しては、ゲラ自
身がオファーを断ったと言われている。この4チームの中でも最近では最も熱心にオ
ファーをしていたマルドゥーク、監督のファン・ドットがゲラ獲得をチームに強く望
んでいたそうだが、今季の戦績を鑑み現状維持へと方向転換したと伝えられている。
マルドゥークの方向転換で積極的にゲラ獲得を狙うチームがなくなったことで残留は
確実になったというのが大方の見方だ。
また、シュトロゼックの総帥ハイネル氏がゲラを高く評価しているのはご存じの通り。
シュトロゼック側はゲラの実績と、彼が初年度からチームに籍を置いていてチームと
の密な関係を構築できている点を重要視しており、来季の契約に対しかなりの金額を
提示したと言われている。シュトロゼックには選手権制覇という最終目標があり、そ
れに向けての足掛かりとしてロムニ・ダキアを買収したが、来季は今季同様ピジョン
エンジンで戦うここが決定。しかしこの2シーズンでピジョンの戦闘力は思いのほか
向上せず苦戦が続いており、来季もゲラが残留することに疑問を投げかける声も。キ
ャリアとして遅咲きのゲラは来季31歳で、これからピークを迎えようという年齢で
将来性の不確かな下位チームに残留することは、彼にとってベストな選択ではないと
いう声も多くある。
まだ正式発表されていないが、シュトロゼック残留がほぼ確実視されてるゲラ。彼が
来季シュトロゼックでどのような活躍を見せるのか注目したい。
またシュトロゼックはゲラ残留の正式発表の前に、来季の2ndドライバーが正式に
決定。今季限りでチームを離れるファーシマスに替わり、F1出走経験もある若手オ
ーストリア人ドライバー、バッドアス・バーガーを獲得したことを発表した。バーガ
ーは今年22歳で、F1で18戦走り入賞2回。昨季は下位チーム、アロ○ズで度々
上位に進出し、F1界でも将来を期待されていた若者だ。バーガーはF1進出以前か
らDMWとの縁が深く“DMWの秘蔵っ子”とまで言われており、シュトロゼックが
4thシーズン以降にDMWを搭載する布石なのではないかとの憶測が早くも飛んで
いる。
ゲラの残留にDMW獲得を目論む動き、来季本格始動するシュトロゼックの一挙手一
投足に、これからも目が離せない。

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シーズン開幕前から移籍の噂が絶えなかったゲラ(写真左)だったが、一転残留の可能性が
高くなった。ハイネル氏(写真右)の今後のビジョンにはゲラの存在も織り込み済み。


◇NeXXに女性ドライバー誕生! メロディ・P・ノーマンがプルトン入り!!

かねてよりNeXX加入の噂があり、にわかに注目を集めていたアメリカ出身の女性
ドライバー、メロディ・パトリシア・ノーマンのNeXX参戦が決定した。来季プル
トンチームとの参戦契約を結んだノーマンはこれで、NeXX初の女性ドライバーと
なった。
プルトンは最終戦終了から1週間後の12月中旬にチームのWEBサイトを更新し、
ノーマンと来季単年のレギュラードライバー契約を結んだことを掲載した。
ノーマンは23歳のオーストリアアメリカ人。10歳でカートをはじめ15歳から
の2年間はカナダF4に参戦。学業専念のための3年間の活動中段を挟み21歳から
2年間フォーミュラ・リージョナル・アメリカズに参戦し、今季からインディ・ライ
ツへと活躍の場を移した。今季はそのインディ・ライツで3勝をマークし、来季イン
ディカーへのステップアップが噂されていた。

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ダニカ・パトリックの再来”ノーマンを獲得し、喜びのコメントを掲載したエルナンデス代表。しかし
ダニカのような活躍を求めるのは酷であるとの見方も。一方の”才女”ノーマンは才女らしい知性を覗かせ
るコメントと、対照的な茶目っ気も見せプルトン加入の喜びをアピール。


幼い頃父親に連れられて観戦したインディ500に衝撃を受けてレースを始めたとい
う彼女は、10歳でレーシングカートをはじめ2年後にはIKF世界カート協会グラ
ンドナショナル選手権のHPVクラスでチャンピオンとなるほどの実力をみせ、周囲
を驚かせる。カナダF4でもシリーズチャンピオンとなった彼女は、その後3年間大
学進学と学業専念のためレース活動を中断するが、その後21歳で参戦したフォーミ
ュラ・リージョナル・アメリカズでは2年間走り通算7勝。これまでの実績をひっさ
げ、今季はインディ・ライツへと昇格していた。そんなノーマンに目をつけていたN
eXX参戦チームがプルトンとロムニ・ダキアで、ロムニ・ダキアがシュトロゼック
からの買収を受けて運営方針を大きく方向転換したため、最終的にはプルトンが獲得
した格好となった。いくつかのインディカーチームとの競合を制し、プルトンはアメ
リカ期待の才媛を手に入れた。
プルトンはチームサイトでコニー・エルナンデス代表とノーマンのコメントを掲載し
た。エルナンデス代表は「今回、彼女をチームに迎えられたことを非常に喜ばしく思
います。我々はこれまで共に戦ってきたアレンザンダー・カブロンに分かれを告げな
ければなりませんでした。2年間の彼のチームへの献身に感謝します。そして我々は
来季、トゥーリ・ヴィックスとメロディ・パトリシア・ノーマンというフレッシュな
2人でシーズンに臨みます。ノーマンはここに至るまでの道のりで既に、その溢れん
ばかりの才能と可能性を見せつけています。来季、この“ワンダーウーマン”は我々
と共に大きく飛躍することを確信しています。」と来季への期待を記した。
一方のノーマンは「プルトンチームとレギュラードライバー契約を結ぶことができて
とても興奮しています。私には来季インディカーに昇格するという道もありました。
しかし私はNeXXを選びました。理由はNeXXがインディと同様に、あるいはそ
れ以上にエキサイティングなカテゴリであり、また新しいフォーマットを使ってそれ
を実現しているというカテゴリだからです。私たちはレーシングエンターテインメン
トに携わるものとして、もう地球環境とそれに対する自動車というものの今後の在り
方を無視して生きることはできません。そういう意味でも私は、このカテゴリに参戦
することを大きな意義のあることだと考えます。それに、インディカーという選択も
エキサイティングだとは思ったけれど、NeXXは世界を転戦するんでしょう? 私
にはその方が魅力的だと思ったの。世界の様々な文化に触れてみたい、大好きなレー
スをしながら世界を周れるなんてこんな素敵なことはないわ。だからNeXXを選ん
だの。私にチャンスをくれたプルトンチームとエルナンデス代表に感謝します。」と
のコメントを掲載。レースを続ける傍ら大学で環境学サステナビリティ学を学んだ
彼女は、才女らしさと対照的な茶目っ気のあるコメントでプルトン加入の喜びを記し
た。
プルトンチームは来季、エンジンを日本のSUGO・カムイへとスイッチし、フレッ
シュなラインナップで挑む。ピジョンエンジンで苦戦したこれまでより戦闘力は上が
るとみられているが、男性主体のトップフォーミュラに参戦する女性ドライバーの活
躍は総じて難しいという現実もある。インディカーではしばしば女性ドライバーが参
戦し活躍、2008年にはダニカ・パトリックが第3戦もてぎで優勝し女性ドライバ
ーとしての初優勝を飾っているが、それ以前にもそれ以降にも彼女を上回る活躍を見
せたドライバーはいない。またF1における状況はもっと厳しく、レギュラー参戦し
たドライバーとしては1992年のジョバンナ・アマティまで遡らなくてはならない。
それもアマティは3戦連続予選落ちを喫しそのままチームを解雇されている。F1を
走った女性ドライバーの活躍と言えば、1970年代中期に参戦していたレラ・ロン
バルディが唯一0.5ポイントを獲得しているだけだ。近年では女性ドライバーの増
加を受けて女性だけのフォーミュラレース『Wシリーズ』が発足するなどしているが
男性ドライバーと混走した際の埋められないギャップは如何ともしがたく、ノーマン
に対してダニカ・パトリックのような活躍を求めるのは酷だとの声もある。
果たしてノーマンは来季どのような活躍を見せるのか、新生SUGO・カムイエンジ
ンのパフォーマンスと共にプルトンに大きな注目が集まる。


◇F1でも高評価だった若手2人、バーガーとルーツェンがNeXXデビュー!!

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昨年F1ではチームメートとして戦った二人。バーガー(写真左)はオーストリア、チロル出身。
ルーツェン(写真右)はベルギー出身。共に将来を期待される逸材だ。

 
来季3シーズン目を迎えるNeXXにまた、F1界からの“転入生”が加入した。オ
ーストリア出身のバッドアス・バーガーと、ベルギー出身のティモシー・ルーツェン
だ。バーガーは前出の記事でも触れた通り、シュトロゼック・ロムニダキア(以下シ
ュトロゼック)から、そしてルーツェンはガジャックからの参戦が決定した。
オーストリア出身のバーガーは今年22歳、前出の通り今季はア○ウズから参戦、全
16戦に出走し入賞を2回記録した。下位チームにありながら度々上位に顔を出し速
さをアピール。同郷のヘルムート・マルコリーニやニコ・ラムダといったピットブル
関係者らのプッシュもあり来季NeXXデビューを果たす。一方のルーツェンも今季
は○ロウズからF1に参戦していた。つまりバーガーとルーツェンは今季アロウ○で
チームメイトだったのだ。バーガーは昨年の終盤にF1デビューし2戦を戦ったがフ
ル参戦は今季が初めて、事実上のルーキーイヤーだった。対するルーツェンはバーガ
ーよりも二足先2、シーズン前の途中から○ロウズでF1デビュー。F1キャリア2
年半、来季25歳になる若者だ。ルーツェンは今季4度の入賞をマーク、第3戦サン
マリノGPで2位表彰台に登壇した実力者だ。
バーガーはドイツ国境付近のチロル州ヴェルグル出身。幼少期に自動車競技に興味を
持ち、あるとき友人の勧めで友人が所有するフォード・エスコートを借りて出場した
ピットブルリンクでの人生初レースに優勝し、本格的にレーシングドライバーを志し
たという漫画のような経歴の持ち主だ。その後はドイツF3、ヨーロッパF3と順調
にステップアップ。来季からNeXXに参戦するドイツ系チーム、シュトロゼックへ
の加入を同郷のNeXX関係者に勧められ参戦に至った。
一方ルーツェンはベネルクス・フォーミュラ・フォード1600で18戦15勝と、
圧倒的な強さを見せつけその後F3、F2を経験。順調にF1までステップアップし
ていった逸材だ。ミスの少ない安定した走りで、下位チームアロ○ズにありながら2
シーズン半で7度の入賞、2位表彰台にも上がっている。しかしア○ウズが今季限り
でF1から撤退するため、2人のドライバーはそろってNeXXへと新天地を求めて
やってきたというわけだ。これでシュトロゼックは来季残留が確実と言われるゲラと
バーガーという布陣、対するガジャックもこのほどタンデイの残留が決定し、来季は
タンデイ、ルーツェンのラインナップとなる。
F1でも将来を有望視されたな若手二人の転入、果たしてこのふたりは今後NeXX
を代表するようなドライバーに育っていくのだろうか。来季の活躍に注目だ。

◇”暴れん坊”ファーシマス、新生ドラゴンフォースへの移籍が決定!!

ロムニ・ダキアチームで2シーズン走り“暴れん坊”としてならしたルクセンブルク人、アレオ・ファーシマスのドラゴンフォース移籍が決定した。欧州主要スポーツ新
聞各紙が報じている。
ファーシマスはルクセンブルク出身という、レース界でも稀有な出自の24歳。初年
度からロムニ・ダキアよりNeXXに参戦、4度の入賞を記録し25ポイントを獲得。
第5戦アルゼンチンではフロントロー2番手につけるなど、予選での一発の速さには
定評があった。一方で決勝ではクラッシュが多く、4度のペナルティで3度の出場停
止処分を科されるなどし“暴れん坊”の異名をとった。2ndシーズンはクラッシュ
の多さを見かねたチームに契約条項に罰金規定を盛り込まれ、おかげで走りは“大人
しく”なりはしたもののレースぶりに精彩を欠き獲得ポイントも僅か1ポイントにと
どまった。そしてロムニ・ダキアチームがシュトロゼックに買収されることが決まる
と、シュトロゼックの構想外となったファーシマスは放出が決定。来季のシートが危
ぶまれていた。

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シート喪失危機と騒がれた”暴れん坊”の来季の行く先がついに
決定。”愛されキャラ”ファーシマスはもはやNeXXの名物のひとつだ。


一方ドラゴンフォースと言えば中国人ドライバーの宋昇龍とは契約を更新したものの
初年度から2シーズン実質チームの屋台骨を支えた元F1王者ジョリー・セプターを
放出し、空いた2ndシートに誰が座るのか注目を集めていた。
ドラゴンフォースチームはチーム名変更に伴い、世界的アクション映画スターのジャ
ッキー・チュン氏(無天老師様ではない)を共同オーナーに迎え、李舜英氏との二巨
頭体制で3rdシーズンに臨むが、年明けに予定されている新体制発表会を前にして
来季の陣容が決定した。これまでチームに3勝をもたらしたセプターを放出したドラ
ゴンフォース。セプターを放出したのは高額なサラリーのためと噂され、後釜におさ
まるのはサラリーの安い若手になると見られており、もっとも有力とされていたのが
クラークソンを途中離脱したアリエル・ティルクムだった。しかしオーナーの李氏は
当初からファーシマスの才能を高く評価しており、同じ若手ならNeXXでの実績が
ある方が良いとの理由もありファーシマスを獲得したという。また先述のとおりファ
ーシマスが今季獲得したポイント数はわずか1ポイントで、入賞ドライバーの中では
最下位に終わったが、ロムニ・ダキアチームが今季の契約にクラッシュとペナルティ
に対する罰金規定を盛り込んでおり、李氏はファーシマスが今季振るわなかった原因
はそこにあると見ているようだ。ともあれ、愛すべき“暴れん坊”の姿が来季もNe
XXで見られることになり、ファンや関係者としては一安心といったところだ。
来季は宋、ファーシマスのラインナップとなる“新生”ドラゴンフォース、しかし2
人は共に来季25歳でトップフォーミュラのキャリアもNeXXでの2年間しかない。
フレッシュと言えば聞こえはいいが、経験の浅い若手二人のラインナップには疑問の
声も上がる。ハリウッドスターとの共同オーナー体制になりより一層の飛躍を目指す
ドラゴンフォースだが、チームの方向性を示していけるベテランがいないのは確かに
マイナスポイントだ。宋、ファーシマスの若手コンビは来季、新生ドラゴンフォース
をどれだけ輝かせることが出来るだろうか?


ギリシャ人ドライバーのニニアディス、リナルディのリザーブとしてNeXX復帰!

1stシーズンにリナルディのレギュラードライバーとしてNeXXを戦ったギリシ
ャ人ドライバー、イオリディス・ニニアディスが来季古巣のリナルディのリザーブ
ライバーとしてNeXXへ復帰を果たすことがわかった。
ニニアディスは来季25歳、レース界では珍しいギリシャ国籍のドライバーだ。アテ
ネ生まれの彼は16歳でカートを始め、20歳の頃に単身イタリアに渡りリナルディ
からイタリアF3に参戦。そしてリナルディのNeXX参戦を受け、初年度のレギュ
ラードライバーに抜擢された。ニニアディスはF3時代から数えると4シーズンをリ
ナルディと共にしており、事実上リナルディの育成ドライバーのようなもの。初年度
の契約終了と共に一時チームを離れたが、リナルディは近いうちにニニアディスを呼
び戻すだろうと言われていた。
ニニアディスは3シーズンのF3キャリアにおいて毎シーズンタイトル争いを展開。
初年度の4位に始まり2年目は2位、3年目は3位と活躍した。NeXX参戦時はタ
イトルに絡むことはなかったが、運営規模の小さいチームにあって4度の入賞を記録。
チームメイトだったヴィンチェンツォ・ジョバナルディは6度と入賞回数では下回っ
たものの、7位以上の入賞がなかったジョバナルディに対し6位入賞を2度記録した
ニニアディスはシーズン25ポイントを獲得。シーズン10ポイントだったジョバナ
ルディを上回った。予選ではジョバナルディを下回ることが多かったニニアディスだ
が、それでもシングルグリッドを2度記録。第12戦ルーマニアでニニアディスが獲
得したサードロー5番手は、初年度のリナルディの予選ベストグリッドだった。
リナルディは2ndシーズンを戦うにあたり初年度の“トップフォーミュラ―ルーキ
ー”コンビでは厳しいと判断。大口スポンサーの獲得に成功したこともあり、F1経
験のあるポルボローネシエナという中堅クラスを起用し、ジョバナルディとニニア
ディスの二人とは契約更新しなかった。ジョバナルディはその後F1アル○ァロ○オ
チームに移籍したが、ニニアディスはF2クラスへ格下げしリナルディのオーナー企
業である世界的パスタメーカーの支援も受けて1シーズンを戦った。来季も継続して
F2へ参戦するが、合わせてNeXXリナルディチームとのリザーブ契約を結んだ。
リナルディチームはこれまで、ジャンフランコ・パニーニというイタリア人ドライバ
ー1人をリザーブに起用してきたが、今季は他のほとんどのチーム同様リザーブも2
人態勢でのぞむ。リナルディは4thか5thでのレギュラー起用を視野に入れ、ニ
ニアディスをリザーブ起用していく予定だという。
ニニアディスは今季プ○マ・レーシングからF2に参戦し、タイトル争いには絡めな
かったが2勝をあげランキング5位。16歳でカートを始めた遅咲きのギリシャ人ド
ライバーは堅実な活躍を見せ、クリーンなレースぶりも好評で周囲の評価も上がって
いる。近い将来再びこのNeXXの舞台で、ニニアディスが躍動する姿が見られるだ
ろうか? 今後の活躍に期待したい。

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レース界でも稀有な存在のギリシャ人ドライバー、ニニアディス。
1シーズンのインターバルをおいてリザーブとしてNeXX復帰が決定。

 

 

今季も激戦のうちに幕を閉じたNeXXの2ndシーズン。バトラーのドライバーズ
タイトル連覇、そしてチームタイトルはピットブルが連覇という形で終わったが、こ
のオフの動きは現在のパワーバランスを崩す可能性を秘めている。
ドライバーの移籍が活発化し、エンジンを変更するチームも現れた。また首脳人事含
め組織改革を試みるチームちらほら。これまでの2シーズンはドライバー、チームそ
れぞれ連覇という形で終わっているが、このオフの様子から見ると来季の選手権の様
相はまた変わってくるだろう。今から来季の開幕が待ちきれない!
今季は年末にオフシーズン号をリリースするが、その時には今よりもっと来季の様相
がはっきりとしてくるだろう。次号『オフシーズン号』のリリースをお楽しみに!!

 

 

 

 

Formula Nexxtream 2ndシーズン ドライバー総括

◆Formula Nexxtream
 ドライバー総括


初年度に続き、今季も大激戦が展開されたNeXX世界選手権。
今回はそんなNeXXの2ndシーズンを盛り上げたドライバーのうち
ランキングトップ10に入ったドライバーの総括をしていこう。
また昨季同様に、来季期待のドライバーと今季期待位を裏切ったドライバーも
上げていきたいと思う。今季はそれぞれランキングとは別に3名ずつ取り上げた。
来季既に移籍が決定しているドライバーもおり、3rdシーズンの戦力分布は
また微妙に変わっていく。来季の展望も含めて総括をしていこう。

 

f:id:pontsuka0729:20210926164911p:plainチャンピオン:アレックス・バトラー(マーキュリー)

昨季、開幕前の下馬評を覆してNeXX初代王者に輝いたバトラーだったが、
2シーズン目の今季も王者に輝いたのはバトラーだった。
それも今季は最終戦のレースが終わるまで、王座の行方が全く分からない大激戦。
王座を争った相手は今季もラムダだったが、特に最終戦のバトラーはあの手この手で
行く手を阻もうとする、ピットブルのチーム戦略を全て跳ねのけて
堂々の優勝で王座戴冠を果たした。昨季、王座のかかった最終戦スタート直後の
1コーナーで、ブレーキングミスを犯しあっけなくリタイヤしてしまったバトラー。
しかし今季の『魔術師』はそんな“脆さ”を克服したようにみえた。
中盤戦こそやや停滞があったものの、優勝回数は2位ラムダと同数の4回を数え
表彰台7回を含め実に15度の入賞を記録した。
出走18戦で入賞15回は参戦全ドライバー中トップの数字、さらに17回の完走も
全ドライバー中トップ。第10戦スウェーデンで多重クラッシュに巻き込まれた以外は
他全てのレースで完走を果たすという驚異的な安定感を発揮した。
中盤戦まで予選ではやや苦労したものの、終盤になってPPを3回獲得。
『魔術師』の2年目は“脆さ”を克服し“勝負強さ”を発揮したシーズンだった。
ラムダに対して9ポイントのビハインドで迎えた最終戦。予選でラムダを上回り
PPを獲得、決勝では序盤でタイヤパンクのトラブルに見舞われながら優勝し
ファステストラップのおまけつき。完全優勝で2度目の戴冠を果たしたバトラーには
逞しさを超えた神々しさすら漂った。
3連覇のかかる来季、ラムダをはじめとする他チーム・ドライバーからのマークは
更にキツくなるだろう。またドライバー王座は連覇したものの
チームタイトルは今季も逃してしまった。2ndドライバーの変わる来季からは
チームリーダーとしての役割も期待される。
マーキュリーが“最強チーム”となるためには、バトラーのさらなる成長が
重要となる。

 

f:id:pontsuka0729:20210926164934p:plainランキング2位:ニコ・ラムダ(ピットブル)

F1で3度王座を獲得したラムダだったが、NeXXでの王座戴冠の難しさは
少々彼の想定を超えていたかもしれない。
昨季は王者バトラーを上回る優勝回数を記録しながら、多発したマシントラブルにより
多くのポイントを失った。そしてそのパターンは今季も変わらなかった。
序盤戦ピットブルのマシンには、深刻なギアボックストラブルが発生した。
ヨーロッパラウンド直前の第5戦まででなんと4度のリタイヤを記録、うち3度が
そのギアボックスに起因するトラブルでのリタイヤだった。
完走した第2戦インドネシアは優勝、そして第3戦ドバイからは3戦連続で
PPを獲得しており、この序盤のリタイアさえなければ王座はラムダのものだったかも
知れない。今季の彼は昨季に続きシーズン4勝をマーク、PPも5度獲得しており
表彰台9回はバトラーを上回り参戦全ドライバー中トップの数字。
純粋な速さではバトラーを上回っていたと言っても過言ではないだろう。
9ポイントリードで最終戦を迎えながら、王座をバトラーに奪われたのは
いささか気の毒な気もしてしまう。
来季36歳を迎えるラムダ、彼自身が「自分にはあまり時間がない」と語る通り
キャリアの終焉が刻一刻と近づいている。ラムダは、タイトルを狙えるのは
自身がまだ戦える力を残している来季が最後のチャンスだと考えているだろう。
来季のラムダのパートナーは、今季終盤を共に戦ったボナパルトだ。
ボナパルトは最終戦で全力でラムダをサポートし、彼自身の持つポテンシャルも
存分に見せつけた。最強のパートナーであると同時に、最大のライバルにもなり得る。
来季ラムダはバトラーの他に、チームメイトとも戦わなければならないかも知れない。
しかし、マシンさえ壊れなければ王座を獲れる速さを未だ持ち合わせていることは
この2シーズンで既に証明済みだ。来季は開幕までに問題を洗い出し
万全の状態で初戴冠に挑みたい。

 

f:id:pontsuka0729:20210926164959p:plainランキング3位:ケリー・ラスムッセン(ノルディック)

初年度の昨季、我々に大きな驚きをもたらしたのがラスムッセンの躍進だった。
F1において初レースで2位表彰台というセンセーショナルなデビューを飾りながら
その後は尻すぼみで単なる“中堅ドライバー”に落ち着いてしまった彼が
NeXXでは2勝をあげ最終戦までタイトル争いに絡んだのだ。 
しかし今季のラスムッセンは精彩を欠いた。ランキングが昨季と変わらなかった分
よりその印象を強くさせた。今季は決勝に進んだ16戦中14完走、入賞11回を記録
安定して入賞を重ねていたことが判る。しかし結局はシーズン通して未勝利に終わり
表彰台も3度にとどまった。また2度の予選落ちを喫し、第8戦イタリアは
クラッシュ起因の棄権だったが、第17戦での予選落ちはモチベーションの低下を
心配されたほどだった。
今季はノックアウト方式の予選に手こずった感もある。それでも第13戦
アゼルバイジャンではPPを獲得したが、タイヤ交換でチームが用意するセットを
間違えるというありえないミスで優勝のチャンスを逃す。
今季はもっと躍進するだろうと見られていたノルディックチーム共々
期待外れに終わってしまった印象は強い。
そういった意味ではラスムッセンが精彩を欠いた原因はチームにもありそうだ。
シーズン途中のインタビューでは「どこかチグハグで、うまくいっていない。」と
彼自身語ったように、チームとの細かい連携不和があった。
新規参戦チームの躍進にも大きく影響を受けているだろう。
来季はチーム共々真価が問われるシーズンとなる。初年度のタイトル争いが
フロックだったと言わせないためにも、来季は再び直接タイトル争いに絡みたい。
来季の成績は彼の今後の去就に大きく影響するだろう。

 

f:id:pontsuka0729:20210926165018p:plainランキング4位:日向 俊郎(トライアンフ

『音速のサムライ』日向は今季、大きく躍進を果たした。
昨季の8位を上回りランキング4位、ついにタイトル争いに手が届くところまで来た。
勝利数は今季1勝と昨季を下回ったが、今季は安定感が大きく向上。
18戦中1度だけ予選不通過があったものの、17回決勝に進出し16度完走。
入賞は11回を数え、1勝を含め表彰台にも3度登壇、ポイントでも昨季を上回った。
そもそも一発の速さには定評があり、かつツイスティなテクニカルコースでの速さ、
巧さは誰もが認めるところ。日向に必要だったのは安定して入賞することだった。
昨季はアクシデントでのリタイヤが多かったが、今季はそれがなくなり
多重クラッシュに巻き込まれた第6戦イギリス以外は全戦完走。
勝てないレースでもきっちりとポイントを拾ってゆくレースぶりは
今後本気でタイトルを狙ってゆくという彼の決意の表れのようにも見えた。
昨季、今季ですでに日向は「勝てる」ドライバーであることは証明している。
安定感という面においては今季大きく向上した。あとはマシンの戦闘力だろう。
ピーキーと言われたレラシャシーのマシン特性は、今季大きく改善された。
日向の安定感の向上もそこに要因があるかも。あとはタイトルを狙えるエンジンだ。
来季、カムイはSUGOとタッグを組み、タイトル獲りに本腰を入れてくる。
“日本が本気になる”来季、日向はまずトップ3の牙城を崩したい。

 

f:id:pontsuka0729:20210926165039p:plainランキング5位:アレンザンダー・ロッソ(アントネッティ

今季、新参チーム『アントネッティ』へ移籍したロッソは、
なんと開幕戦でポールトゥウィンを飾ってファンや関係者を驚かせた。
しかしセンセーショナルな開幕戦以降はやや伸び悩んだ感がある。
中盤から終盤にかけてはややリタイヤも目立ち、安定感という意味では課題が残った。
しかし全体としては1勝含み6度の表彰台を記録。入賞9回中表彰台6回と
上位入賞の割合が高かったことが、ランキング5位に彼を押し上げた。
ラスト3戦で連続入賞しうち2戦が表彰台、予選でもシングルグリッドを記録。
昨季も後半戦に調子を上げてきたロッソは、今季も同様に終盤戦で復調した。
来季のロッソの課題は安定感か。今季のリタイヤは6回中4回が接触や単独スピン
というアクシデント絡み。また予選では開幕戦でPPを獲得したように
目の醒める速さを見せる時もあれば、最後尾に沈むことも2回。
ノックアウト方式の予選には各チーム、各ドライバーとも苦労させられたシーズン
だったがロッソも例外ではなかった。
チームのサポート体制は万全だが、来季はカレッジというイキの良い若手が加入。
うかうかしていると立場を逆転される可能性もある。
来季は安定感を身に着け、王座戦線に絡んでいきたい。

 

f:id:pontsuka0729:20210926165058p:plainランキング6位:デイヴィス・ファング(クラークソン)

今季のファングは完全に期待はずれのシーズンを送った。
昨季も直接タイトル争いには絡めなかったが、2勝をあげランキング4位と健闘した。
しかし今季は未勝利に終わり、ランキングも6位と昨季を下回った。
それでも前半戦は好調だったのだ。優勝はなかったものの予選では上位グリッドの
常連で、決勝レースでは2位表彰台に4度登壇した。
第7戦フランスでは最後尾からのスタートで2位に入り、第9戦オランダでは
マシン特性上苦手とされるコースでPPを獲得する等、今季こそはの活躍ぶりだった。
第9戦終了時点ではランキング3位につけていたのだ。
しかし次戦スウェーデン以降は4位が2度あるだけ、9戦で5回のリタイヤを喫し
ポイントも伸び悩んだ。ファングにとってスウェーデンは鬼門か。
クラークソンのマシン特性上の問題もあるが、低速ラウンドに入って調子を落とすのは
もうファングのお約束となってしまった。今季は相当フラストレーションが
溜まったようだった。安定して力を発揮できれば、タイトル戦線に絡んでくることは
間違いないが、そこが課題なのはF1時代から変わっていない。
らしいといえばらしいが、そろそろF1王者経験者らしい姿も見せてほしいところ。
スプレンダーを獲得した来季の活躍に、大きな期待がかかる。

 

f:id:pontsuka0729:20210926165148p:plainランキング7位:ビル・リヴィエール(マルドゥーク)

今季最も大きなサプライズだったのが新規参入チームの活躍だ。
中でもアントネッティとマルドゥークの2チームは、2人の所属ドライバーが
それぞれ1勝ずつをあげたのだ。そんな中でも最も印象的な活躍を見せたのが
このリヴィエールだった。第2戦ではグーデリアン共々予選落ちを経験するが
第4戦ブラジルでは初入賞を3位表彰台で飾る。
その後は第6戦イギリスから第11戦チェコまで6戦連続入賞、第10戦スウェーデン
ではヘビーウェットとなったコンディションをものともせず初優勝を飾った。
年間ポイントはわずかに100の大台に届かなかったものの、
決勝出走17戦で15完走、10度の入賞は初年度としては破格の活躍だ。
走りのスタイルはF1にいた頃からかわらず、アグレッシブにマシンを振り回し
前車を追い回すファイタースタイル。ゆえにタイヤの扱いにやや難もあるが
それを上回るだけのパフォーマンスを見せつけた。
確実性と戦略性が身についてくれば、NeXXでの王座獲得も夢ではない。
来季の成長に大きな期待がかかる、チャンピオン候補のひとりだ。

 

f:id:pontsuka0729:20210926170257p:plainランキング8位:アイウトン・フィリップス・ラ・ポルタ(SLO)

今季ようやく念願のNeXX初優勝を経験したラ・ポルタ。
しかし今季は全体的に苦戦したシーズンと言っていい。新チームの参入でドライバーの
参戦人数も30人に増え、中堅SLOの立ち位置は微妙なポジションに。
入賞も僅か5回に止まった。しかしうち3回表彰台に登壇し初優勝もあげ
結果昨季をわずかに下回る80ポイントでランキングは8位にアップしたのだ。
ドライバーの多くが苦戦したノックアウト方式の予選では、シングルグリッドを8度
記録。入賞したレースでは全てシングルグリッドからスタートしており、
数少ない入賞のチャンスを逃さず結果に繋げたことがリザルトから見て取れる。
また表彰台に上がった3レースはメキシコ、アゼルバイジャンマカオ
難コースばかり。ラ・ポルタの技術、レースマネジメント能力の高さがうかがえる。
今季で引退との噂もあったが、来季もSLOから継続参戦する旨が発表され
ファンや関係者も一安心。明るく人懐っこい性格のラ・ポルタは
パドックの人気者だ。タイヤメーカーがヨコスカに代わる来季は、タイヤ使いの巧い
ラ・ポルタにチャンスだ。来季も表彰台の頂点を目指す。

 

f:id:pontsuka0729:20210926165207p:plainランキング9位:ジョリー・セプター(チャイナドラゴン)

来季の活躍に大きな期待がかかるのは、このセプターも一緒。
栄えある1stイヤーの開幕戦覇者は、来季クラークソンへの移籍が決定したのだ。
今季セプターは2勝をあげたが、表彰台に登ったのはそれだけで入賞は6度のみ。
なんと3度の予選落ちも経験した。
F1王者経験者としては屈辱のシーズンだったろう。
中盤で5戦連続ノーポイントに終わったあたりでは、モチベーションの低下も
囁かれたほどだった。しかし2勝目をあげた第16戦日本では、王者の走りを
見せつけた。1stシーズンでは完走した13レース中12レースで入賞し
驚異の入賞率でランキング5位に食い込んだセプターだが、
今季の結果は本人にとって不本意だろう。
2年間彼が屋台骨を支えたチャイナドラゴンチームは、彼との契約を更新しなかった。
しかし、そのおかげでと言ってはな何だが彼は、もっと期待のできるチームとの
来季契約を掴んだ。来季はファング共々タイトル争いに絡んでゆくことが期待される。
『F1四天王』でラムダに次ぐ戦績をあげているのがこのセプター、
ラムダ一人に活躍の場を独占させておく手はない。

 

f:id:pontsuka0729:20210926165223p:plainランキング10位:アレン・バーンズ(エヴァー・グラハム)

序盤で大きく低迷した昨季とはうって変わり、今季のバーンズは開幕から
3連続入賞、1PPと上々の滑り出しで今季は活躍するかに見えた。
しかしその後第4、5戦と2戦連続の予選落ちを喫し、第7、9戦で3位表彰台に
上がったものの、後半戦には大失速。結局今季の最高位は3位に留まり
バーンズは『F1四天王』において未だ唯一の未勝利者のままだ。
後半戦シングルグリッドを獲得した3戦のうち第15戦カナダでは多重接触
巻きこまれ16位フィニッシュ、第17戦カナダではピット作業のミスで大きく
順位を落として17位フィニッシュなど、ついていないレースも少なからずあったが
それにしても後半戦の失速ぶりは目に余った。
新規参戦チームが調子を上げてきたこともあり、中堅以下のチームにとって
厳しいシーズンとなった今季だが、エヴァー・グラハムも例外ではなかった。
バーンズは結局2シーズン在籍したエヴァー・グラハムでは、1勝も挙げられずに
来季アブラモビッチへと移籍する。アブラモビッチの今季を考えれば
バーンズの来季の状況は簡単ではないが、元F1王者の意地を見せてほしい。

 

☆来季のさらなる活躍に期待!!

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・ランキング7位:ビル・リヴィエール(マルドゥーク)
・ランキング19位:ミシェル・ボナパルト(ピットブル)
・ランキング22位:ファン・カレッジ(アントネッティ

来季の活躍を期待したいのはこの3名だ。リヴィエールは今季1年通して戦い、
新規参戦のマルドゥークにあって初優勝を記録。ポイントも100に迫る勢いで
ランキング7位でシーズンを終えた。
走りに華のあるファイタータイプのリヴィエールは、チームオーナーであるダムハン
殿下のお気に入りだ。開幕からNeXXにアジャストするまで数戦かかったが
その後の順応も早かった。近いうちに直接タイトルを争うような存在になるだろう。
その点で行けば、他の2名も来季ランキング上位に顔を出してくることが予想される。
カレッジは今季、弱小ガジャックにあって2位表彰台を記録。第16戦日本では
PPも獲得した。いずれも舞台はウェットコンディション。真に速いドライバーは
雨で速いという、レース界の通説を地で行くイキの良い若手だ。来季はアントネッティ
という“勝てる”チームへの移籍が決定。期待がかかる。
そして今季第13戦からピットブルのステアリングを握ったボナパルトも有望株だ。
F1での優勝経験もあるボナパルトは6戦で3位表彰台2回を記録。
終戦ではその驚異的なタイヤマネージメント能力をいかしてラムダをサポート。
バトラーを最後まで苦しめた。マイネをリザーブへと追いやった実力は本物だ。
来季悲願の王座獲得を狙うラムダの、最大のライバルになる可能性も指摘されている。

 

★今季期待を裏切った!!

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・ランキング3位:ケリー・ラスムッセン(ノルディック)
・ランキング6位:デイヴィス・ファング(クラークソン)
・ランキング13位:カーティス・マルケーナス(マーキュリー)

逆に今季期待を裏切ったのがこの3人だろう。ラスムッセンに関しては
ランキング3位のドライバーに“期待はずれ”の烙印を押すのもいささか気が引けるが
昨季の戦いぶりを見ればそれも致し方ないだろう。最後までタイトルを争った結果の
昨季の3位と、トップ2に大きく水をあけられての今季の3位では意味が違う。
ラスムッセンには今季、昨季以上にやれるとの期待が欠けられていたのだ。
チームとの連携不和もささやかれているが、来季の戦績如何では移籍もあるか。
ファングも今季、タイトル争いに最後まで絡むだろうと見られていたドライバーだ。
しかし彼は結局今季未勝利に終わり、後半戦に大失速した。
ただしファングに関しては来季、スプレンダーエンジンという大きな“武器”を得る。
ファングは既に来季の巻き返しを誓っているはずだ。
そしてもう一人、ファンや関係者の期待を大きく裏切ったのがマルケーナスだ。
昨季はトップフォーミュラ初参戦で初優勝を飾ったが、今季は表彰台に乗ることすら
かなわなかった。ポイントも昨季の97に対し今季は約半分の54にとどまった。
特に後半戦のレースで精彩を欠き、チームタイトルを狙っていたマーキュリーにとって
大誤算のシーズンとなった。来季はエヴァー・グラハムへ移籍するが、
果たして初年度のような活躍が見られるだろうか。

 

以上、2ndシーズンのドライバー総括でした☆

NEXXTREAM PRESS 「シーズン最終戦号」

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◆シーズン最終戦

 

◇ついに王座決定! 激闘の2ndシーズンを振り返る!!

終戦アメリカGPの終了をもって、マーキュリーのアレックス・バトラーが2季連
続で王者に輝いたNeXX2ndシーズン。今季は第17戦を終えた段階で、ピット
ブルのニコ・ラムダが9ポイントリード。ラムダがバトラーに先着さえすれば初のタ
イトルはラムダのものとなる展開だったが、最終戦で強さを発揮したのは”魔術師”
バトラーだった。
「最終戦でPPを取られたのが痛かった。あれがなければ決勝のレース運びはもう少
し楽になっただろう。しかし彼(バトラー)は予選で最速を記録し、我々が敷いた包
囲網もくぐり抜け、しかもファステストラップまでも記録した。あのアイルランド
は最後の最後で完璧なレースをやってのけた、悔しいが脱帽だね。」とレース後、2
年連続でタイトルに届かなかったラムダはバトラーの戦いをたたえた。
一方レース後のバトラーは憔悴しきった表情で、しかし弱々しくも笑みを浮かべつつ
「キツかった。NeXXで走った中でもいちばんキツかった・・・。」とこぼした。
「序盤のパンクチャですべてのプランが狂ってしまった。予定よりもずっと早い段階
でタイヤ交換を強いられ、プッシュしつつもタイヤをケアしなければならないという
難しい状況に追い込まれた。最後のスティントをソフトで行くかどうかは賭けだった
んだ。ボナパルトが僕を抑えにくるのは承知の上だった。手こずったよ、抜けないと
思っていた。ボナパルトは僕以上にタイヤを労わりながら僕を抑え込んでいたんだね、
終盤に僕が彼を追い抜いた時彼は2回目のストップを済ませていなかった。驚異的だ
よ、もうダメかと思った。」とバトラーは語り、ピットブル勢との戦いは最後まで激
しいものだったと打ち明けた。

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終戦で逆転王座を射止めたバトラー。その表情からは
ピットブル勢との攻防が激戦だったことが読み取れる

ラムダの9ポイントリードで迎えた最終戦の舞台ロングビーチ、昨季とは違い相手有
利で最後の戦いに挑んだバトラー、しかしバトラーは予選でPPを獲得。これでPP
ポイント3を追加し、ラムダとの差を6ポイントに縮めて決勝に臨んだ。一方予選2
番手のラムダは、PPは奪われたものの何位であろうがバトラーに先着すれは良い。
後ろの3番手にはチームメイトのボナパルトがいる。ピットブルは総力戦でラムダの
初戴冠をアシストする作戦だった。しかしこの”何位であろうがバトラーに先着する”
ということの難しさを、ラムダはじめピットブル陣営は最終戦で思い知らされる。
「ミシェル(・ボナパルト)には感謝している。私の戦いに全面的に協力してくれた。
あのフランス人はタイヤの使い方が驚異的にうまい。ミシェルがバトラーの前に立て
ば彼が盾になる、作戦の趣旨は一貫してそうだった。彼はその通りの役割を完璧にこ
なしてくれたよ。彼は1セット目のソフトタイヤを9ターンもたせたんだ、まったく
信じられんよ。しかし我々はあの”小賢しいアイルランド人”に敗れたんだ。大した
”魔術師”だよ。」
「今季は序盤戦が全てだった。ギアボックスに問題を抱えていた私たちのクルマは、
信頼性が驚くほど低かった。3戦連続で同じトラブルでのリタイヤはバカげていた。
正直今季はタイトルに絡めないと思っていたよ。でもバトラーも完璧じゃなかった。
彼は一度調子を落とすと立て直すのに時間がかかるタイプのようだ。ギアボックスの
問題が解決してからは、彼とのギャップはどんどんと埋まっていったよ。しかし彼を
倒すのは一筋縄ではいかないな。彼は脆さの半面土壇場で驚異的な強さを見せる時が
ある。そういう、ある意味理屈では語れないものを持つ人間を相手にするのは、本当
につかれる。私は理屈で説明できないことが大嫌いなんだ(笑)。私は来季36歳に
なる、もうあまり時間もない。F1では3度王座を獲ったがここ(NeXX)ではそ
んな実績も関係ない。私は来季王座を獲るために全力で戦う。」と早くも来季の王座
奪還を、珍しく熱い口調で心に誓った。

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一方のラムダは王手をかけての最終戦だっただけに
悔しさをにじませた。来季は万全の体制での雪辱を誓う。


一方でラムダをアシストしたボナパルトにも思惑はある。「このチームはニコのチー
ムだ。F1での比類なき実績を携えてNo.1に迎えられ、2年連続でタイトル争い
をしている。来年僕はもう1年ニコのチームメイトとして戦える。学ぶべきところは
たくさんあるよ。もちろん近い将来僕がタイトルを獲るためにね。今季は6戦走った
けど手ごたえは得ている、予選で苦戦した箇所もあるが大きな問題じゃない。来季は
ニコから多くのものを学ぶ期間だと思っている。その上でまたチームがタイトルを獲
れたらいいね。」と穏やかな笑みで、不敵なビジョンを語った。

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今季終盤にNeXXデビューしたボナパルトの口からは、早くも
タイトルを狙う旨の発言が飛び出した。この6戦、特に最終戦
で見せた走りを見れば、”その”瞬間も遠くはないかもしれない。

今季のチャンピオンシップは序盤からバトラーが快進撃を見せた。新参チーム、アン
トネッティのロッソが優勝した開幕戦で5位入賞をはたすと、以降も5戦連続入賞。
第4、6戦で優勝し開幕戦から6戦で2勝、他2度の表彰台含み6戦連続入賞で、こ
の時点でランキング2位だったロッソに39ポイント差をつけバトラーはトップを独
走。第2戦で優勝しながらも6戦で4度のリタイヤを喫したラムダには、実に45ポ
イントの差をつけていた。それでもラムダがこの時点でランキング3位につけていた
のは、第6戦の2位表彰台と第3戦からの3戦連続PPのおかげだった。序盤ギアボ
ックスのトラブルに泣かされていたラムダは、決勝を走り切れないならせめて取れる
ポイントは獲って帰ろうと、予選に戦略の比重を置きチームの問題解決を待った。
そしてギアボックスの問題がクリアになってからはラムダが本来の強さを発揮する。
舞台は第6戦からヨーロッパに移っていたが第7戦から第12戦、ヨーロッパラウン
ドは事実上ラムダが征服した。第7、9戦と2勝をあげPPも2度獲得、一方第7戦
でリズムの狂ったバトラーは第12戦で3勝目をあげるも、この期間での表彰台はこ
れ1度きり。入賞も3度にとどまり、ランキングは第9戦でラムダに逆転を許す。第
12戦終了時点ではラムダ144ポイントに対しバトラーは136ポイント、一時期
バトラーに45ポイント差をつけられていたラムダの8ポイントリードに変わってい
た。
しかし選手権は全18戦の長丁場、このままの流れでいかないのがチャンピオンシッ
プだ。バトラーは第12戦の優勝で不調から脱しつつあった。対するラムダは第13
戦からややリズムを崩す。風の強いことで知られるアゼルバイジャンでピットブルの
マシンが大苦戦。このレースがNeXXデビュー戦となったボナパルト共々予選で下
位に沈み、ノーポイントでレースを終えてしまう。しかも今季は、いや今季もという
べきか、初勝利を記録した面々含め系10人のウィナーが誕生したNeXX、第13
戦からはラ・ポルタ、リンドホルム、グーデリアンという伏兵が次々と表彰台の頂点
に立ち、チャンピオンシップをかき回す。これにやや翻弄されたラムダ、そしてバト
ラーだったが、バトラーは終盤にきて予選で速さを見せ第14、15戦で連続PPを
獲得。市街地コースの予選で苦しんでいたピットブル勢を横目にポイントを伸ばし、
第16戦終了時点でなんとラムダを1ポイント上回り再びトップに返り咲くのだ。
ここで終わらないのが3度のF1王者ラムダ。第17戦ではラムダが底力を発揮し、
3番手スタートからの独走劇で優勝。ランキングでバトラーを9ポイント上回り、状
況としては逆王手の状態で最終戦へ。これで誰もが今季はラムダがタイトルを獲ると
思った。しかし、なんと最終戦の予選で劣勢のバトラーは、ラムダのタイムをわずか
に上回り今季3度目のPPを獲得するのだ。少しでもビハインドを縮めて決勝に臨み
たい、バトラーのタイトルへの強い執念が土壇場での3ポイントを引き寄せた。これ
でラムダとバトラーのポイント差は6。最終戦の決勝はPPのバトラーがラムダ、ボ
ナパルトの2台を従えてのスタートとなった。
終戦の決勝は波乱の展開。トップでスタートしたバトラーは序盤でタイヤがパンク
するトラブルに見舞われ、予定外のピットストップを強いられる。何位であろうがラ
ムダの後ろでフィニッシュすれば、その時点でラムダの王座が決まる。タイヤ交換で
トップを明け渡したバトラーは、束の間ピットブル勢に1-2走行をゆるす。マーキ
ュリー陣営はあせりの色を濃くする。しかしレースは地元アメリカのカジワラがエン
ジンブローでリタイヤし、セーフティカーが出動。このタイミングで最初のタイヤ交
換を行ったラムダが5番手にさがると、バトラーはトップに立ったボナパルトを驚異
的なラップタイムで追撃。8ターン目にボナパルトをかわしてトップに返り咲く。
タイヤ戦略の狂ったバトラーは2セット目のハードタイヤを限界まで引っ張り2度目
のピットイン。その間にピットブルはまたも1-2体制をとなるが、そんなバトラー
に報いるべくマーキュリーのピットクルーは2度目のタイヤ交換を快心のピット作業
で決め、バトラーをコースへ送り出す。ピットブルとしては3台のすぐうしろを走る
クラークソンのファングを間に挟みたかったが、バトラーはファングの前で復帰。こ
こからNeXX史上に残る王座をかけた激闘が展開される。
トップのラムダ、2番手のボナパルトはとにかく逃げる。そしてバトラーから2ター
ン遅れの19ターン目にラムダが2度目のピットイン、3番手でコース復帰する。こ
こで一時的にトップに立ったボナパルトが、バトラーの前に立ち塞がった。しかしバ
トラーが十分に熱の入ったソフトタイヤなのに対し、一方のボナパルトはガケを迎え
たハードタイヤ。明らかにペースの違う2台だが、ボナパルトは懸命に抑え込みラム
ダが追いついてくるのを待つ。しかしレースも残り5ターンというところでボナパル
トのタイヤはついに限界を迎えた、ボナパルトはラムダの接近を待たずしてバトラー
にトップを明け渡す。
前が空いてからのバトラーは速かった。ラムダも懸命に追撃をかけたが差は詰まらず。
結果2ndシーズンのタイトルはバトラーが最終戦優勝で手中に収めた。そしてドラ
イバーズ選手権で敗れはしたピットブルだが、2-3フィニッシュでこちらも堂々の
チームタイトル連覇を達成。激闘の2ndシーズンは今季もアメリカでその幕を閉じ
た。

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新たに3チームが加わり、計30台のエントリーとなった2ndシーズン。ノックア
ウト方式に変更された予選は、26台の決勝進出枠をめぐり熾烈な戦いが展開された。
先述の通り決勝では18戦で10人のGPウィナーが誕生し、うち6名が初勝利とい
う群雄割拠のシーズンだった。しかし、終わってみれば昨季以上にラムダvsバトラ
ーの対決図式が鮮明になったシーズンでもあった。昨季ラムダと同ポイントでランキ
ング3位に食い込んだノルディックのラスムッセンは、今季も3位だったもののシー
ズン通して未勝利におわり、ポイントでも大きく水をあけられた。
クラークソンのファングにしても、前半戦の絶好調がウソのように後半は鳴りを潜め
てしまった。しかし代わりにアントネッティやマルドゥークといった新規参戦チーム
が活躍。そして日本期待の日向俊郎がランキング4位に食い込んだ。NeXX参戦各
チームの戦力バランスが浮き彫りになってきた一方で、来季もまた今季同様の混戦模
様となることを予見させる要素がたくさんあった。
チーム力ではやはりピットブルとマーキュリーが2強、しかしそれに続くノルディッ
クやクラークソン、新参のアントネッティとマルドゥークもポテンシャルの高さを見
せつけた。また日向がランキング4位につけたトライアンフには来季、ピットブルで
ラムダの初代パートナーを務めたルドルフ・マイネが移籍する。来季も今季に劣らず
群雄割拠のチャンピオンシップになること間違いなしだ。2年連続、最終戦でドラマ
チックに王座が決定したNeXX、来季はバトラーが3連覇するのか、ラムダが悲願
の初戴冠を果たすのか、それとも・・・。2ndシーズンは終わったばかりだが、来
季への期待は高まるばかりだ。


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■レースリポート

◇第17戦 カナダGP エキシビジョンプレイス市街地サーキット

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PP:ゾルタン・ゲラ(ロムニ・ダキア

ロムニ・ダキアのゲラが初PPを獲得したカナダGPだが、注目はタイトル戦線のゆ
くえ。ポイントランキングは前戦日本でバトラーがラムダを、わずか1ポイント上回
りトップに返り咲いた。しかしこのレースラムダが3番手がスタートに対し、バトラ
ーは予選で11番手に沈む。レースはスタートでフロントローのゲラ、リヴィエール
の2台がモタついた隙を突きラムダがトップを奪ってからはラムダの独壇場。
序盤でセーフティカー出動が1度あったものの、それ以降はノーアクシデントで進み
最終的にはラムダが独走で優勝。今季4勝目をあげた。11番手スタートのバトラー
はそれでも猛烈な追い上げを見せたが2位ロッソにも届かず、辛うじて3位表彰台に
滑り込んだ。タイトル争い大詰めで勝負強さを見せたラムダ、これでポイントランキ
ングは再びラムダの9点リードに変わる。タイトル争いは今季も大接戦で最終戦まで
もつれ込んだ。

優勝:ニコ・ラムダ(ピットブル)
2位:アレンザンダー・ロッソ(アントネッティ
3位:アレックス・バトラー(マーキュリー)


◇第18戦 アメリカGP ロングビーチ市街地サーキット

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PP:アレックス・バトラー(マーキュリー)

ラムダの9ポイントリードで迎えた最終戦。バトラーの逆転王座は難しい状況で迎え
たが、しかしバトラーは予選でPPを獲得。土壇場でポイント差を3詰めて決勝、ラ
ムダとの対決に臨んだ。レースはPPのバトラーがピットブル2台を従える形で進む
が、序盤でバトラーにパンクチャのトラブルが発生。バトラーは予定より早いタイヤ
交換を強いられる。一方のピットブルはボナパルト含め総力戦でラムダをアシスト。
ボナパルトは自身のタイヤ交換のタイミングを大きく遅らせ、バトラーの行く手を阻
む。しかしバトラーは自身の驚異的なタイヤマネジメント、そして2度目のタイヤ交
換での会心のピット作業もあり、終盤にはトップでレースを進める。一方、終盤新品
ソフトタイヤでの追撃を図ったラムダは、最終的にECUトラブルでパワーダウン。
結果ポイントでの劣勢、序盤のトラブルを跳ね返したバトラーがPP、FLまで獲得
して完全優勝。大逆転でタイトル連覇を決めた。チームタイトルは2-3フィニッシ
ュを決めたピットブルのものとなり、こちらも連覇となった。

優勝:アレックス・バトラー(マーキュリー)
2位:ニコ・ラムダ(ピットブル)
3位:ミシェル・ボナパルト(ピットブル)


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■NeXX Topix

◇ヨコスカ、来季用のハードタイヤのさらなる改良を検討?
                  ロングビーチでユーザーミーティングを開催

トライアンフやクラークソンなど6チームにタイヤを供給するヨコスカが、来季用の
ハードタイヤの改良についてユーザーと意見交換を行うため、最終戦の舞台ロングビ
ーチのパドックでミーティングを行った。
ヨコスカ勢は今季前半戦、ノックアウト方式の予選で大苦戦していたが、ユーザーの
求めもありハードタイヤのスプリント性能を向上させるために大幅な改良を実施。第
13戦アゼルバイジャンフリー走行から”改良ハードタイヤ”を投入していた。こ
の新ハードタイヤの投入後はヨコスカ勢の戦績は目に見えて改善され、日向やセプタ
ーといったそれまで下位に沈むことが多かった実力者たちが、軒並み予選で上位に食
い込むようになった。事実決勝でも新タイヤ投入初戦のアゼルバイジャンでは日向が
2位表彰台、プルトンのヴィックスが4位入賞。第16戦日本ではセプターが今季2
勝目をあげている。投入後の4戦で1勝をマークし、最大の懸案事項であった予選も
PPこそないものの日向はアゼルバイジャンフロントローを獲得。セプターは目に
見えてシングルグリッドが多くなり、プルトン勢やアブラモビッチ勢のパフォーマン
スも上がってきた。ヨコスカタイヤの戦闘力はこの新タイヤ投入で、スプリント性能
含め大きく改善されたといっていい。
来季に向けても好感触を得たヨコスカだが、さらなる性能向上を目指した開発体制も
準備しており、今回のミーティングではまたさらなる新タイヤを導入するか否か、チ
ームの意向を確認したようだ。ヨコスカの玉島裕久開発チーフは「新タイヤについて
ホッケンハイムのテストでも、アゼルバイジャンでも非常に好感触を得ていました。
各チームからも非常にいいフィードバックをもらえましたしね、よかったです。レー
スディスタンスに関してもトータルのライフの落ちは想定したほどではありませんで
したし、いわゆる”ガケ”に関しても各チーム許容範囲と考えているようですね。」
と話し、ひとまず改良新タイヤ投入は成功との見解を示した。一方で「決勝レースで
のソフトとの組み合わせで、トータルストラテジーとしてヴァシュロン勢と戦えるか
という点で、各チームがどう考えているのか聞きたかった。」とも語り、「ライフが
短いとはいえやはりヴァシュロンさんのソフトの性能はアドバンテージなんですよ。
だから各チームそれに対してどういう考え方でレース戦略を立てるかが、我々にとっ
ても重要でした。もしソフトに対してとか、新ハードに対しても上澄みを期待してい
るようなら考えないと。でもそうなると当然こちらの開発コストも上がるので、その
分も含めてヒアリングをしました。」とのこと。
「レースに対しても反応はとてもポジティブで、うちはレースによってはオールソフ
トでいける場所もあるし、戦略の幅は広い。とにかく予選が戦えるようになったこと
が各チームとも何よりも大きいとのことでした(笑)。」と語り、来季以降もひとま
ず現行タイヤの供給を続けるとした。
1stシーズンは18戦中6勝と健闘したが、今季は新タイヤ投入までは12戦2勝
と苦戦が続いたヨコスカ勢。新たな予選方式にも順応したタイヤで、来季はまたヴァ
シュロンに真っ向勝負を挑む。

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第13戦からヨコスカの持ち込んだ”改良ハードタイヤ”は各チームからも概ね好評だった。開発コスト
と性能の妥協点を見出したヨコスカは来季もこのタイヤを供給する。写真左は開発チーフの玉島氏


◇欧州にストリートレースを! コペンハーゲンが市街地開催に名乗り

5th、いや早ければ4thシーズンのカレンダーに、また新たな公道レースが加わ
るかもしれない。北欧の国デンマークが、首都コペンハーゲンでの市街地レース開催
を計画していると欧州有力各紙が報じた。開催が実現すれば第10戦スウェーデン
とって変わるか、あるいは第11戦チェコとの入れ替えで北欧2連戦となる可能性が
あるという。

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デンマークの首都コペンハーゲンは、スカンジナビア半島ユトランド半島の間にある
シェラン島の東端に位置する。歴史ある美しい町並みは「北欧のパリ」と形容される。

コペンハーゲンでの市街地レースの開催は2017年に計画が持ち上がり、2020
年のF1カレンダー入りを目指して進められていた。しかし、デンマーク人ドライバ
ーのケリー・ラスムッセンがF1からフェードアウトしその後の、当時のコロナウィ
ルスの世界的拡大も影響し開催計画は凍結状態だった。しかしラスムッセンのNeX
X進出、そしてNeXXでの活躍ぶりもあり開催計画が再浮上。今度はF1ではなく
NeXXの招致を目指し本格始動したようだ。
FNOの運営統括部長であるデイトン・ビルは「このデンマークGPの計画はコペン
ハーゲン側からアプローチがあった。しかも計画が持ち込まれた時点で、かなり練り
込まれたものであることがわかった。それもそうだろう、コペンハーゲンはかつてF
1を開催しようとしていたんだからね。F1との話し合いはかなり良いところまで行
っていたと思う。しかしラスムッセンがNeXXに転出し、北欧のチームも参戦して
いるとなれば彼らの興味がこちらに向くのも当然だろうね。現在スウェーデンGPが
我々のカレンダーにあるが、デンマークGP開催の可能性は低くはないよ。」と語り
コペンハーゲンのフランツ・ジェンセン市長をはじめ主催者側とも既に接触してい
ることを明かした。
デーンマークGP開催計画は元デンマーク政府の大臣ヘルグ・ツェンダーとサクソバ
ンクの元オーナー、ルース・シェーア・クリスチャンセンが策定。このふたりとコペ
ンハーゲン市長であるフランツ・ジェンセンが立ち上げた『デンマークGP組織員会』
を中心として計画は進められてきた。
「日本GPが終了した後、私はハーディー(・フラッシュ)とともにコペンハーゲン
に赴き、そこで市長らと話をしたよ。開催計画はかなり具体的なもので、すでにコー
スとして使用する区間の詳細な地図も見た。彼らは本気だったよ。計画はすでに開催
当日のタイムテーブルや、封鎖箇所含めた警備計画、そして重機やマーシャルの配置
まで策定されていたんだ。私は非常にポジティブな印象を受け取った、デンマーク
Pはすぐにでも開催できるとね。」とビル統括部長。
「開幕から2シーズンが経過したNeXXにおいて、デンマークをはじめとする北欧
諸国はすでに切り離すことのできないキーパーツだ。ラスムッセンはタイトル争いを
しているし、ノルディックチームも強豪と言っていい位置づけだからね。現在第10
戦としてスウェーデンGPを開催しているが、そこにデンマークGPが入る可能性は
大いにあるよ。スウェーデンと隔年でもいいし、スウェーデンの前後に加えて連戦に
してもいい。欧州ラウンドには市街地戦がひとつしかないから、実現すればカレンダ
ーとしても面白くなるんじゃないかな?」と語り、実現に向けての動きが積極的なも
のであることを匂わせた。

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FNO運営統括部長のデイトン・ビルは、比較的早い段階での
デンマークGPのカレンダー入りの可能性を示唆した。

実際のところ第10戦近辺は欧州ラウンドと呼ばれる期間に該当し、開催地候補も多
く調整は簡単にはいかないだろう。しかし、ビル統括部長の言葉通り北欧諸国は、既
にNeXXにおいて重要な国々となっている。北欧ゆかりのチーム、北欧出身のドラ
イバーの活躍は興行面にも大きく影響しており、スウェーデンGPは開幕から2年間
でのべ30万人以上の観客を動員しているのだ。1970年代にF1での自国ドライ
バーの死亡事故をうけてGP開催を封印してきたスウェーデンだが、自動車レースの
人気は相変わらず高いのが実情である。また、これもビル統括部長の言葉通り欧州ラ
ウンドに市街地レースが加わることは大きな魅力のひとつだ。今季のカレンダーでい
えば第4戦のブラジル以降は第12戦ルーマニアまで、パーマネントコースでのGP
が7戦続いた。これが4thシーズン以降になればルーマニアはドイツとの隔年開催
の可能性が高く、第13戦はアゼルバイジャンがカレンダーから消えカザフスタン
Pの開催が予定されているため、シーズンによってはまるまる市街地戦のない欧州ラ
ウンドが展開されることになる。そういった意味でもコペンハーゲンでのストリート
レースは、非常に大きな価値を持つ。今後の進展に注視して行こう。


エヴァー・グラハム、来季DMWエンジン搭載を発表!
              4thシーズンからの新パワーユニット時代を見据え

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スプレンダーとの2年間のパートナーシップに終止符を打ったエヴァー・グラハムは
DMWとの契約締結を発表。写真左はエヴァー・グラハムのオーナー兼監督、マーシュ
エヴァー、写真右はDMWの開発責任者タリオ・マイセン。

エヴァー・グラハムチームが、4thシーズンの新エンジンフォーマットの導入を待
たずして来季から、エンジンサプライヤーを変更する旨を発表した。最終戦アメリ
GPのパドックでプレスリリースが出され、金曜のフリー走行前に記者発表が行われ
た。発表によるとエヴァー・グラハムは、来季よりドイツのDMWとエンジン供給契
約を結んだという。会見にはチームオーナー兼監督のもとF1ドライバー、マーシュ
エヴァーとマネージャーのピーター・ウォーニングが姿を見せ、DMWのNeXX
用エンジン開発責任者、タリオ・マイセンの姿もあった。
エヴァー・グラハムはオーストラリア国籍のチームだ。チームはともに元F1ドライ
バーのマーシュ・エヴァーとデヴィッド・グラハムの共同経営で、2人ともオースト
ラリア人。開幕シーズンから2シーズン使用してきたスプレンダーエンジンも、オー
ストラリアのエンジンビルダーだ。エースドライバーにもオーストラリア人のアレン
・バーンズを起用しチームはナショナリズムを強調してきたが、ここに来てマシンの
心臓部であるエンジンを国外メーカーへと変更することになった。
会見に出席した共同オーナー兼監督のマーシュ・エヴァーは「今回、来季からDMW
との供給契約を締結できたことを非常に喜ばしく思う。同時に、これまでの2年間を
共に戦ったスプレンダーには大変感謝している。自国のメーカーとの契約を解消する
のは心苦しい限りではあったが、我々は来季以降をこのドイツの『老舗エンジン屋』
とともに戦うことを決めた。これはポジティブな選択であり、新フォーマットへの変
更を見据えたうえで重要な選択だった。」と語った。
「スプレンダーは現在間違いなくNeXX最強のエンジンだ。ピークパワーとトルク
のバランスがとてもよく、どんなコースでも最大限のパフォーマンスを発揮できてい
る。ただ我々は、そして我々のシャシーはそれを活かしきることが出来なかった。正
直レラシャシーとスプレンダーの組み合わせは我々以外に無いので比較対象がないの
が残念だが、レラシャシーにはスプレンダーエンジンはマッチしない。おそらくアシ
ュトンにしてもそうだろう。スプレンダーは高次元でバランスの取れたエンジンだが
やや大きく少しばかり重心が高い。コーナリングマシンには不向きなエンジンだった
と言える。その点レラシャシーで好成績をあげているのはカムイやDMWといった、
コンパクトでパッケージングユーティリティに優れたエンジンだ。シャシーを変える
かエンジンを変えるか、我々は難しい決断を迫られたが、DMWの新エンジンフォー
マットの方向性に賛同した我々は、レラシャシーにDMWのパッケージで来季以降戦
うことに決めたんだ。」とエンジン変更に至った経緯を説明した。
DMWのタリオ・マイセンは「今回エヴァー・グラハムチームとエンジン供給契約を
締結できたことは、我々にとっても非常にポジティブな出来事だ。我々は新フォーマ
ットに対してチャレンジングな開発体制を整えているし、チームはそれに賛同してく
れた。我々はこれから「運命共同体」になる、と言ったら大げさかな? 供給チーム
は他にもあるわけだからね。しかしどうだい?「グラハム・DMW」という響きには
何か運命めいたものを感じないかい? かつてF1で頂点に立ったパッケージが、こ
のNeXXで復活するんだ。我々だって胸の高鳴りを抑えられないよ。我々はエヴァ
ー・グラハムチームと新たなチャレンジに身を投じてゆくことを、大変嬉しく思って
いる。」と珍しく興奮気味に語った。
現状ほかのDMWユーザーからはエンジン変更の発表がないため、このままいけば来
季はエヴァー・グラハムの他アブラモビッチドラゴンフォース、SLOの計4チー
ムへの供給体制となるDMW。開幕から2シーズンはスプレンダー、アシュトンバー
金の後塵を拝してきただけに、これはマニュファクチャラータイトル獲得のためには
追い風だ。新エンジンフォーマットになる4thシーズンから同タイトルは廃止され
るため、DMWとしては是が非でもタイトルが欲しいところだろう。またエヴァー・
グラハム側としては、最強エンジンを搭載していながら2シーズン未だ未勝利という
ジレンマもあったかもしれない。テクニカルディレクターのフィル・デンハムなどは
スプレンダーが自国チームの自分たちより、タイトルに近いマーキュリー陣営のサポ
ートに比重を置いていると考えていたフシもある。そういったこともあり、今回チー
ムはこのタイミングでのエンジンチェンジに踏み切ったようだ。
タリオ・マイセンが語った通り、ここに1983年にF1ドライバーズ王座に輝いた
『グラハム・DMW』が復活した。しかも4thシーズンに投入予定のエンジンが直
列4気筒ターボとくれば、オールドファンならずともレースファンなら大きな期待を
寄せるところだ。しかし4thシーズンからはデンプシーがシャシーサプライヤー
して参戦、エンジンメーカーの参戦枠上限も撤廃され群雄割拠のシーズンが予想され
る。4thシーズンの覇権争いを見据えるエヴァー・グラハムはまず来季、これまで
の低迷を払しょくし4thシーズンへつながる活躍をしなければならない。来季のエ
ヴァー・グラハム・DMWの活躍に注目だ。

 

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■PADDOCK PRESS


◇シュトロゼック、ロムニ・ダキアの買収完了!
         来季のチーム名は『シュトロゼック・ロムニダキア・AS』!!

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ついにシュトロゼックのロムニ・ダキア買収が完了。これでシュトロゼックはトップ
フォーミュラでのタイトル獲得という野望への足掛かりを確保した。双方ともあくま
でも対等のパートナーシップである旨を強調するがはたして・・・

かねてから進行中だった、シュトロゼックによるロムニ・ダキアチームの買収手続き
がこのほど完了した。ドイツのタブロイド判全国紙ビルトをはじめガゼッタ、レキッ
プ、ムンド・デポルティーボといった各国のスポーツ専門紙が報じている。
1stシーズンより参戦していたルーマニアのプライベートチーム、ロムニ・ダキア
はチーム強化のため今季中盤ごろからシュトロゼック側との買収話を進めていた。昨
季は苦戦しながらも1勝をあげたが今季は低迷、今後のチーム運営体制の強化を目指
しビッグコンストラクターからの買収を受け入れた格好だ。一方のシュトロゼックも
総帥フランツ・ハイネル氏のトップフォーミュラでのタイトル獲得の野望実現のため
今季の早い段階でロムニ・ダキアチームの買収に動いていた。この買収話はシュトロ
ゼック側からロムニ・ダキア側に打診があり、ロムニ・ダキア側が容認するという展
開で進められていた。シーズン後半ごろからはレースウィークにシュトロゼック側が
度々パドックに姿を見せ、時にはロムニ・ダキアのモーターホームで会談に及ぶなど
し、両者の間で調整が進められてきた。
ビルト紙は「このほどシュトロゼックのハイネル代表と最終会談を持ちました。先に
お話しした通り、このビジネスは”パートナーシップ”という形で帰結しました。完
全買収ではありません。我々は来季以降、対等なパートナーとしてNeXXを戦って
ゆくことになります。素晴らしいパートナーを得て我々ロムニ・ダキアチームは幸せ
です。」というロムニ・ダキアのミルセア・トゥドール代表と、「我々シュトロゼッ
クにトップフォーミュラ進出の橋渡しをしてくれたFNOと、そして来季より共に戦
う最高のパートナー、ロムニ・ダキアチームそしてトゥドール代表に感謝します。我
々はともに与え、与えられの提携関係、つまりWin-Winの関係です。来季以降
の大いなる飛躍へ向け共に戦います。」というシュトロゼックのハイネル代表のコメ
ントを掲載した。
あくまでも対等の関係を強調した二人だが、一部情報ではシュトロゼック側がチーム
株式の過半数をすでに取得済みとの噂もあり、チーム運営についてのシュトロゼック
側の発言権はかなり大きくなると見られている。「新チーム名は?」との記者の問い
に二人の代表は声を揃えて「シュトロゼック・ロムニダキア」と答えたとのことだが
両者の名前の配置からもそのことが読み取れる。
ルーマニアの実業家が立ち上げたチームはル〇ーにゆかりの深いF1関係者で首脳陣
を組織したが、にわか作りの混成部隊の感は否めずここまで苦戦。ビッグチームのノ
ウハウを取り入れるべくシュトロゼックとの提携に踏み切ったロムニ・ダキアだが、
一方のシュトロゼック側の腹の中は果たしてそれで満たされるのだろうか。メディア
の見方は”将来的な完全買収を見越しての第一段階”というのが大勢を占めている。
ロムニ・ダキアは自動車レース好きのトゥドール氏が、モーターレースで自国を盛り
上げたいとの熱意から立ち上がったチーム。おかげで初年度から開催されているルー
マニアGPも毎年大盛況を見せている。しかし、シュトロゼックとの提携でそのルー
マニアGPも4thシーズン以降はドイツGPとの隔年開催になる可能性が濃厚だ。
果たしてこの”提携”劇はロムニ・ダキアにとって良薬となり得るのか・・・
トゥドール氏の自国への想いが、チームの体制強化のための犠牲にならないことを願
うばかりだ。


◇クラークソン大幅な組織改革か? チーム首脳含め50人を解雇

1stシーズンから何かと話題を振りまいているクラークソンチームが、大規模な組
織改革を企図し人員の入れ替えを行ったようだ。ザ・サンやデイリーメールといった
イギリスのタブロイド紙などが報じている。
クラークソンは主にファクトリー勤務の約50人のエンジニア達と、チームに帯同す
るメカニック15人との契約を2ndシーズンをもって終了し、旧ル〇ーやレーシン
〇ポイントといったF1チームで働いた経験を持つエンジニアを新たに雇い入れたと
いう。この人員入れ替えを指揮したのが実質来季からチームマネージャーに就任する
スティラノ・ドミニコル。F1では〇ェラーリを率いてきた敏腕として知られ、やや
奔放と言わざるを得ないオーナーのジェレミー・クラークソン氏のチーム運営に対し
チームの行く末を案じた共同オーナーのジェームズ・メイ氏が招聘したと言われてい
る。
クラークソンは最終戦アメリカGP終了直後の12月第2日曜にファクトリー要員達
の契約更改を行い、ドミニコルが必要と判断した以外の面々に今季限りでの契約終了
を告げたと見られる。この一連の動きについてクラークソンチームのリチャード・デ
ヴィッズ監督は、「我々には来季に向けて大きな改革が必要だったんだ、チームがよ
り高いステージに上がるためには血の入れ替えが必要だったのさ。今回の人員整理は
それが目的だよ。」と語った。
「我々の仕事には様々なファクターにおいて精度が求められる。さらなる高みを目指
すために組織の”精度”をあげる必要があったんだよ。今季の成績を見てみるといい、
エースのファングは今季速さはあるものムラがあり、勝ちきれないうちに終わってし
まった。前半の好調が嘘のように後半失速してしまったのは、我々の開発に継続性と
精度が足りなかったからだ。2ndドライバーに関しては我々のサポート不足が大き
く影響したと思う。エンジニアリングの精度然り、チームのリレーション然りだ。そ
の辺を改革していかないと、我々は結局草レースチームの延長で終わっちまう。ジェ
レミー(・クラークソン)はまた厄介ごとをこさえたと悪態をつくだろうけどね、で
も我々だってただただ参加しているワケじゃない。ジェレミーだって勝ちたいはずな
んだ、だってこのままでは我々の活動はレースごっこで終わってしまうんだ。我々は
戦う集団にならなければいけないんだよ。ジェレミーは野望を持っているが残念なこ
とに実務的じゃない、野望の実現に必要な実務は俺たちに任せろってことだ。ジェー
ムズ(・メイ)がドミニコルを連れてきた時は「我が意を得たり」と思ったよ。」
クラークソンはNeXX参戦にあたって、オーナーのジェレミーらが最も親交のある
レース関係者でプロド〇イブの創設者でもあるリチャード・デヴィッズを監督に招聘
した。マネージャーにはいくつかのF1チームで要職を歴任したマット・ティモンズ
を据え、エイドリアン・オールドロードをテクニカルディレクターに起用。首脳陣の
名前を見る限りではチーム体制は盤石に見えた。しかし、肝心のオーナーのジェレミ
ーが奔放、放漫でチ―ムは方向性を見失い常にまとまりを欠いていたという。エース
のファングは度々レースでモチベーションを失い、チームに断りもなく自主的にリタ
イヤすることもあった。No.2ドライバーへのサポートが十分でなかったのもそこ
に原因があるという。マネージャーのティモンズも、チームの方向性に不安を感じシ
―ズン半ばに今季限りでの離脱を決めいていた。オーナーの性格を熟知していたデヴ
ィッズは、チーム発足当初は静観していたものの、2シーズンが経過してそろそろチ
ームの方向性についての確認が必要な時期だと悟ったという。

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かつてプ〇ドライブを創設しWRCを席捲したデヴィッズ監督も
クラークソンオーナーの放漫ぶりをついに見過ごせなくなったか。
大規模な組織改革を実行し、来季の飛躍を図る。

「実際にサーキットに来る連中もファクトリー組も、レース臨む個人の姿勢がバラバ
ラだった。本当に勝ちたいと思っている者もいれば、極端な話あくまでも道楽の延長
と捉えている者もいた。だからドミニコルが来た時ジェレミーを交えて今後のチーム
がどこを目指すのか、まず話し合ったんだ。もちろん共同オーナーであるジェームズ
リチャード(・ハモンド)もね。ジェレミーは当然勝ちたいと言った、チャンピオン
だって狙っていると言ったよ。私は「じゃあ今のままではダメだ」と言ってやった。
彼は渋ーい顔をしていたけどね(笑)。だから私はさらに言ってやったよ、「だった
ら俺たちに任せるんだ!」とね(笑笑)。そしてこうも言ってやった、「お前の戦友
であるジェームズがこの状況を見かねてギフトをよこしてくれた、それがドミニコル
だ。」と。ジェレミーは「ジェームズに助け舟を出されるとは・・・」とかなんとか
ブツクサ言っていたがね(爆)。ジェレミーは面白いヤツさ、カラダもデカいが野望
もデカい。だがヤツは野望を実現するためには実務が重要だということを知らないん
だ。あいつは今まで自分のやりたいようにやって夢を掴んできた男だからね。おっと
自分のチームのオーナーを捕まえて「あいつ」はまずいか(爆)。しかし、だからこ
そこのチームには我々がいるワケで、オーナーが本当に頂点を狙っているというなら
我々はそれに応えるためにあらゆる手を尽くさなければならない。今まではチームの
重要事項の決定権のほとんどはジェレミーにあった。まぁオーナーだから当然だな。
だが、ジェレミーに委ねるだけでは限界があることが、この2シーズンで解ったんだ
よ(笑)。さっきも言ったが、今回の人員整理はそんな”血の入れ替え”の一環なん
だよ。幸い我々には”デイヴィス・ファング”という掛け値なしの才能の持ち主がい
て、良いところを狙える要素が揃っている。オーナーにも勝つ気はある(笑)。じゃ
あそろそろ本気になろうぜってハナシさ。」とデヴィッズ監督は冗談を交えながらも
熱っぽく語ってくれた。

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来季クラークソンチームのマネージメントを担当するドミニコルは着任早々
チームの大改革に取り掛かっている。彼の"大ナタ”は吉と出るか凶と出るか・・・

1stシーズン、エースのファングは2勝をあげランキング4位に食い込んだが、2
ndドライバーの不調もありタイトルには手が届かなかったクラークソン。今季は前
半ファングが好調で表彰台の常連となるが、後半失速し結局未勝利。やはり2ndド
ライバーは低調なパフォーマンスで今季もピットブル、マーキュリー、ノルディック
の3強を崩せずにシーズンを終えた。そうして見ると確かに華々しい活躍はあったも
ののタイトルを狙えるチームという印象は薄く、さらにいえばこの2シーズンを通し
てタイトルを本気で狙っていたのかどうかも怪しいと言わざるを得ないのが実情だ。
もちろん参戦全チームが本気でタイトルを狙っているとは限らず、そうでなければな
らないというワケでもない。しかし、デヴィッズ監督が言ったようにタイトルを狙え
るファクターに恵まれ、ある程度結果も出し、更にはオーナー自身も嘘か誠かタイト
ルが欲しいと言う。今回の大がかりな人員整理劇は、理想と現実の整合性を取りつつ
さらなる高みを目指すチーム関係者の、切実な想いが顕れた結果だったというわけだ。
クラークソン問題と言えばとかくエースのファングの奔放な行動がピックアップされ
がちだが、本当に正されるべきはオーナーの姿勢かもしれない(笑)。「まあ見てい
てくれ、我々に任せてくれればチームはもっと飛躍する。それに来季には面白いサプ
ライズを用意できるかもしれないからね。」
インタビューに答えたデヴィッズ監督はサングラスの下で、不敵に眼を光らせていた
に違いない。


アブラモビッチのロビー・ハーンをマルドゥークが引き抜き!?

シーズンオフともなるとドライバーの移籍マーケットは活況を呈するが、何も活況な
移籍市場はドライバーだけではない。チーム関係者の移籍だって活発だ。これまで純
和製メンバーで戦ってきたトライアンフは、アメリカ出身の女性エンジニア、ミア・
ドーランをチームマネージャーに据え、シュトロゼックのロムニ・ダキア買収でチー
ムを離脱したシリル・テルアビブはプルトンチームのマネージャーにおさまった。そ
のシュトロゼックはといえばF1でメ〇セデスチームを率いたココ・フォルツを引き
入れ、クラークソンもかつてF1でフェラ〇リを率いたスティラノ・ドミニコルを招
聘。クラークソンを離脱したマット・ティモンズはSLOへと移籍した。
このように3シーズン目を迎えるとなると、各チームは組織再編を考えるものだ。し
かし今パドックでは、ひとりのエンジニアの移籍が物議を醸している。それが今季ア
ブラモビッチのテクニカルディレクターに就任したばかりのロビー・ハーンのマルド
ゥーク移籍である。
アブラモビッチチームは1stシーズン、ジョン・オクスレイド=ライアンをTDに
起用したが、今季から本格的に長期での開発体制を築く為ハーンを招聘した。ハーン
はF1ベネト〇チームやフ〇ラーリチームで天才デザイナーとして活躍。アブラモビ
ッチは満を持してハーンを招聘した。しかしそのハーンに目を付けたのがマルドゥー
クだった。マルドゥークチームの首脳陣はファン・ドット監督、そしてマネージャー
のボス・グラウン共に、ハーンとはF1フェラー〇チームを常勝チームに育て上げた
盟友だ。マルドゥークのドットはどうしても、強固なチーム組織を作り上げるために
必要なピースとしてハーンの存在を外すことはできなかったという。ドットはチーム
にハーン獲得を強く望み、これに応えたマルドゥークチーム。ドバイの王族率いる金
満チームであるマルドゥークは、ハーン獲得にあたり相当額の報酬を提示したといわ
れている。マルドゥークは、ハーンと今季所属していたターベイ・ロストネルフェイ
ト+金銭との交換トレードを提案。そもそもハーン自身がこのマルドゥークへの移籍
に前向きだったといわれ、さらにハーンとアブラモビッチとの今季の契約が単年で、
来季以降の契約を更新するかどうかの選択権がハーンにあったという契約内容にマル
ドゥークがつけこみ、ハーンを半ば強奪していったというのが大筋のようだ。事実上
の引き抜きである。
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アブラモビッチの長期計画に賛同しながらも、来季の契約更新をせず移籍したロビー
・ハーン(写真左。)今回の移籍劇についてはファン・ドット監督(写真右)を含め
マルドゥーク陣営の”仁義なき”やり方に批判も・・・

おさまらないのはアブラモビッチ側。アブラモビッチは昨季終了直後にハーンと2n
dシーズンの契約を締結。2年目以降の契約更新の選択権はハーンにあったが、アブ
ラモビッチ側の中期計画に大いに賛同したハーンの契約更新オプション行使は確実視
されており、事実上の長期契約だとパドックでは見られていた。しかしハーンがアブ
ラモビッチと契約した直後にマルドゥークがドット、グラウン体制での参戦を発表。
ハーンの気持ちもシーズンが進むにつれ、マルドゥーク加入へ傾いていったようだ。
アブラモビッチは新開発体制で今季を棒に振ったが、来季また開発体制がリセットさ
れることになってしまった。
ハーンの契約が初年度単年+延長オプションという内容だったのには訳がある。ハー
ンは昨年体調不良で療養しており、体調面を考慮して初年度から複数年契約にしなか
ったというのだ。アブラモビッチチームのマネージャー、ニコライ・ボルコフはマル
ドゥーク、そしてハーンの動きに対する不快感を隠さない。
「我々は今季からロビー・ハーンを中心とした長期的な開発体制の構築をしていくつ
もりだった。しかし我々の計画は1年経ってまたリセットされてしまった。まぁこの
業界ではこういうことは茶飯事だからね、いちいち文句を言っても始まらないが、彼
ら(マルドゥーク)のやりかたは狡猾だったね。ロビーもあちらに行きたがっていた。
結果我々はターベイ・ロストネルフェイトという偉大なエンジニアを獲得したわけだ
が、我々が今季1年積み上げてきたものはまた崩されてしまった。彼らならTDがロ
ビーでなくとも強い組織を作れたろうに。我々もロビーを引き留めるだけの報酬は容
易できたが、ロビーの気持ちはもうアブラモビッチにはなかった。マルドゥークのや
り方はいささかフェアじゃなかったと思うよ。実に老獪にロビーの気を惹きつけてい
ったね。ロビーは我々に対し「本当に済まない」と繰り返していたよ。まぁ謝られて
もしょうがないんだけどね、ロビーには「君の新しいチャレンジがうまくいくことを
願っている。」と伝えたよ。さしあたり我々が考えなければいけないことは、優秀な
エンジニアを引き抜かれたことを嘆くのではなく、来季からターベイと共にチームを
どう強くしていくかという問題だからね。」とやりきれない心境を吐露した。
アブラモビッチは初年度にアレンザンダー・ロッソが1勝をあげたが、開発体制をよ
り強化するため今季TDのスイッチに踏み切った。開発の方向性が大きく変わった今
季は苦戦を強いられたが、それも想定の範囲内だった。しかしオーナーのロマン・ア
ブラモビッチ氏はプレスに、今季の現状は決して満足できるものではないとの心境を
漏らし、早期の成績改善を望んでいた。
アブラモビッチは昨季オフ、1勝をあげたロッソをアントネッティに奪われた。そし
て今季は新たに獲得した有能なエンジニアをマルドゥークに持っていかれた。NeX
Xが開幕してからここまで踏んだり蹴ったりのオフシーズンをすごしているアブラモ
ビッチ。今回の人事騒動で、アブラモビッチの計画には大きなずれが生じるのは間違
いない。また、今回の移籍劇でアブラモビッチに同情するチームも多く、同時にマル
ドゥークのやり方を批判するチームも少なくない。この騒動はしばらく尾を引きそう
だ。


◇SLOロシェット監督が今季限りで退任。後任に元F1ドライバーのモーゼル

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来季SLOの新監督に就任するハウルモーゼル氏(写真右)と、退任するヒカルド・ロシェット氏
(写真左)。ロシェットは今後SLOのIMSAチーム監督に就任する。

カテゴリ発足から2シーズンが経過したNeXXだが、来季3シーズン目を迎えると
組織改編を試みるチームもちらほら。そんな中参戦15チーム中唯一南米はブラジル
国籍のサントス・ロコ・オリベイラ・レーシング(通称SLO)も、来季の首脳人事
にメスを入れたようだ。第17戦カナダGP開幕前の木曜日にチームは会見を行い、
今季までチーム監督を務めたヒカルド・ロシェット氏の退任と、新監督にハウル・モ
―ゼル氏が就任するという後任人事を発表した。
初年度からチームの指揮を執ったロシェットは元F1ドライバー。1996年~98
年までの3シーズンをフット〇ークやテ〇レルで戦い、33戦の出走経歴を持つ。対
する新監督のモーゼルも元F1ドライバーだが、F1以外にもインディカーやスポー
ツカーで活躍。1987年のスポーツプロトでは世界王者となっている。今回の人事
はSLOが新しく参戦するIMSAのチーム監督に、ロシェット氏が就任するためと
のことだ。ロシェットの退任はかねてから囁かれていたため、こちらも引退の噂があ
ったアイウトン・フィリップス・ラ・ポルタが後任に就くとの見方が大勢を占めたが
ラ・ポルタの現役続行も合わせて発表されSLOの人事は当初の予測とは全く違う形
で決着した。
会見はカナダGPの舞台となるエキシビジョンプレイスにある、ダイレクトエナジー
センターのコンベンションルームで行われ、3人の共同オーナーのうちのリカルド・
オリベイラ氏、パウロ・サントス氏の2名、そしてモーゼル、ロシェットの新旧監督
両名、そして来季よりSLOに加入するマット・ティモンズの計5名が出席した。
新監督のモーゼルは会見の中で「今回こういう形で新しいカテゴリへ参加でき、そし
て自身にとっても刺激的な挑戦ができることを嬉しく思う。なにしろ監督というのは
初めてのポジションだ、チームを率いるという役割を引き受けるのは簡単ではなかっ
たよ。しかしこのチームの人達は熱意をもって私を誘ってくれたし、チームは新たに
IMSAに参戦するという野望を実現した。大きな野望があり、明確なビジョンのも
とに着々と計画を進めている。そんなチームの一員となり、レースに関われるのは幸
せなことだよ。マット(・ティモンズ)とも何度か話をしている。とても信頼できる
男だと感じた。私の新しい挑戦に欠かせない存在になるだろう。チームが活躍できる
よう最善を尽くすつもりだ。」と来季への抱負を語った。またオーナーのサントス氏
は「今回モーゼルに監督就任を打診したのは私だ、私とハウルはかれこれ30年来の
付き合いなんだ(笑)。IMSAチームの監督をハウルに頼むプランもあったが、あ
ちらは新規立ち上げだからね、NeXXチームの立ち上げも経験したヒカルドにお願
いしたんだ。ハウルはドライバー経験も長いし、何より様々なカテゴリを経験してい
る。監督業は初めてだがこの多彩なレース経験は重要だ。なんせハウルはプロトタイ
プ世界選手権でタイトルを獲っているからね。彼はきっと我々の期待に応えてくれる
と確信しているし、この経験は我々の今後の計画にも重要な意味を持つ。我々は今後
5年以内にル・マン24時間へ挑戦するつもりだからね。」と語り、近い将来のチー
ムの展望を明かした。
またSLOのオーナーの一人リカルド・オリベイラ氏がヨコスカタイヤの株式の1/
4を取得してサンパウロ現地法人を設立したことが昨季末に話題となっており、こ
の体制変更に当たってタイヤサプライヤー変更の発表もあるのでは、との噂が流れて
いたがオリベイラ、サントス両氏とも今回この件については触れなかった。
初年度から参戦のSLOは来季NeXX3シーズン目、今季は念願の初優勝をあげた
もののチームランキングでは昨季を上回ることはできなかった。モーゼル新体制で臨
む来季は、1stシーズンの年間ランキング4位以上が目標となる。モーゼル新監督の
手腕に注目だ。


◇李舜英氏、「宋にはアジア人ドライバーとしてヒュウガを超えてほしい」

「私は宋昇龍はアジアを代表するレーシングドライバーの一人になれると思っていま
すよ。」とは、来季からチーム名を『ドラゴンフォース・チャイナ』へ変更する現チ
ャイナドラゴンのオーナー李舜英の言葉だ。李氏はこのほど来季、ジョリー・セプタ
ーとの契約を更新しない旨を語った際のインタビューで、来季もチームに残留するド
ライバーの宋昇龍についてこう語った。
宋は昨季途中、第16戦日本GPでNeXXデビュー、終盤戦アメリカで9位入賞を
はたしデビュー3戦でポイントゲットした逸材だ。今季はチーム共々やや苦戦してい
るが、開幕戦ではいきなり2位表彰台にあがりポテンシャルの高さを見せつけた。李
氏は宋をキャリアの初期からサポートし続けており、宋に対して並々ならぬ期待を注
いでいる。
「開幕戦の走りこそが彼の真の実力だと、私は思っています。彼は難しいコースやコ
ンディションでこそ力を発揮します。今季は彼にとって実質最初のシーズンで、初め
てのコース多かった。ウチのクルマも高速サーキットではやや弱いところがある。そ
れもあって苦戦はしていますし、いくつか予選落ちも経験しました。しかし彼は光る
速さを持っていますし、テクニックもある。あとは経験です。私はカートを始めた頃
から彼をサポートしていますが、彼は大きなポテンシャルを秘めています。同じアジ
ア人で比較するとトシロウヒュウガを超えられる、と思っているんです。」と語る李
氏。
上海出身の宋はここまで主にヨーロッパで、FIA直下の下位カテゴリを戦ってきて
おり、一昨年のFIA-F2ではシーズン2位を記録。李氏はそんな宋のカートから
イタリアF4へのステップアップを助け、以来ここまで宋のレース活動を7年にわた
ってバックアップし続けてきた。「今季は正直ここまで、エンジニアリングがうまく
いっているとは言えない状況です。開幕戦で宋が2位、そして第3戦ドバイでジョリ
ー(セプター)が優勝したにもかかわらず、その後尻すぼみなのはその為です。なの
で現在我々は来季に向けて、チーム組織を大幅に見直しているところです。それに伴
ってジョリーが今季限りでチームを去ることになりました。非常に残念な限りですが
我々には宋という”未来”があります。来季からは彼をメインにチーム作りを進める
ことになるでしょう。
彼はヒュウガと似たようなタイプです。鋭いコーナリングと卓越したバランス感覚を
持っており、雨や市街地でも速い本物のレーシングドライバーに大成する可能性を秘
めている。私は宋にヒュウガを超える存在になってほしいと思っていますし、それが
できると思っています。そして願わくばヒュウガとこのNeXXでタイトル争いをし
てほしい。世界のトップフォーミュラの選手権で、アジア人同士がタイトルを争うな
んて痛快なことです。その為に我々はジャッキー(・チュン、無天老師様ではない)
とともにチーム体制を強化するのです。アジア人同士が世界のトップで争うのが私の
夢、そしてその勝者は我々です。」野望を語る李氏の眼には鋭い光が宿る。
一方で宋昇龍に対する他チームの評価は一定しない。昨季第16戦のデビュー時の注
目度は、一昨年のF2で選手権2位を記録したにもかかわらず低かった。しかし最終
戦で9位入賞を果たし、さらに今季開幕戦での2位表彰台で一気に評価が高まった。
かと思えばその後の停滞で徐々に評価は下がってゆき、現時点ではもはやストーブリ
ーグのネタにすらならない状況だ。
プルトンのゴードン・メッセンジャーなどは「彼はまだ粗削りだけどね、魅力的な速
さを持っている。そして年齢とキャリアの割に卓越したテクニックを持っているよ。
彼に足りないのは”勝てるマシン”と”経験”だね。」と語り、アントネッティのボ
ス、ドナルドも「彼は天性の速さとテクニックを持っているね。そう、タイプとして
はトシロウ(日向)やファン(・カレッジ)のようだ。マシンの挙動や路面のコンデ
ィションを、人一倍敏感に感じ取るタイプだね。」とその才能を認め、一定の評価を
下している。一方で「今後”勝てる”ドライバーになるになるためにはもう一つ、何
かが必要だ。それは経験か? 勝てるマシンか? いずれもそうだろう。そして最も
重要なのは”勝てる環境”をつかみ取ることだ。」とも語り、「今季のチャイナドラ
ゴンのような状態では難しそうだね、でも何かもう一つ光るアピールが必要だよ。」
と付け加えた。「リー氏はナショナリズムの発揚のためにソンを使いたいのさ。グラ
ンデ・チーノ(偉大なる中国人を意味するスペイン語)にひれ伏せってわけだ(笑)」
というジェレミー・クラークソンの発言は別としても、アブラモビッチのヴィタレリ
・フェドロフ監督は「ここまで到達しているのだから、それなりに速さは持っている
はずだよ。でも今はまだ”それだけ”だね。もう少し時間が必要だろう。」と言い、
ピットブルのチームマネージャー、ヘルムート・マルコリーニは「彼はまだ自身の能
力を自身のメンタルでマネジメント出来ていない。経験が少ないからそれも当然だけ
どね。でもついぞそれができずにドロップアウトするドライバーは多いんだよ。それ
が出来て初めて彼にも道が開けるんじゃないかな? 少なくとも今我々が獲得を考え
るような段階には、彼はまだ達していないね。」と手厳しい。
ノルディックのチチ・ソルベルグなどは、「速さは見せた、あとは貪欲さだ。彼はい
ざという時に、自分を支えてくれた環境を捨てて前に進む覚悟があるか、それが問題
だ。これまで何人ものアジア人ドライバーを見てきたが、彼らには総じて貪欲さが欠
けていた。自分の売り込み方を知っているのはトシロウくらいだろうね。」と語り、
ステップアップの為には現チームとの決別も選択肢の一つだとし、その覚悟が宋にあ
るのかを疑問視している。
何にせよ宋は実質今季が彼にとっての1stシーズン、そしてドラゴンフォースが宋
を支援し続ける限り宋はNeXXでの居場所を失うことはないだろう。しかし、その
の先を見据えるのならチームと決別するタイミングが来ないとは限らない。李氏は自
チームとともに宋が成長し、”勝てるドライバー”になることを望んでいるが、宋が
NeXXで”勝てるドライバー”になるためにはチームが障害になることだってあり
えるのだ。
今後の宋のステップアップには、このパラドックスを双方が解決することが重要だ。
李氏が望むように将来宋が、ドラゴンフォースでタイトル争いをできればそれは素晴
らしいことだ。しかしモーターレースの世界は往々にして、当人たちの思惑通りに事
が進まない極めて難しい世界。今後のドラゴンフォースと、宋の動きに注目だ。


◇クラークソンオーナーとファングが、日本GPでのリタイヤ巡り大ゲンカ!?

今季、前半戦では大活躍しながら後半大きく失速し、結果ランキングを6位で終えた
クラークソンのデイヴィス・ファング。そのファングが第16戦日本GPでのレース
リタイヤ後、ピット裏でオーナーのジェレミー・クラークソン氏と大喧嘩をしていた
ことがわかった。チーム関係者や、当時ピットガレージが隣だったリナルディやロム
ニ・ダキアの関係者がこれを目撃していた。
今季、後半戦大失速したファングは予選でも精彩を欠き、後半9戦で7度も二桁順位
を記録。うち4戦は15番手以下と絶不調。決勝も2度の4位入賞のみで、徐々にフ
ラストレーションが溜まっていったファングは第16戦日本GPでまた”やらかして”
しまう。レース途中、チームの戦略とは全く関係のないタイミングで突然ピットイン
し、困惑するクルーを横目にさっさとマシンを降りてしまったのだ。このレース、フ
ァングは17番手からのスタート。序盤からDRSに不調を抱えながらも12ターン
目には12番手と、ポイント圏目前まで迫っていた。そんな状況での突然の”自主リ
タイヤ”に、ついに堪忍袋の緒が切れたオーナーのクラークソン氏が、モーターホー
ムに戻ろうとしたファングを捕まえて口論になり、一触即発の状態になったという。
今季までチームマネージャーをつとめたマット・ティモンズは当時をこう振り返る。
「デイヴ(ファング)はああ見えてとても繊細で、気分屋なんだ。まるでアーティス
トのようさ(笑)。いいときの彼は手がつけられないほど速いが、うまくいかない時
はとてもナーバスになる。レーシングドライバーなんてみんなそんなものだろうと思
うかも知れないが、彼はその上をいくね(笑)。あの時(日本GP)は特にそうだっ
たよ。前半戦のデイヴはキレキレだった。2位を4回記録したし、勝てなかったがオ
ランダではPPも獲得した。うちのクルマが苦手としていたツイスティな低速コース
でね。あれにはチームの誰もが驚いた。後半戦いくつか勝てればタイトルも夢じゃな
いってね(笑)。でもスウェーデンから彼は不調に陥った。」
「デイヴのフラストレーションはあの時(日本GP)がピークだったんだよ。うまく
いかない、良い感触が戻ってこない、後半戦はもらい事故も多かったしね。日本GP
も序盤の2ターンでDRSが開かなくなって、走っても走っても前に届かない。そし
て”それ”がピークを超えた彼は「OK、茶番はここまでだ」とばかりに気持ちが切
れてしまうんだ。あとは御覧の通りだよ。去年もスウェーデンで見ただろ?(笑)」
と笑いながら話す。
「オタルの時は大変だった。デイヴが予定外のタイミングでピットインしてきて、何
事かと思っていたら私と一緒にピットウォールのモニタの前にいたジェレミー(クラ
ークソン氏)が血相変えてデイヴを追いかけていったんだ。”ああこれは面倒なこと
になるな”と思ったよ。だから私はその場をリチャード(・デヴィッズ監督)に任せ
て2人を追いかけた。2人はすごい剣幕で怒鳴りあっていたよ(笑)。ジェレミー
「お前はまた駄々っ子みたいに自分の仕事を放棄するのか!!」と言えば、デイヴは
「うるせぇ!そんなに言うならあんたはまず俺を満足させる車を用意しろ!!」って
な具合にね(爆笑)。またか、と思いながらも私は2人の間に割って入ったよ。そう
しないと取っ組み合いになってしまう勢いだったからね。」
「私が間に入ってからも口論はしばらく続いたよ。ジェレミーは「お前はプロなんだ
から仕事をしろ!!」と怒鳴り散らしていたし、デイヴはデイヴで「仕事をしてない
のはあんたの方じゃないのか!? オレを満足させるオモチャの一つも用意できない
んだからな!!」とね(笑)。まるで子供の喧嘩だが、ひとしきり文句を言い終えた
デイヴはすっきりした顔で引き上げていったよ。おさまらないのはジェレミーの方で
口論が終わった後も真っ赤な顔をしてね(笑)。あの日はレースの最後までピットの
壁を蹴りまくってた(爆笑)。」
その様子をとなりのピットガレージで見ていたロムニ・ダキアのレースエンジニア、
パディ・ハイは・・・
「ああ、またやってるなと思ったよ(笑)。クラークソンオーナーとファングの喧嘩
なんで日常茶飯事さ。だいたいはオーナーが怒ってファングのところへ現れて、ファ
ングがこそこそ逃げるってパターンだけどね。まるでトムとジェリーさ(笑)。だけ
ど時たまファングが爆発するときがある、あれはファングも相当熱くなっていたね。
でもファングは過ぎたことはすぐ忘れて引きずらないタイプだよ、カナダではパドッ
クで赤ワインのボトルを数本持って歩いていて私が「やぁデイヴ、金曜の昼からパー
ティーでもするのかい?」と尋ねると「友人が良い酒をくれたからウチのゴッドファ
ーザー(クラークソン氏)にもお裾分けしてやるのさ(笑)。パディも飲むかい?
ウチのボスはワイン好きなんだよ、小洒落やがってさ。俺はウィスキー派だ。」なん
て言ってヘラヘラしながら歩いてたよ(笑)。」
クラークソン氏とファングの喧嘩と仲直りはいつものことのようだ。しかしファング
の発言はクラークソンの現状を物語るものだ。ファング自身は光る速さを見せつつも
マシン特性はクセが強すぎて低速コースでは戦えない現状が続いているし、継続的な
開発体制の構築にも至っておらずシーズン後半になるほど苦戦が顕著になっていた。
オーナーのクラークソン氏はヨーロッパ戦線時に本誌の取材に応え、来季のエンジン
変更の可能性も示唆していた。更に今回の大規模な組織改編だ。ファングの”提言”
はチームを動かした。
来季クラークソンチームは大きく体制が変わる。チームはエンジニア50人からの大
量解雇を行って人員を入れ替え、インタビューに答えてくれたマット・ティモンズは
SLOへと移籍した。2ndシートに座るドライバーは未だ決まっていないが、リチ
ャード・デヴィッズ監督は来季に向けて意味深な発言をしていた。
個性の強い者たちが集まり、これまではてんでんばらばらだったクラークソンチーム
が今組織としてまとまろうとしている。各々が一筋縄ではいかない個性派集団クラー
クソンは、果たして来季大躍進するか? それとも空中分解してしまうのか(笑)?
いろんな意味で大注目だ。

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クラークソンオーナー(写真左)とファング(写真中央)の口喧嘩はどうやらいつものことのようだ・ピット
が隣のロムニ・ダキアのエンジニア、パディ・ハイ(写真右)は常日頃目にしているとのこと。しかしついに
ファングの”悪口雑言”はチームを動かした。そのエネルギーが来季レースに向けて爆発することを願うばかりだ。

◇日向とマイネで挑む来季! トライアンフが本気でタイトルを狙う!!

日本期待の純和製チーム、トライアンフ・スクエアジャパンが来季のタイトル獲りに
本気だ。トライアンフチーム首脳陣は2人のレギュラードライバーを伴い、最終戦
メリカGP終了の1週間後すぐに北海道は十勝へと飛び、今季からカムイのテストコ
ースとなっている十勝モータースピードウェイで来季の『SUGO・カムイ』エンジ
ンとレラシャシーのフィッティングを行った。

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来季から監督を退きオーナー業に専念する山本氏を、とある十勝の
蕎麦屋に入店するところで直撃。来季のビジョンや感触を訊いた。

フィッティングにはオーナーの山本つかさ氏も同行し、来季シートに座る2人のドラ
イバーとも雑談をかわすなどした。山本氏は来季、これまでオーナー業と兼務してい
た監督のポストを、マネージャーの真田幸治氏に引き継ぐ旨を決定。空いたマネージ
ャーのポストには、スポーツカーチームのストラテジストとして活躍していたケンブ
リッジ大学出身の才女、ミア・ドーランを招聘しオーナー業に専念。来季以降の本格
的なチーム強化に向けて動き出している。来季新しいバッジネームとなるSUGO・
カムイエンジンを見た山本氏は「来季のエンジンはすごくいいよね。ベンチテストの
段階からちょこちょこ見させてもらってたんだけど、エンジンは単体で770馬力は
出ていたし、SUGOのユニットはMGU-K単体で160馬力以上っていうから、
単純にMAXパワーの面ではだいぶいい数字ですね。カムイのエンジンはもともとコ
ンパクトだし、新エンジンもエンジン自体の重量増はないと聞いています。それでピ
ークパワーが向上してパッケージングが良ければもっとやれる。SUGOさんともす
ごく緊密にリレーションを取ってましたから、良いものが出来てるんだと思います。」
と語った。
来季については「ルディ(マイネ)を迎えられたのは大きいですね。毎レースきっち
り2台のポイントを期待できる。彼は地味であまり自己主張もしないから実はそんな
に評価が高くないんだけど、なんていうか日本人好みの職人肌だよね。F1にいた時
から見ているけど、キッチリ仕事をして帰ってくるタイプ、来季は入賞回数が増える
のは間違いないですよ。彼は去年優勝もしているのにみんな冷たいよね(笑)。俊郎
とルディで3つ4つ勝てればタイトルも見えてくるんじゃない?」と期待をのぞかせ
た。来季からチーム監督となる真田幸治も「オーナーの言う通り、2人ともポイント
計算ができるドライバーだから、ルディの加入でチームとしての総合力は大きく向上
したと考えています。日向は今季も本当によくやってくれているし、ルディはカムイ
のスタッフとF1で2年仕事しているからね。チームとしてのまとまりにも問題ない
と思いますね。ジョー(・カジワラ)もこの決断を尊重してくれました。私としては
そこが残念と言えば残念なんだけど・・・ いい人すぎるんだよねアイツは・・・。」
と2シーズン在籍した2ndドライバーの離脱を惜しみつつ、来季への期待を語った。
3シーズン目となる来季もNo.1シートに座る日向は「まぁ今のモータースポーツ
パワーだけじゃ勝てねぇぜって思ってるけど、でもやっぱパワーは大事よね。中低速
とか市街地は戦えても、やっぱフランスとかイタリアとかキツかったもんなぁー。で
も、信頼性が上がったおかげで今季は入賞回数も増えたし勝つこともできた。でもさ
やっぱそれで満足はできねぇんだよなぁー。だから、来季は(タイトルを)獲りに行
く。だってそういうステージまで上がってきたんだよ、このトライアンフってチーム
は。だから来季は俺もチームも本気さ。ジョーの離脱は残念だけどね、でもあのオッ
サン絶対あんなもんじゃないぜ。まだ本気になってないだけだよ、いや本気になれて
ない、の間違いかな? とにかくさ、ジョーは来季1年休むみたいだけど、4thに
は帰ってくるんだろーな? おれは本気のジョーと戦いてぇよ。て考えたら、ジョー
がうちを出てったのはある意味好都合かもな(笑)。あと一言言っとくけど、マイネ
のおっさんは速いぜww」と相変わらずの口ぶりで来季のタイトル獲りを宣言した。
2ndシーズンをランキング6位で追えたトライアンフ、シーズンを通しての獲得ポ
イント130がほぼ日向のものと考えればこの順位は驚異的だ。ここにマイネが加わ
れば単純計算でもトップ3に食い込むだけのポテンシャルを得たということがわかる。
さらにマイネは1stシーズン115ポイント、不調と言われた2ndシーズンでも
第12戦までで58ポイントを獲得しており、ピットブルのチームタイトル連覇に大
きく貢献しているのだ。これでトライアンフ陣営が本気にならない理由がない。これ
まで数々の日本系チームが様々なカテゴリに挑んできたが、トップフォーミュラの世
界選手権でタイトルを獲得したチームはいない。来季は偉業達成となるか? 日本の
ファンならずとも、来季のトライアンフからは目が離せない。

 

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■Hot Stove League

□ピットブル・エクストリーム・レーシング
 ◎No.1:ニコ・ラムダ(AUT) 
 ◎No.2:ミシェル・ボナパルト(FRA)

□マーキュリー・レーシング・オーガナイゼーション
 ◎No.1:アレックス・バトラー(IRL)
 △No.2:ゾルタン・ゲラ(HUN)??
 ×     アレンザンダー・カブロン(THA)??

エヴァー・グラハム・レーシング 
 ◎No.1:カーティス・マルケーナス(AUS)
 ◎No.2:ジェストン・バロン(UK)

トライアンフ・スクエアジャパン・レーシング
 ◎No.1:日向 俊郎(JPN)
 ◎No.2:ルドルフ・マイネ(GER)??

アブラモビッチスタンフォード・レーシング
 ◎No.1:ジョンブル・チャップマン(UK)
 ◎No.2:アレン・バーンズ(ASU)

プルトン・オートスポーツ
 ◎No.1:トゥーリ・ヴィックス(EST)
 ×No.2:ジョルディ・ヴァッセル(UK)??
 ×     レオ・タイラント(IDN)??
 ×     ジョーイ・エラゲル(IDN)??
 ☆     メロディ・パトリシア・ノーマン(USA)??

□スクーデリア・リナルディ
 ◎No.1:ミケーネ・ポルボローネ(ITA)
 ◎No.2:スティラノ・シエナ(ITA)

□クラークソン&メイ・ハモンド・レーシング
 ◎No.1:デイヴィス・ファング(UK)??     
 △No.2:リンド・ソリス(UK)??
 ×     デリック・ワーノック
 ×     ジョルディ・ヴァッセル(UK)??     

□ロムニ・ダキアオートスポーツ(シュトロゼック??)
 ◎No.1:ゾルタン・ゲラ(HUN)??
 ×No.2:アレンザンダー・カブロン(THA)??
 ×     メロディ・パトリシア・ノーマン(USA)??

ドラゴンフォース・チャイナレーシング
 ◎No.1:宋 昇龍
 △No.2:ゾルタン・ゲラ(HUN)??
 ×     アリエル・ティルクム(UK)??

□ノルディック・モータースポーツ
 ◎No.1:ケリー・ラスムッセン(DEN)??
 ◎No.2:ミック・ハイデンフェルド(GER)

□サントス・ロコ・オリベイラ・レーシング
 ◎No.1:アイウトン・フィリップス・ラ・ポルタ(POR)
 ◎No.2:アンドレアス・サントス・フィリオ(BRA)

アントネッティオートスポーツ
 ◎No.1:アレンザンダー・ロッソ(USA)
 ◎No.2:ファン・カレッジ(FRA)

□マルドゥーク・レーシング・ドバイ
 ◎No.1:ビル・リヴィエール(CAN)
 〇No.2:ジャッキー・グーデリアン(USA)

□ガジャック・ルルーシュ・スポール
 〇No.1:セドリック・タンデイ(FRA)??
 ×     ヴィヴィエ・ピノーリ(FRA)??
 ☆     キャッシュ・サフィー(FRA)??
  △No.2:カタル・アファル(MOL)??
 ×     フィエール・ガシュレー(FRA)??

□フリー
 ジョリー・セプター(SAF)
 アレンザンダー・カブロン(THA)
 ジョー・S・カジワラ(USA)
 デイヴィス・リンドホルム(CAN)
 アリエル・ティルクム(ENG)
         

◇移籍がささやかれていたマルケーナス、エヴァー・グラハムへの移籍が正式決定!!

かねてから噂のあった、カーティス・マルケーナスのエヴァー・グラハムへの移籍が
正式に決定した。エヴァー・グラハムチームは、最終戦でのアブラモビッチチームの
バーンズ獲得会見を受けて、最終戦終了から1週間後の12月初旬にこれを発表した。
これで来季エヴァー・グラハムはマルケーナスと、2シーズン目となるジェストン・
バロンのラインナップでシーズンを戦うことが正式に決まった。

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オーナーのデヴィッド・グラハム氏(写真右)はかねてからマルケーナスの獲得を画策、また今季は不調
をかこっていたマルケーナス(写真左)も母国のチームへの移籍を望んでいた。相思相愛の移籍成立だが、
これでマーキュリーの2ndシートは完全に空いた。マルケーナスはマーキュリー側の自分に対する扱い
にも不満を持っていたようだが、マーキュリーはマルケーナスを手放してよかったのだろうか?

マルケーナスはオーストラリア出身の27歳。母親がオージーだが父親はニュージー
ランド人でマオリ族の血を引く。初年度は事実上のトップフォーミュラ初レースとな
る開幕戦で、予選フロントロー2番手につける快挙。さらに第8戦フランスで初優勝
をあげるなど活躍したが、2ndシーズンは予想外の苦戦を強いられ、期待された2
勝目はおろか表彰台にすら上がれずにシーズンを終えた。天性のスピードを持ち、市
街地やウェットレースなど難しいコンディションをものともしない走りは衝撃的だっ
たが、今季それは完全に鳴りを潜めた。前半戦はコンスタントに入賞するものの下位
入賞が多く、8位入賞を4度記録したことからチーム関係者には『8(エイト)マン』
と揶揄されるようになる。そして後半戦は昨季同様に失速。レースを二桁順位で終え
ることが多くなり、チームメイトとは対照的に大きく伸び悩んだポイントは、昨季を
下回った。次第にマーキュリー首脳陣からもマルケーナスの今季の伸び悩みに苦言が
出始め、時期を同じくしてマルケーナスの同郷のチームであるエヴァー・グラハムが
彼に接触。水面下で獲得交渉が進んでいた。エヴァー・グラハムの共同オーナーであ
るデヴィッド・グラハム氏は、彼が国内レースで走っていたころから目をつけていた
という。
「カーティス(・マルケーナス)は国内のあらゆるレースで見かけたよ。ただオース
トラリアには今S5000というフォーミュラのカテゴリがあるけど、彼はなぜかフ
ォーミュラはやっていなくてハコのレースばかりに出ていてね。でもいつぞやのバサ
ースト(バサースト1000)で彼を見たとき、その走りに惹きつけられたんだ。」
とグラハム氏。「あそこ(マウントパノラマ・サーキット)は本当に危険で難しくて
ドライバーの本能を煽るようなコースなんだ。特に山側区間はアップダウンが激しく
てテクニカルなうえコース幅が狭く、ブラインドコーナーが多い。事故も多いし実際
死者も出ている。しかしそこでのカーティスの走りは圧巻だったよ。それ以来私は彼
に釘付けさ。フォーミュラカーでの走りは見ていなくとも、あの走りを見ればわかる。
彼はマシンの挙動を敏感に感知して、それに対して最適解のドライビングができる。
私はむしろ彼をフォーミュラに乗せてみたいと考えていたんだ。そうしたらマーキュ
リーに先を越されてしまった・・・(苦笑) なぜ彼ら(マーキュリー)がカーティ
スを獲得したのかは、おそらくゲディ(・ライフソン)のススメだろうけど、結果少
し回り道をしたが彼を我々のシートに座らせることが出来た。ひとまず私は満足して
いるよ、あとはカーティス次第だ。」とマルケーナスに対する期待を語った。
「彼は今季あまりよくなかったけど、それはマーキュリー側のサポートも充分ではな
かったと思う。だから彼との交渉はすんなり進んだよ。でも発表がシーズン終了後に
なったのは、マーキュリーが最後まで契約合意を渋っていたからなんだ。多分土壇場
での残留も視野に入れていたと思うよ。カーティスはそれだけ価値のあるドライバー
なのさ。」とグラハム氏。
マルケーナスとエヴァー・グラハムの交渉はシーズン後半、ヨーロッパラウンドの終
了時期近辺に始まり、北米ラウンドに転戦するころには既にエヴァー・グラハム側と
マルケーナスの間では大筋合意に達していた。しかし、マーキュリーとのチーム間合
意にはなかなか至らず。バトラーがタイトル争いの真っ只中にいたことと、マルケー
ナスの後釜確保に苦戦していたマーキュリー側は、土壇場でのマルケーナス残留の可
能性も視野に入れていた為、正式発表がこのタイミングになったようだ。
今回の移籍はプレスリリースで行われたためマルケーナス本人の肉声は届いていない
が、この移籍は本人にとってもポジティブなものであったことは間違いないだろう。
チームは年明けにエンジン変更を含めた新体制発表会見を予定しており、新年号では
期待にあふれたマルケーナス本人の声をお届けできるはずだ。気になるのはマーキュ
リーの来季の2ndシート、マーキュリーはマルケーナスの後釜を見つけられたのだ
ろうか? 逃がした魚は大きかった、なんて話にならなければ良いが・・・。


◇いまだ見えない有力2チームの2ndシート
              来季のマーキュリー、クラークソンのNo.2は!?

2年間在籍したマルケーナスを手放したマーキュリー、そして英国期待の若手ティル
クムとの契約をシーズン途中で解除したクラークソン。この有力2チームの来季の2
ndシートには誰が座るのか? 未だ両チームから正式な発表はない。
マーキュリーはエースドライバーのバトラーがドライバーズタイトルを連覇し、チー
ムランキングも2年連続の2位。一方のクラークソンも元F1王者のファングを擁し
チームランキングは初年度5位、今季は6位と上位を争うチームだ。しかし他チーム
が次々と来季陣容を発表している中、この有力2チームは未だ来季の2ndシートが
決まっていない。
マーキュリーはシーズン終了ギリギリまで、マルケーナスと残留交渉をしていたよう
だ。しかしマルケーナスは同郷オーストラリアのチーム、エヴァー・グラハムから熱
心なオファーを受けており、彼の気持ちは早い段階で移籍に傾いていた。現在NeX
Xにおいて有力チームの一つであるマーキュリーだが、実はチームの運営規模はさほ
ど大きくない。ピットブルのようなチームと比べると、いわゆるワークスとプライベ
ーターのような差がある。そんな状態でエースのバトラーがタイトルを争っているも
のだから、チームのサポートの比重はどうしてもバトラーに傾く。そこで割を食った
のがマルケーナスで、昨季は1勝をあげたマルケーナスは今季、表彰台にすら上がれ
ずにシーズンを終えた。
マルケーナスに移籍の意志があることは早い段階で把握していたマーキュリー、しか
し当初マーキュリー首脳はマルケーナスの不調に苦言を呈しながらも残留を基本路線
として考えていたという。しかしマルケーナスの移籍願望が思いのほか強く、引き留
めに苦労していたようだ。エヴァー・グラハム側もマルケーナスを高く評価しており
結果マルケーナスは”念願”の移籍を果たす。そうして空いたのがドライバー王者を
輩出したチームの2ndシートだった。
マーキュリーの2ndシートには何人か候補が候補が挙がっているものの、いずれも
実現性は低い。チームが最も熱心にオファーしているのはゾルタン・ゲラだが、来季
からロムニ・ダキアと合併を果たすシュトロゼックがゲラを高く評価しており、流出
を阻止しようと躍起だ。移籍の可能性は限りなく低い。リザーブドライバーの昇格も
噂されるがジョリー・バーナードは既に日本のスーパーフォーミュラとスーパーGT
との掛け持ち参戦が決まっており、シュテフェン・バロシュも昨季参戦していたDT
M、WECの継続参戦が決まっている。他有力どころではジョリー・セプターの来季
の行き先が決まっていないが、高額と言われるサラリーとバトラーの立ち位置を脅か
すリスクを抱えているため獲得に動くとは考えにくい。現状来季このままフリーとな
りそうなのがカジワラ、カブロン、ファーシマス、そして今季途中でNeXXを離脱
したティルクムだが、ここからのチョイスになるのか、それとも・・・
マーキュリーは2年連続でドライバーズタイトルを獲得しながら、2年連続でチーム
タイトルを逃している。マーキュリーが2ndドライバーに求める条件としては”コ
ンスタントに上位入賞が計算できつつもバトラーを脅かさない”という絶妙なバラン
スを保てるドライバーだ。戦える環境が整えが面白いのはカブロンあたりだが果たし
て?
もう一方のクラークソンに関してもどうにも動向が読みにくい。彼らは初年度スポン
サー交渉が不調に終わり、当初の想定の2/3程度と言われた予算額で参戦を開始し
た。そのためNo.1には大物を招聘したものの、2ndシートには無名の若者を座
らせざるを得なかった。そしてその若者はさしたる活躍もできずに1年でチームを去
った。それが現在F1において将来を最も期待されているジョルディ・ヴァッセルそ
の人だが、クラークソンは今季も若手英国人を起用しやはり1年で見切りをつけた。
正確には12戦で、であるがそのクラークソンを今季途中で離脱したアリエル・ティ
ルクムの来季去就もまだ決まっていない。ただひとまずティルクムがクラークソンへ
カムバックすることはないため、可能性としては除外しておこう。となると他の可能
性を考えなければならないが、最も”お手軽”な線でいけばリザーブドライバーの昇
格が挙げられる。第13戦以降2ndシートに座ったリンド・ソリスはそこそこのパ
フォーマンスを見せた。またもうひとりのリザーブ、デリック・ワーノックも昨季は
デビュー戦でいきなりPPを獲得するなど才能の片鱗を見せた。リザーブドライバー
昇格の線は可能性として考えられなくはない。
しかしクラークソンはこのオフ、大規模な組織改革を断行中だ。チームマネージャー
が変わり、ファクトリーの人員も整理。大幅なスタッフの入れ替えを決行したのだ。
監督のリチャード・デヴィッズも来季のより一層の飛躍へ向け意気上がっている。そ
んなチームが果たしてリザーブドライバーの昇格という手段をとるだろうか? 更に
クラークソンは今季ドイツのビッグスポンサーを獲得し、資金にも比較的余裕ができ
た。ビッグネームをサプライズで獲得してくることもあり得ないことではない。
しかしながら今のところ、クラークソンのドライバー交渉についての情報は何一つ漏
れ聞こえてこない。チーム組織の再編でそれどころではないのかもしれないし、ある
いはデヴィッズ監督と新マネージャー、スティラノ・ドミニコルのこと、水面下で何
らか動いているのかもしれない。またいくらなんでも年明けまでに体制を固めないこ
とには、来季へ向けて万全の準備もできない。クラークソンについては何らかサプラ
イズを用意している可能性がある。彼らは既に来季の陣容を固めているのか、それと
も・・・
クラークソンはチーム全体がポジティブな改革に向けて動いており、バタバタしなが
らもやや余裕が感じられる。一方のマーキュリーはここに来てやや焦りの色が見える。
有力2チームの2ndドライバー探しは、各々やや状況を異にする展開だ。今後の展
開を注視して行こう。


◇引退の噂を一蹴!! ラ・ポルタ「来季もSLOで走る」!!

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今シーズン限りでの引退がささやかれていたラ・ポルタだが、
来季もSLOで走ることが決定。老け込むにはまだ早い。

一部では今季限りでレーシングドライバーを引退し、SLOの指揮官に就任するとの
噂が流れていたアイウトン・フィリップス・ラ・ポルタが、来季もSOLで走ること
が明らかになった。SLOがカナダGPウィークの木曜日に会見を行い、ラ・ポルタ
と3rdシーズン単年でのドライバー契約を結んだことを、来季チーム監督にハウル
モーゼル氏が就任することと合わせて発表した。
来季36歳を迎えるベテランのラ・ポルタは今季第13戦アゼルバイジャンでNeX
X初優勝をあげたが、それまでの12戦はやや苦戦が続き今季限りで引退するのでは
ないかという噂が流れていた。またヨーロッパラウンド終了とともにチーム監督のヒ
カルド・ロシェットが今季限りでチームを去ることが発表されてからは、引退したラ
・ポルタがその地位を引き継ぐと見られていた。しかし、カナダGP前の会見でラ・
ポルタは来季へ向けての意気込みを、プレス陣を前に力強く語った。
「私は本当に幸せものだね、この年齢で新たなカテゴリに挑戦し、初優勝をあげられ
て、来季の去就についても皆がこんなに関心を持ってくれている。確かにこのカテゴ
リは簡単なものではなかったよ、特に今季は我慢が必要だった。しかしその甲斐あっ
てか第13戦では初優勝できた。あの勝利はチームのみんなで勝ち取ったものだよ。
とても気持ちが良かった。私はまだまだレースへのモチベーションを失ってはいない
し、私の経験をもっとチームに還元できると思っている。だからまだ引退はしないよ。
SLOの監督にって噂もあったみたいだけど、将来的にそうなれればいいね。それは
最高にファンタスティックな未来図だ。」とラ・ポルタは話し、自身のモチベーショ
ンはまだまだ衰えていないことをアピールした。
SLOは来季も今季と同様のドライバー陣容で臨むことが発表され、噂されていたピ
エトロ・モンテローザの復帰説やマルドゥークのリザーブドライバーのリカルド・イ
セクソンの移籍説は実現しなかった。しかし、来季36歳を迎えるラ・ポルタは未だ
SLOにとって欠くことのできない存在である。来季改めてタイトル獲りを狙う同い
年のラムダと共にこの世代にはまだまだNeXXを引っ張って行ってもらいたい。ベ
テランが元気なカテゴリは若手も活気づく、それは世代間闘争が激化するからだ。ま
たラ・ポルタは明るく人懐っこい人柄で、パドックでの人気も高い。彼には来季だけ
とは言わずまだまだ現役でいてもらいたい。


エヴァー・グラハム離脱のバーンズ、アブラモビッチと契約
                    シート喪失危機は回避も待遇は・・・?
  
来季の去就が注目されていた大物ドライバーの一人アレン・バーンズが、来季アブラ
もビッチと単年契約を結んだことが明らかとなった。アブラモビッチチ―ムは最終戦
アメリカGPの土曜フリー走行前に、パドックで会見を開き発表した。
バーンズは元F1王者で通算12勝をあげた大物ドライバー。他ラムダ、ファング、
セプターのF1王者経験者と共に初年度からNeXXに参戦し『F1四天王』と呼ば
れた。しかし初年度は開幕から数戦凡走が続き、後半復調したものの未勝利に終わっ
た。変わって今季は前半戦でコンスタントに入賞を重ねたが、逆に後半に入って失速。
結局参戦2年間通して未勝利に終わり、周囲の期待を大きく裏切ったバーンスは今季
限りでエヴァー・グラハムからの離脱が決定、来季の去就が注目されていた。
アブラモビッチのチームマネージャー、ニコライ・ボルコフは「アレンのような偉大
な経歴を持つドライバーを迎えられて光栄だ。NeXXでは少々苦労したようだが、
我々は彼の実績を充分理解しているし高く評価してもいる。彼のような王者のメンタ
リティを持つドライバーがチームには必要だった。我々は今季かなりの苦戦を強いら
れた。今季から開発体制が大幅に変わったのが原因だが、この状況は来季も続くだろ
う。今は辛抱のしどころだ。そんなチームに経験値の高いベテランが加入するのは喜
ばしいことだ。我々は共に手を取り合い、チームを強化するための計画を共有する。
チームには既に”ブル”(チャップマン)がいる為見た目には2ndシートとなるが
我々は事実上のチームリーダーとして期待しているよ。」とバーンズに対する期待を
示した。
一方のバーンズは「まずは私に手を差し伸べてくれたアブラモビッチチームに感謝し
たい。来季の行き先がなくて困っていたところだったんだ(笑)。来季彼らと仕事が
できることを私も光栄に思うよ。さて、このNeXXというカテゴリはF1に負けず
劣らず難しい。各チームの戦力は非常に拮抗しているし、ひとつの判断ミスが命取り
になる。F1と同様に停滞は後退と同義だ、そういった意味でアブラモビッチチーム
の今季の停滞は難しい状況だったと思うが、私は将来の飛躍の為にあえて今季の停滞
を受容したチームを称賛したい。そして来季からはそのチームの計画に私が加われる
こともたいへん嬉しく思う。それだけ私の実力と経験値を買ってくれているというこ
とだからね。私もこのNeXXに来てからは決して満足のいく成績は残せていないし
周囲の期待を裏切っているのも承知している。去年はキミらにずいぶんと叩かれたか
らね(笑)。しかしNeXXの主役は既にバトラーやラスムッセンを中心とした若者
だよ、往生際の悪いニコ(ラムダ)あたりが頑張っちゃいるが(笑)私はこのアブラ
モビッチチームを強くするために来季全力を注ぐ。」と、ところどころジョークを交
えながら来季への抱負を語った。
ひとまず去就が未定であった大物の来季のシートが決まったのは喜ばしいことだが、
会見に参加した関係者やプレスからはバーンズの世代闘争に屈したともとれる発言を
残念がる声が多く上がった。「彼がチームにもたらす”経験”という無形の財産の価
値は確かに大きいが、それ以上の”ポイント”をチームに持ち帰る気はもう彼にはな
いようだ。」、「彼はは”レイジング・ブル”(チャップマン)に牙を折られてしま
ったのか。」などと口々にバーンズの消極的発言に苦言を呈した。
しかし一方では「彼は時が来れば覚醒するさ、チームオーダーを無視してチームメイ
トに噛みついた”あの時”のようにね。」と、バーンズの反逆に期待する声もある。
バーンズはF1でウ〇リアムズチームに所属した際、チームオーダーを無視してチー
ムメイトのオルティス・ライトマンとバトルを繰り広げた過去がある。彼が王座を獲
得した翌年のことだ。来季34歳となるバーンズに、まだ反骨精神は残っているだろ
うか。このままNeAXX未勝利で終わるにはあまりにも寂しすぎる、来季のバーン
ズの奮起に期待したいところだ。


◇セプター、カジワラ、カブロン・・・ いまだ来季去就が
                      決まらないシート喪失組の来季は?
              
来季の去就が注目された大物バーンズのシートが決定した陰で、未だ来季の行く先が
決まらないドライバーもいる。ちなみに現時点で今季限りでレギュラーシートを失い
来季のレギュラーシートが決まっていないドライバーは以下の通りだ。

J.S.カジワラ → 去就未定
F.デ・ランジェリス → リザーブドライバー降格(アブラモビッチ
A.カブロン → 去就未定
A.ティルクム → 去就未定
A.ファーシマス → 去就未定
J.セプター → 去就未定
D.リンドホルム → リザーブドライバー降格(アントネッティ

上記7名のうち、現所属チームのリザーブに格下げとなったデ・ランジェリスとリン
ドホルム以外の5人は、まだ来季の去就がはっきりとしていない。中には元F1王者
でNeXXで3勝をあげたセプターの名前も含まれている。彼らの来季のシートはど
うなるのだろうか?

ジョー・S・カジワラ
初年度から2年間トライアンフの2ndドライバーとして、日向と共にチームを支え
た。日系2世である彼だがメンタリティは”日本人”そのもの。チームマネージャー
真田幸治氏(来季から監督に昇格)とはF1時代も同じチームで走っていたことから
チームへの溶け込みも早かった。しかしその実績は常に日向の圧倒的なパフォーマン
スと比較され、結局今季を最後にチームから離脱が決定した。今後の去就は未だ不明。
しかしNeXXやF1からのオファーはなく、母国アメリカのインディカーからも声
はかかっていない。現状は何らかのスポーツカー、もしくは日本のスーパーフォーミ
ュラやスーパーGTへの移籍が噂されている。

アレンザンダー・カブロン
イギリスとタイの二つの国籍を持つ彼は、初年度から2シーズンに渡ってプルトンチ
ームに所属したが、チームはすでにカブロンとの来季契約を結ばない旨を発表してい
る。彼は元々ピットブルF1チームの育成プログラム出身だが、現在ピットブルとの
関係は解消されておりF1やNeXXのリザーブ含めピットブル移籍はないと考えて
いい。インディカー移籍の噂もなく、聞こえているのはDTMスーパーGTといっ
たスポーツカーカテゴリへの移籍の噂だ。昨季光る速さを見せたものの、今季は同僚
のヴィックスに水をあけられてしまい、他のNeXXチームからも声はかかっていな
い状況だ。2ndドライバー探しに苦心するマーキュリー、ファーシマスを放出した
シュトロゼックあたりが手を差し伸べてはくれないだろうか。流出してしまうには惜
しい才能だ。

アリエル・ティルクム
今季途中、第12戦ルーマニアGPを最後にクラークソンとの契約を解除したティル
クム。クラークソン側としては成績不振、一方のティルクム側としてはチームのサポ
ート不足を主張。ティルクムの側からチームに契約解除を申し入れたというが、ティ
ルクムのその後のビジョンについてはどこからも伝わってこない。ティルクムもカブ
ロン同様ピットブルのF1ドライバー育成プログラム出身だが、彼も既にピットブル
との関係は切れており今後の進路が見えない。一説にはスーパーフォーミュラに参戦
するとか、インディの中堅チームからオファーが来ているとか言われてはいるが、本
人が目立って行動に移していないため本当のところはどうなのかわからない状況だ。
NeXXではいくつかのチームが獲得候補に入れていたようだが、各チームとも続々
と来季の陣容が決定。チャイナドラゴンやシュトロゼックが接触したと言われている
が果たして・・・

アレオ・ファーシマス
2シーズンに渡ってロムニ・ダキアで戦ってきたファーシマスは、シュトロゼックの
来季の構想には入っていない。ハイネル氏はゲラの残留を軸に、2ndシートには下
位フォーミュラで実績のある若手を起用するつもりのようだ。NeXX以前のキャリ
アでタイトル獲得歴のないルクセンブルク人には辛いところだ。しかも昨季はペナル
ティが多くチームから契約条項にチーム独自の罰則規定を盛り込まれてしまい、”大
人しくなった”今季の走りには昨季のようなキレがなくなった。それでも予選では度
々シングルグリッドを確保し、その”一発の速さ”を評価する関係者は少なくない。
しかし着々と空きシートが埋まっていく中で、NeXX内の移籍先は限られてきてい
る。可能性があるとすればチャイナドラゴンか、ガジャックということになるだろう。
NeXXきっての”暴れん坊”がフェードアウト、なんてことにはなってほしくない
が・・・

ジョリー・セプター
未だ来季の去就が不透明なドライバーの中で、最も心配されているのがこの人だろう。
F1では”跳ね馬”でタイトルを獲得し、NeXXでは2シーズンで3勝をあげたセ
プターも未だ来季去就が決まっていない。2シーズン所属したチャイナドラゴンチー
ムは無情にも、セプターと3季目の契約を結ばない旨を決めた。セプターのチームへ
の貢献度を考えれば疑問を抱かざるを得ない決断だが、チャイナドラゴンが契約更新
を見送ったのは高額なサラリーが理由だと言われている。しかしこれだけの実績があ
れば財力のあるチームからお呼びがかかりそうなものだが、あいにく有力チームのシ
ートは殆ど埋まっている。マーキュリーという線もあるが、バトラーを脅かしかねな
い実力者をマーキュリーは嫌うだろう。実際マーキュリーはリサーチすらしていない
らしい。ここ数年はF1でも活発な移籍劇はなく、F1復帰の可能性も低い。スポー
ツカーなどのカテゴリからは引く手あまたのようだが、これだけの名手がフォーミュ
ラからフェードアウトしてゆくのは忍びない。『リトルベアー』はこのままNeXX
からもトップフォーミュラからも姿を消してしまうのだろうか?

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2シーズンで3勝をあげたセプター(写真左)の来季シートは未だ決まらず。高額なサラリー
がネックと言われるが獲得するチームは現れるか? またNeXXの名物ドライバー”暴れん
坊”ファーシマスも去就未定。来季のシート確保なるか?

いよいよ年末も近くなり、各チームのシートも続々と埋まって空きも少なくなってい
るが、上記5名のドライバーの来季の行く先はまだ決まっていない。特にこの2シー
ズンで3勝をあげているセプターがフリーランスの状態になってしまうのは、やや信
じがたい状況だ。今のところF1復帰といった話も聞こえていないが、このままでは
F1関係者との接触もありうる。左力者の宙ぶらりんなこの状況はNeXXとしては
憂慮すべき事態だが・・・ 初年度から2シーズンNeXXの文字通り創成期を彩っ
たドライバー達は、はたして来季も元気な笑顔を見せてくれるのだろうか。それとも
・・・・・


今季も激戦のうちに幕を閉じたNeXXの2ndシーズン。バトラーのドライバーズ
タイトル連覇、そしてチームタイトルはピットブルが連覇という形で終わったが、こ
のオフの動きは現在のパワーバランスを崩す可能性を秘めている。
ドライバーの移籍が活発化し、エンジンを変更するチームも現れた。また首脳人事含
め組織改革を試みるチームちらほら。これまでの2シーズンはドライバー、チームそ
れぞれ連覇という形で終わっているが、このオフの様子から見ると来季の選手権の様
相はまた変わってくるだろう。今から来季の開幕が待ちきれない!
今季は年末にオフシーズン号をリリースするが、その時には今よりもっと来季の様相
がはっきりとしてくるだろう。次号『オフシーズン号』のリリースをお楽しみに!!

 

 

 

 

Formula NeXXtream 2ndシーズン・18

『Formula NeXXtream 2nd』
□第18戦 アメリカ ロングビーチ市街地サーキット

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 1周:3.17km
 特性:「高速」「市街地」
 ターン数:24(96周)

2ndシーズンのチャンピオンシップもあと1戦となった。泣いても笑ってもこれ
が最後、完全決着戦の舞台は今季もアメリ東海岸カリフォルニア州ロングビー
チだ。前戦カナダではラムダが独走で今季4勝目、これで第16戦日本GP終了時
点でバトラーが僅か1ポイントリードしていたランキングは、ラムダの9ポイント
リードへと変わった。昨季はバトラーの圧倒的有利な状況で最終戦を迎えたが、今
季は変わってラムダ優勢。果たして今季はどちらがタイトルを手にするだろうか。
舞台となるロングビーチは1976~83年までF1が開催され、それ以降は常に
インディカーシリーズのカレンダーに名を連ねる伝統の市街地コースだ。しかし来
季からアメリカGPはインディアナポリスでの開催が決まっており、NeXXの開
催はひとまずこれが最後ととなる。
古くから重工業と観光業で栄え若者文化の発信地として知られるこの街は、アメリ
カンモータースポーツとの関わりが深く、マリーナベイに近くてアップダウンの多
い地形からも『西海岸のモナコ』と呼ばれた。コースはロングビーチの海にほど近
い『パイク』と呼ばれるエリアにある、ロングビーチコンベンションセンター
ショッピングモールを囲む形で敷設されており、NeXXではインディカーと同様
のレイアウトを使用する。1周3.167kmのショートトラックは11のコーナ
ーで構成されている。大きな幹線道路を使用した緩やかに右に弧を描くホームスト
レート、コントロールラインはカーブの前半に設置される。噴水のある花壇を回り
込むように設置されたクランク型シケインのターン2、3や、下りながら左にクリ
アしてゆくターン10などテクニカルな難所はあるが、平均速度域は高くどちらか
というと高速ストリートコースの部類に入る。またアメリカの市街地特有の荒れた
路面が、このコースを難所たらしめている。
昨季はバトラーの20ポイントリードで迎えた最終戦、今季は逆にラムダの9ポイ
ントリードで迎えるがバトラーvsラムダのタイトル争いの図式は変わらなかった。
レースは96周、その果てに待っているのはバトラーの連覇かラムダの初戴冠か?
レースは想像以上に白熱した展開となった。

<予選>
予選結果は以下の通り↓↓↓

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セッション別リザルト↓↓↓

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予選落ち(DNQ)↓↓↓

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PP:アレックス・バトラー(マーキュリー)
ラムダの9ポイントリードという、圧倒的ラムダリードの条件で迎えた予選だった
がそこでPPを獲得したのはバトラーだった。雲の隙間から所々青空が覗くような
うすぐもりの予選、圧倒的不利な状況でもバトラーはあきらめず全開アタックを見
せた。Q3の最後にタイムを出したラムダは、結局直前にトップタイムをマークし
たバトラーのタイムを抜けなかった。これでポイントリーダーのラムダのリードは
6ポイントと縮まり、ラムダは2番手からのスタートとなった。そして3番手には
ボナパルトがつけた。これまで予選ではそれほどのインパクトを残してこなかった
ボナパルトだが、ラムダの援護のため2列目を確保。ピットブルは総力戦の構えだ。
4番手には後半戦絶不調をかこったファング、得意の高速市街地で速さを見せた。
5番手には地元アメリカのロッソ、6番手ゲラと今季の選手権を盛り上げた伏兵が
サードローにつける。そして7番手には地元の雄カジワラ、8番手にはチャップマ
ンがつけた。9番手には終盤戦に調子を上げてきた宋、10番手には同じく後半戦
復調してきたリンドホルムがつけた。
一方でチームタイトル3位のノルディックはハイデンフェルド12番手、ラムスッ
セン17番手と2台とも中団以降に沈む。さらに前戦4位入賞、市街地マイスター
の日向も今回は15番手と中団に埋もれた。同じく市街地が得意なカレッジも18
番手に沈む、来季移籍するアントネッティの地元で良いところを見せたかったが、
カレッジも後方に沈む。そして一番の問題はマルケーナスが22番手に沈んだこと
だ。ピットブルに36ポイント差をつけられてはいるが、マーキュリーにもまだま
だわずかだが逆転でのチームタイトル獲得の可能性があった。しかしマルケーナス
が後方に沈んだことで、事実上マーキュリーのタイトル獲得の可能性はほぼなくな
ってしまった。
終戦の予選落ちはヴィックス、カブロン、セプター、デ・ランジェリスの4台。
プルトンの2台はカナダに続いて2戦連続2台とも予選落ちで今季ラストを飾れず。
カムイエンジンの載る来季に期待したい。そして今季2勝をあげたセプターも予選
落ちを喫した。2勝をあげながらも今季3度目の予選落ちとなったセプターは、ま
だ来季のシートが決まっていない。果たして来季の去就はどうなるのだろうか。


<決勝レース>
決勝は前戦カナダ同様、抜けるような青空のもと行われた。12月のカリフォルニ
アは温暖で過ごしやすい。雨だけが心配されたが快晴でのレースとなった。荒れた
路面の市街地コースだが、コーナー数も少なくタイヤへの負担はそれほど大きいコ
ースではない。よってほとんどのドライバーがソフトタイヤをチョイスした。ヨコ
スカ勢の中には例によってオールソフト作戦を企図している者もいたようだ。

<タイヤチョイス>
◆HARD
<ヴァシュロン>      <ヨコスカ>
M.ポルボローネ
A.ファーシマス
J.グーデリアン
J.カレッジ

   
◆SOFT
<ヴァシュロン>      <ヨコスカ>
N.ラムダ         A.バーンズ 
M.ボナパルト       J.バロン
A.バトラー        日向 俊郎 
K.マルケーナス     J.カジワラ 
S.シエナ         J.チャップマン                       D.ファング
Z.ゲラ          D.ファング
K.ラスムッセン      L.ソリス
M.ハイデンフェルド    宋 昇龍 
A.ラ・ポルタ          
A.フィリオ              
A.ロッソ       
D.リンドホルム        
B.リヴィエール  
C.タンデイ 

=ユーズドタイヤ


◆王座決定条件  

 ラムダ   バトラー   ポイント差
 191   185      6
※バトラーには第18戦PPポイント加算済み

・順位別獲得可能ポイント

       <ラムダ>        <バトラー>
 優勝    191+25=216   185+25=210
 2位    191+18=209   185+18=203
 3位    191+15=206   185+15=200
 4位    191+12=203   185+12=197
 5位    191+10=201   185+10=195
 6位    191+ 8=199   185+ 8=193
 7位    191+ 6=197   185+ 6=191
 8位    191+ 4=195   185+ 4=189
 9位    191+ 2=193   185+ 2=187
10位    191+ 1=192   185+ 1=186

※ファステストラップ獲得で2ポイント加算

ラムダ → 優勝なら文句なしで王座獲得。また何位であれラムダがバトラーに先
      着すれば文句なしで王座はラムダのものとなる。
      しかしラムダが2位でバトラーに優勝された場合、バトラーに1ポイ
      ント逆転されてしまうためこのケースでラムダが王座を獲得するため
      にはファステストラップの獲得が絶対条件となる。
      ラムダがノーポイントの場合はバトラーが8位以下であればラムダの
      王座は確定、7位の場合バトラーがFLを獲得していればバトラーの
      逆転王座となる。

バトラー→ 基本的にラムダより前でフィニッシュすることが絶対条件で、優勝以
      外だと大きく順位差をつけていなければ逆転王座は望めない。バトラ
      ーが2位でラムダが5位、のように最低3つの順位差をつけてフィニ
      ッシュしたいところだ。
      また取れるポイントは全て取りたいバトラー、逆転王座の為にはFL
      獲得は絶対条件と言える。

※条件によっては同ポイントで並ぶ可能性もあるが、バトラーは優勝回数でラムダ
 に負けているため、同点の場合はラムダが王座獲得となる。
 (ラムダ4勝、バトラー3勝)


レースは大きな混乱なくスタート。グリッド順のままトップからバトラー、ラムダ
ボナパルト、ファングの隊列でターン1へなだれ込む。中団では8番手スタートの
チャップマンが、カジワラをかわして7番手に浮上。後方でもいくつかの順位変動
はあるものの大きな動きなく進んでゆく。
バトラーからファングの前4台のペースは速い、しかし地元で張り切るロッソがペ
ースアップ。開幕戦以来の優勝を狙いファング、ボナパルトを追い落とし3番手に
浮上する。

6番手のゲラ以降はついて行けずやや離される。スタートでチャップマンに先行さ
れたカジワラが、チャップマンを抜き返し大喝采。チャップマンはどこかでミスが
あったのか宋、リンドホルムにもかわされ10番手まで後退してしまう。中団は相
変わらず大混乱だ。さらに後方では事故発生。ターン8の侵入でオーバーテイク
しかけたカレッジにフィリオが接触。2台に大きなダメージはなかったものの、そ
れぞれポジションを落としてしまう。

そしてここでなんと快調にトップを征くバトラーにトラブル発生。左リアタイヤ
違和感を感じたバトラーのペースがガクっと落ちる。どうやらスローパンクチャの
ようだ。バトラーの異変を察知したラムダはマシンを左右に振ってプレッシャーを
かけるも、バトラーは巧みなブロックラインで防ぎきる。そしてバトラーは4ター
ン目、予定外のピットストップを強いられるのだ。

新品ソフトでスタートしたバトラーは、ユーズドハードに繋ぎレース復帰。ファン
グの後ろ5番手でコースに戻る。逆転王座の為には少なくともラムダに先着しなけ
ればならないバトラー、しかしここからの挽回は容易ではない。
一方トップに立ったラムダは快調に飛ばす。2番手に上がったロッソはややペース
ダウン。後ろにまわったボナパルトがしきりに前をうかがい、一瞬のスキを突いた
ボナパルトがポジションを奪い返す。これでピットブルは1-2体制だ。

中段もなかなかの大混戦、宋、ゲラ、リンドホルムの熾烈な6番手争いが展開され
る。その後方でSLOのマシンが1台ピットインしてきた。サントス・フィリオだ
った。サントス・フィリオは前のターンにカレッジと接触、マシンにダメージはな
かったものの、右フロントタイヤの内圧が低下していた。更に先ほどの接触で10
秒ストップのペナルティも課せられており、タイヤ交換と合わせてペナルティを消
化。ハードタイヤへ交換しコースへ出てゆく。
そしてレースは5ターン目にアクシデント発生、地元アメリカのカジワラがマシン
後方から派手に白煙を上げマシンを止めてしまった。エンジンブローで最終戦を飾
れなかったカジワラはコースの片隅にマシンを止めリタイヤ、このレース最初のセ
ーフティカー出動となる。

★5ターン終了時のトップ10
 1.ニコ・ラムダ
 2.ミシェル・ボナパルト
 3.アレンザンダー・ロッソ
 4.アレックス・バトラー
 5.デイヴィス・ファング
 6.ゾルタン・ゲラ
 7.宋 昇龍
 8.デイヴィス・リンドホルム
 9.ジョンブル・チャップマン
10.セドリック・タンデイ

ピットオープンとなった7ターン目、トップのラムダがこのタイミングでピットイ
ン。ユーズドハードに繋いで5番手でコース復帰。そしてピットブルはボナパルト
をバトラーに対する「防壁」としてステイアウトさせた。ボナパルトもラムダ同様
ソフトタイヤでスタート、本来ならばボナパルトもタイヤ交換のタイミングだが、
チームは彼の驚異的なタイヤマネジメント能力を活かす作戦に出た。

しかしリスタートとなった8ターン目、ピットブルの作戦はまず一つバトラーに打
ち破られる。バトラーが完璧なリスタートを決め、ボナパルトの前に出てしまった
のだ。ピットブル陣営はバトラーのリスタート時の動きに問題があったとし、スチ
ュワードに抗議したが却下された。ボナパルトのリスタートが特別悪かったわけで
はない。要するにピットブル陣営が抗議せざるを得ないほど、バトラーが完璧なリ
スタートを決めたのだった。

こうなるとボナパルトがピットインを引っ張る意味ももはやないかと思われたが、
ボナパルトはまだ入らない。ピットブルがボナパルトの1回目のピットストップを
遅らせた理由は、もう一つあった。2回のストップを終わらせたラストスティント
でソフトをフルグリップで使わせるため、1回目のピットストップを遅らせていた
のだった。ピットブルは文字通り手を変え品を変えの総力戦を企図していた。

トップグループではファングが9ターン目にピットイン、ユーズドハードへ繋いで
コースへ出ていた。そして1回目のストップを遅らせたボナパルトは10ターン目
にピットイン。こちらもユーズドハードへと繋いでゆくが、ピットブルのクルーが
やや作業に手間取り、ボナパルトはこれでいったん5番手まで後退する。最初のリ
スタート時の作戦を失敗したピットブル、綿密に見えた作戦にこのあたりから徐々
にほころびが生じ始める。

上位グループが全員ピットインしたことで、レースはトップバトラー、2番手ラム
ダの展開に戻る。タイヤはともにユーズドハード、しかしどうやらバトラーの方が
ユーズドハードとの相性が良かったようでバトラーは快調にラムダの前をゆく。逆
にタイヤに熱を入れるのにやや苦労したラムダ、ペースが思うように上がらず後ろ
のファングに突かれるようになる。
しかし後ろでは5番手に下がったボナパルトがペースアップ、ゲラをかわして4番
手に浮上していたボナパルトはすぐにファングにも追いつき、そのままオーバーテ
イクしてしまった。これでボナパルトは3位に復帰、隊列は再びバトラーをピット
ブルの2台が追う形となる。

そして11ターン目、後方で大きな多重事故が発生する。まずシエナとサントス・
フィリオの19番手争いで、サントス・フィリオの仕掛けをブロックしたシエナ
接触。2台が絡み合ってストップしていたところにマルケーナスがグーデリアン
オーバーテイクしようと接近。接触した2台にさらに接触した2台が突っ込むこと
になり、このレース2度目のセーフティカー出動となった。
2セット目のユーズドハードが好感触でラムダを引き離しにかかっていたバトラー
のリードが、これでリセットされる形になったマーキュリー。しかも事故に絡んだ
のがマルケーナスとあれば、マーキュリー首脳陣は頭を抱えるばかりだ。これでタ
イトル争いは完全にバトラーvsピットブル勢の図式となった。マルケーナスは結
局このレース、最後まで一人”蚊帳の外”であっただけでなく、バトラーの快走も
台無しにしてしまった。

ピットオープンの13ターン目、4ターン目に交換したバトラーのユーズドハード
はやや限界に近かったが、バトラーはステイアウト。残りのターン数を考えラスト
スティントをソフトに繋ぐかハードにするか選択のしどころだったが、このタイミ
ングでステイアウトしたことにより、バトラーは最後のスティントをソフトに繋ぐ
可能性が出てきた。それにしてもレースの残りはまだ10ターン以上。今のタイヤ
をもたせられるかも微妙なところ。バトラーは賭けに出た。

14ターン目、2度目のリスタートでは大きな混乱はなし。6番手のゲラがロケッ
トスタートを決め4番手まで浮上した。15ターン目に入ってバトラーのタイヤは
完全に限界を迎えていた。思うようにペースが上げられなくなっていたが、ラムダ
のタイヤも”1段目のガケ”が来ていた。ペースの上がらないラムダを守るように
ボナパルトはラムダの後ろにぴったりついて走る。4番手ゲラがボナパルトに接近
してくるもボナパルトは行かせない。バトラーとラムダの差も徐々に詰まりはじめ
2番手以降がやや数珠繋ぎになり始めた。

★15ターン終了時のトップ10
 1.アレックス・バトラー 
 2.ニコ・ラムダ
 3.ミシェル・ボナパルト
 4.ゾルタン・ゲラ
 5.デイヴィス・ファング
 6.アレンザンダー・ロッソ
 7.ジョンブル・チャップマン
 8.ジェストン・バロン
 9.宋 昇龍
10.日向 俊郎

16ターン目、トップのバトラーと2番手ラムダの差はマージン1。しかしお互い
タイヤは限界に近い。となればどっちが先に入るか我慢比べの様相だが、バトラー
の方が状況的に厳しいのは明らか。はたしてどう動く?
トップ3に続く後続にトラブル発生。4番手を走行していたゲラが急に大きくペー
スダウンした。ギアボックスからオイル漏れの兆候があり、マシンの後ろから白煙
も出ている。これはどこまでもつか・・・
そして後方のチャップマンも、DRSが開かないというトラブルに見舞われていた。
さらに後方ではラ・ポルタとリンドホルムが接触。互いに無傷ではあったがポジシ
ョンを落としてしまった。オイル漏れトラブルのゲラは次ターンにリタイヤした。

17ターン、ついにバトラーが最後のピットイン。レースは残り8ターンだが、バ
トラーは新品ソフトタイヤをチョイス。2セット目のユーズドハードを実に13タ
ーンもたせてのタイヤ交換だった。なんとか最後のスティントをソフトに繋いだバ
トラーだが、しかしピットブル勢はこのあとソフトに交換する。最後までフルグリ
ップで戦えるピットブルの方が終盤は有利だ。ピットブル勢がタイヤ交換するまで
の何ターンかがバトラーの勝負所だ。
バトラーのこの状況に対し、マーキュリーピットも快心の作業でバトラーをコース
へ送り出す。バトラーのピットアウトと時を同じくしてホームストレートにはボナ
パルトが戻ってくる。バトラーとしてはここでボナパルトの前に出たかったが、ボ
ナパルトがバトラーを制する。ボナパルト会心のブロック、バトラーを3番手に封
じ込めることに成功した。ラムダはこのあとタイヤ交換。それまでボナパルトはバ
トラーを抑えきれるか?

18ターン目、ラムダはもう1ターンのステイアウトを選択する。ピットブルの作
戦はこうだ。トップのラムダのタイヤはすでに限界だが、マージン1つ分進むこと
ができボナパルトがそれについて行ければ、このターンでバトラーはフルグリップ
のソフトタイヤを追抜きではなく、ボナパルトに追いつくために使わざるを得ない。
バトラーがフルグリップでバトルできる機会を削りたいというのがピットブルの作
戦だった。しかしこのターンラムダはペースを上げられず・・・
かたやバトラーはむやみにバトルするリスクを鑑み、このターンは動かず。最後の
新品ソフトのフルグリップに賭けたいラムダだが、どうも雲行きが怪しくなってき
た。

後方では中団勢が続々ピットイン。ファング、チャップマン、そして単独スピンを
喫しポジションを落としていたロッソも、ソフトタイヤで最後のスティントを戦う。
そして19ターン目、ついにラムダがピットイン、こちらも当然ソフトタイヤでコ
ースに出てゆく。作業時間は無難なものだったが、かたやバトラー側は快心の作業
でコースに出ている。ピットアウト後の位置関係は果たしてどうか?

トップに立ったボナパルトは可能な限りプッシュ。バトラーが離されずについてゆ
くが、ボナパルトはとうに限界を迎えていた2セット目のユーズドハードでバトラ
ーを抑え込み、その間に3番手でコース復帰したラムダは猛然と追い上げてくる。
20ターンに入ってもボナパルトはまだピットに入らない。ピットブル陣営はラム
ダがバトラーの尻尾を捉えられる位置に来るまで、ボナパルトにバトラーを抑え込
ませる作戦だ。
しかしボナパルトのユーズドハードは既に11ターンを経過、かたや後ろのバトラ
ーはまだフルグリップ状態を維持している新品ソフトタイヤ。ボナパルトのタイヤ
は驚異的なもちだが20ターン目についに力尽きた。ついにここでバトラーがボナ
パルトの前に出てトップに立った。レースは残り4ターンだ。

21ターン目、前が空いたバトラーは渾身のラップをたたき出す。バトラーのソフ
トタイヤのフルグリップはこのターンが最後。最後の力を振り絞ってピットブル勢
とのマージンを築く。そしてボナパルトはついにここでピットイン。驚異的なタイ
ヤマネジメントを見せたボナパルトも、最後はソフトに交換する。
フルグリップのラムダは懸命にバトラーを追うが、前が空いたバトラーのペースは
なかなか落ちない。このままいけばタイトルは2年連続バトラーのものだが、果た
してどうなる?

22ターン以降、後続4番手以降はポジションキープのため大きく動かず。依然と
してトップはバトラー、ラムダは懸命に追うがなかなか差は詰まらない。そしてこ
こにきてラムダは、ややエンジンのパワーダウンを感じていた。
ラムダは結局終盤、ECUのトラブルでペースを上げられず。このままバトラーが
優勝しても、ファステストラップを獲得していれば211vs210でラムダが1
ポイント上回っての王座奪還となったが、ラムダはこの時点でレースファステスト
となっていたバトラーのラップタイムを上回ることもできず。

レースは序盤のタイヤトラブルを跳ね返し、土壇場の驚異的な速さでバトラーが優
勝。バトラーと終始激しいバトルを繰り広げたピットブル勢はラムダ2位、ボナパ
ルト3位と続いた。4位には久々に速さを見せつけたファング、そしてスピンでポ
ジションを落としたロッソが見事なリカバリーで5位に入賞した。
6位には今季5度目、北米ラウンド連続入賞の宋、そして17番手スタートのラス
ムッセンが7位入賞。8位には終盤ミスファイアに見舞われながら走り切った日向
9位は20番手スタートのビッゲスト・ムーバー、バロンが入った。そして10位
にはハイデンフェルド、ノルディックは最終戦なんとかW入賞を果たした。


最終リザルト↓↓↓

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Winner:アレックス・バトラー(マーキュリー)

ラップチャート↓↓↓

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ドライバーズランキング↓↓↓

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チーム・マニュファクチャラーランキング↓↓↓

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これにて全日程を終了したNeXX2ndシーズン、ドライバーズタイトルの行方
はこれで2年連続バトラーのものと決した。
終戦を迎えた時点で9ポイントあったラムダとの差だが、バトラーは驚異的な粘
りで王座を自身のもとへ手繰り寄せていった。予選でのPP獲得で3ポイント縮め、
そしてレースでは完全にピットブル勢を抑え込み優勝で25ポイントを獲得。さら
にはファステストラップをマークし2ポイントを獲得するという念の入れよう。
今季からFLポイントが付与されるようになったがPP、優勝、FLと完全優勝
果たした初のドライバーとなり終わってみればバトラー212ポイント、ラムダ2
09ポイントとわずか3ポイントラムダを上回ったバトラー。これ以上ない劇的な
逆転戴冠劇だった。ちなみにFLをラムダに取られていたら、ラムダ211vsバ
トラー210と、1点差で王座はラムダのものとなっていた。
昨季は勝利数でラムダに軍配が上がったが(ラムダ4勝、バトラー3勝)、今季は
共に4勝をあげ実力は昨年以上に伯仲。そんな中土壇場の驚異的な粘りが、今季の
明暗を分けた。

チームタイトルは305ポイントを上げたピットブルが堂々の連覇達成。ポイント
数も300の大台を超えてきた。最終戦を見てもわかる通り、しっかりと計算でき
るドライバーを二人揃え、継続的に好パフォーマンスを出せる状態を維持する。そ
のマネジメント能力あってこその戴冠と言えるだろう。シーズン途中でのドライバ
ー交代もあったが、あのままマイネを起用していてもタイトルは獲れたのではない
か? しかしタイトルを狙う体制に妥協を許さなかったからこそ、300ポイント
オーバーでの戴冠を果たせたのだろう。そこをいけばマーキュリーは、シーズン途
中からマルケーナスをやや蚊帳の外に置きがちだったように思う。
マーキュリーはもともとF1の中堅チームが前身で、総合的に強い”チーム”を組
織するためのノウハウがやや不足している感は否めない。来季もチームタイトをも
狙うのであれば、それが強化ポイントと言えるだろう。


初年度同様最終戦まで目の離せない白熱の展開となった、2ndシーズンのNeX
X世界選手権。ドライバーズタイトルはバトラーの2連覇、チームタイトルはピッ
トップルの2連覇に終わったが、今季は3つの新参チームが、ドライバーも新しい
メンツが加わって選手権は初年度以上に白熱したものとなった。3rdシーズンと
なる来季は、ドライバーの入れ替わりもありさらに白熱した展開になるだろう。さ
らに来季は来る4thシーズンへ向け、現行エンジンフォーマット最後の年となる
とともに、現行シャシー最後の年でもある。
3rdシーズンの開幕まで、しばしの休養だ。3rdシーズンをお楽しみに!